無垢すぎる殺し屋が生きる絶望の世界 漫画『よるくも』
いがらしみきお、中川いさみ等ベテラン陣から、松本大洋、オノ・ナツメと言ったカルト的人気を誇る作家まで、バラエティ豊かな連載陣が魅力的な漫画雑誌『月刊IKKI』。“小学館のガロ”と称される事もある、その独特のラインナップに加わった新たな才能が漆原ミチ作の『よるくも』です。
『よるくも』は『月刊IKKI』誌上新人賞『イキマン』を受賞しデビューした漆原のデビュー作。「街」「畑」「森」の三層からなる「世界」で暗躍する殺し屋の青年“よるくも”を中心に繰り広げられるダーク・ファンタジー。
2011年1月に出版されたコミック第1巻は、物語の中で最下層の世界とされる「森」の世界観や、言葉もろくに知らないまま成長し痛覚を持たない“よるくも”のキャラクター、そして、よるくもと「畑」の人々の触れ合いを描いたプロローグ的な立ち位置となっています。
殺し屋の世界を舞台としているだけあって、ゴア描写は激しく、独特の画風の中に潜む狂気が恐ろしい。しかしその中で、「畑」の飯屋の働き者の娘キヨコと、よるくもが少しずつ接近していく様子は微笑ましくもあり、今後の2人の展開に期待を感じました。
しかし、先月末に出版されたばかりのコミック第2巻では、さすがカルト作ばかりが終結する『イキマン』勝者に輝いた、漆原ミチの本領発揮といった所なのでしょうか。物語でのヒロイン的ポジションであるキヨコに襲いかかる不幸の数々は、漫画の中で起こっている出来事とはいえ目を背けたくなるほど。
通販サイト『Amazon』に記載されている編集担当者のコメントにある様に、まさに「悲劇のジェットコースター」。物語冒頭でキヨコが明るく健気に、とても魅力的に描かれているだけあって、この展開のギャップには思わず言葉を失います。
とはいえ、単に読者を驚かしたり、話題を作る為に描かれた様な小手先の悲劇的展開ではない所が「よるくも」最大の魅力。「街」と「畑」と「森」という世界が暗喩するのは、まさに私達が生きる現代社会であり、人間の罪深さを浮かび上がらせているのです。
『よるくも』は現在も『月刊IKKI』で連載中。「最近ガツンとくる漫画がない」というアナタにぜひ読んでいただきたい一作です。
・「よるくも」漆原ミチ – IKKI公式サイト イキパラ。
※画像はAmazon.co.jpより引用。
※この記事は、ガジェ通ゴールドラッシュの「藤本エリ」が執筆しました。[リンク]
恋愛・美容・エンタメに興味津々な女ライター。日常での「クスッ」や「イラッ」を記事に出来ればと思っています。
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