『AI人工知能研究者』ってどんな仕事?【気になるカタカナ系職業を突撃取材!】
—すごい成果ですね。この研究をはじめて成果がでるまで、どれくらいの時間がかかったのですか?
研究を始めたのが2009年で、この研究成果を初めて学会で発表したのが2014年です。延べ5年間の研究成果です。
—それでは、松田さんがどうして研究者になったのか、子どもの頃から遡っておしえていただけますか?
小学生の頃から何となく研究者になりたいと思っていました。ドラえもんが大好きで、ドラえもんの発明品を、工作して何とかつくれないかと奮闘したり、小学生男子のお決まり分野の一つの恐竜も大好きでした。自分で恐竜の研究ノートをつくって、図鑑や百科事典を使って、恐竜について片っ端から調べていました。そして、高校に入学すると、より多くの専門知識を学ぶことができ、世界が一気に広がりました。古生物学だけでなく、物理や数学に、特に強い興味を覚えるようになりました。
今でも覚えているんですが、先生が「物理や数学を勉強して、アメリカに留学して、新しいものを発明して、シリコンバレーに行ったら、君らならガッポリ儲かるぞ!」っておっしゃったんです。
今思うと、適当だな…って思いますが(笑)、その時、その言葉を鵜呑みにして正解だったと思っています。本当に、いい加減な言葉だと思いますが、その先生は、今にして思うと、研究者の「道」を示してくれていた気がします。
—どういうポイントで、その道をすすみたいなと思えたのですか?!
研究者って、研究室に籠って地道に研究するということは、どうしても必要なんですが、その先生は、世界に向けてお金を生み出す価値のあるもの(世界に認められるもの)を生み出すことも、研究者には必要だ、ということを、言ってくれていた気がします。
—そこから順調に大学に入って専門的に勉強しはじめるんですね。
それが、全然順調ではなくて。志望校の京都大学工学部に入学したものの、専門分野を勉強しはじめたとたん、つまらなく感じて。もう、部活のボウリングや、趣味の海外旅行しかしていない時期がありました。
—どうやってそのスランプ的なところから脱出したんですか?
格好よく言うと、嫌なことにちゃんと対峙したんですよね。「本当につまんないのか?」と思って、でも自分が期待していた分野、何か見つけたいという一心でその分野の本を読みました。分野がつまらないのではなく、自分が勉強している方法がつまらないだけなんじゃないかと。同じ分野でも、面白い考えをしている人がいるのではないかと。そしたら、「複雑系はいつも複雑」という本と出会ったんです。
「複雑系」というのは、例えば、蛍の「シンクロナイゼーション」という現象があります。彼らって、一匹一匹は、勝手気ままに光っているんですけど、群れになると、大勢からなる群れが、まるで一つの大きな個体のように、一斉に同じリズムを奏でて光るんです。その理由はシンプルで、自分が光るリズムが、周りの個体のリズムに影響を受けて同調してしまう(シンクロナイゼーションを起こしてしまう)ということなんです。人間も、細胞の集まりですし、人間の脳も、神経細胞の集まりなので、同じように説明できます。心臓のリズムや、体内時計といった、不思議な現象も、すべて、この、複雑系で説明できるんです。こうした考え方には、とても興味が持てて、こういう人工知能への迫り方があるんだと気付けました。
—最後に高校生にメッセージをお願いします。
今、興味のない教科もたくさん勉強していると思います。でも、ムダなことはないし、将来、必ず繋がってきます。自分が「嫌」だと思うことってすごく大事なんですよね。
「嫌」だと思ったときに、大事なのは、教科そのものを嫌だと思わないことです。騙されたと思って、「きっと、その教科自体は、面白いはずだ!教科書や先生は、面白い方法で、教えていないだけなんじゃないか?教科書や先生の教え方が『嫌』なだけなんじゃないか?」と思ってみてください。そうやって、いろんな教科と向き合っていけば、どの教科も、きっと面白いと思えるようになります。少なくとも、自分よりも遥かに成績が良い人がいれば、その人は、何らか、面白さを知っている人です。試しに聞いてみましょう。「ねえねえ。数学なんかやって、何が面白いの?」って。中には、目をキラキラさせて、面白さを語ってくれる人がいるかもしれません。
学校を卒業してから、ぶつかる壁も、きっと同じなんだろうなと思います。仕事や人間関係も、すべてそうだと思うんです。「嫌なこと」ってたくさんあるじゃないですか。仕事が「嫌だ」と思ったとき、その仕事自体を嫌いにならずに、どうすれば、楽しさを見出せるか。「嫌」という感覚に出会ったら、寧ろ、ラッキーだと思ってみるといいかもしれませんね。「自分は何が嫌なんだろう」と思った先に、楽しさが待っているんですから。
—ありがとうございました!
研究者に小学生からなりたいと思っていた松田さんですが、それに拍車をかけたのは、高校の先生の意外な言葉だったということが印象的でした。
ちょっとしたキッカケや、友達や先生のひと言で興味を持ったことにアンテナをはっておくと、ふとしたことでそれに没頭できる瞬間がやってくるのかもしれないですね。
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大学生ライター
かほ
慶応義塾大学総合政策学部2年、音楽と人と旅が大好きな大学生。面白いことが大好き。四国一周囲一人旅をしてみたりヒッチハイクをしてみたり!夢はゲストハウスを開くこと。
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