映画『二重生活』門脇麦&菅田将暉インタビュー お互いを“観察”してみてどうだった?

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理由なき尾行、はじめました。大学院の哲学科に通うごく普通の女子学生・珠は、ある日教授から「ひとりの対象を追いかけて生活や行動を記録する“哲学的尾行”」を薦められる。最初は戸惑いながらも、次々と明らかになっていく他人の生活に、珠は興奮を覚えのめりこんでいく……。

直木賞作家・小池真理子の同名小説を、数多くのドラマやテレビ番組を手がける岸善幸監督の劇場デビュー作として映画化した『二重生活』。門脇麦さん、長谷川博己さん、菅田将暉さん、リリー・フランキーさんと豪華キャストが集結した全く新しい心理サスペンスとして、ヒットを記録しています。

今回は、主人公の珠を演じた門脇麦さんと、珠の恋人・卓也を演じた菅田将暉さんにインタビュー。同世代で最も注目を集める俳優同士、お互いの印象なども伺いました。

二重生活

―本作、とても楽しく興味深く拝見させていただきました。お2人にそれぞれ原作、脚本を読まれた時の感想を教えてください。

門脇:読み物としてとても面白かったです。尾行のシーンが多いので、映像ではそれがどの様に表現されるのだろうと思いながら読んでいました。

菅田:僕は原作は読んでいないのですが、脚本は自分の役目線で読んでいたのもあって、ファンタジーでも無いし、でも少し現実離れもしているし、不思議なお話だなと思いながら脚本を読みました。一つの事にのめり込んで周りが見えなくなっていく所とか、それで身近な人間との関係が崩れる所とか、人間関係の部分がすごくリアルで嫌だなあと。

―門脇さんの演じた、見知らぬ男を尾行する「珠」。菅田さんは珠の同棲相手の「卓也」を演じていますが、それぞれの役柄をどの様に捉えましたか?

菅田:個人的に、久々にニュートラルな役柄だったかなと。この映画を観た知人に「最後人殺すのかと思ってた」とか言われるのですが、今まで僕がやってきた事が悪いからだなあと(笑)。そういった役柄を期待されるのは嬉しいのですが、本作については、4人の中では一番真っすぐに描かれていますし、普通の生活をおくっている人なので。

門脇:岸監督のドラマ作品は昔から観ていて、いつかご一緒したかったので、すごく楽しみにしていました。演じるキャラクターについて楽しみにしたりとかは、あまりしないタイプなのですが、今回「……。」が多い役だったので、「……。」を極めたいなと思いました。

―「……。」の間の素晴らしさというか、映画全体に流れる空気がとても自然でしたよね。特にお2人の部屋でのシーンは顕著だったと感じました。

菅田:カメラの枠組みとか画角といったものが全く気にならないですし、そこを気にしなくても良いよと言われましたし、

門脇:私もすごく居心地が良かったですね。「演技する」という事に恥ずかしさがあって、そこからどう逃れて自然に演じるかというのが、常に目指している所でもあるので、それがこの作品のベースにあってすごく嬉しかったです。

―カップルで同棲相手という事で、物を食べたり、一緒に寝たりという所のリアリティも良いですよね。

門脇:セットも部屋の中だけでは無くて、カメラに写らない玄関や玄関の外まで本当に2人が暮らしている様に作られていたので、本当に何か力を入れて演技しよう、と思わず自然に出来たのだと思います。

菅田:考えてみれば不思議な話ですよね。リハーサルも無いままに、キスシーンもセックスシーンも演じるわけですから。そういったシーンは自分の経験が活きている様な気もしますし、台本のト書き通りにやった気もしますし。

門脇:私も菅田君もバロメーターを上げてきて、そのタイミングがピッタリ無意識に合ったというか、分からないですけど、そんな気もします。

菅田:珠が急いで出かけていく時に脱ぎ散らかしていった服を見ると、これまではちゃんと服を片付けたのかもしれないし、それで「今何かあるんだな」って卓也は思うのかもしれない。その時に卓也もちゃんと言えばいいのに、とも思いますし。あの別れ際に本音が出て来る所とか、リアルですよね。これまで、ためていた事が最後に爆発するのって本当あるあるですよね(笑)。

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―ああいった事って、多くの人が経験ありそうですよね(笑)。本作の様に尾行まではしないまでも、お2人は「人間観察」は好きですか?

門脇:好きですね。

菅田:好きです。

―街行く人を眺めたりとか。

門脇:それも好きですし、小さい時からすごく人の事見てたと思います。一歩ひいて、人間を見た時に動物としての動きとか、本能の行動に注目すると面白いなと思って見ていました。飽き症なので本格的に勉強したというわけでは無いのですが、哲学書とかも好きでしたね。

菅田:東京って色んな人がいるじゃないですか。しかもこの世界にいると色んな人に出会いますし、それが魅力だと思うので。さっき麦ちゃんが言っていた哲学書じゃないけど、占星術とか好きでした。「この人はこういう傾向があるな」とか、観察したり。

―今回お互いを観察してみていかがですか?

門脇:菅田君はよく寝ますね。休憩中もお弁当とかすごい早さで食べて寝てたり、本番中も……。

菅田:本番中寝たね(笑)。それくらい心地良かったんです。僕は今回門脇さんとご一緒させていただいて、体躯が綺麗だなと思いました。動かし方や身のこなしが柔らかくて、キャッチーだけどナチュラルだなあと。一緒に演技していて自分の体もほどけていく瞬間が何度かあったので。「ちゃんと生きている」感じが表面的では無くて、凄いなと思いました。

門脇:菅田君もすごく柔軟性があって、色々考える前にダメって言わないで何でもやってみる所が素敵だなと。

菅田:自分の中に「拒否」って事が無いんだよね。

門脇:でも、それってこの仕事をしていく上ですごい強いだよね。

―お2人は、門脇さんが1992年生まれ、菅田さんが1993年生まれでほぼ同い年ですが、同世代の俳優同士、お互いを意識する事はあるのでしょうか?

菅田:世代意識はあります。面白い世代になれば良いなって。もちろん、小さい嫉妬とかはたくさんあるんですけど、仲は良いですし。

門脇:新しい物を作って行ける世代ではあるなという感覚はあります。色々な事が一周して来ている所を見ている世代なので、そろそろ本当に新しい事やろうよ、という雰囲気が流れているというか。客観的に見て、そういう面白い事が出来る人がいっぱいいると思うので、皆がどうなっていくのがすごく楽しみです。菅田君とも、お互い今後色々な作品に出ていって、また共演したいですし、本当に楽しみです。

菅田:良い意味でも悪い意味でも何でもあった世代なんですよね。媒体もドラマや映画から、ネットまで何でもあって。先日友達と話してたのは、僕達の父親の世代ってラジオから流れてくる曲をその一発で耳コピしたりしていたわけで。僕達はその労力を違う所に使えるわけで、その爆発力がある人がいっぱいいるんですよ、この世代って。選択肢がありすぎるからこそ、色々な事が出来ると思っていますし。

門脇:今若い時にしか出来ない作品もあると思うので、そのパワーが集結した作品は観てみたいですね。それで数年経って、同じ世代の子達が観て心に強烈に刺さる様な作品を作れると思うんですね。

―おっしゃるとおり、お2人と同世代の俳優さんって本当に色々な方がいらっしゃいますし、実力も個性も素晴らしいと思うので、ぜひ実現したら観てみたいです。最後に改めて『二重生活』の面白さ、魅力を読者にお伝え願えますか?

門脇:珠に感情移入出来る人もいれば、周りのキャラクターに感情移入出来る人もいるでしょうし、観客の皆さんが“尾行している珠”を尾行している様な感覚でも楽しんでいただけると思います。そういった、哲学や心理描写の面白さもあるし、珠と卓也の感情がぶつかる人間ドラマとしても楽しめるし、単純に尾行をするスリルやサスペンスも味わっていただけると思いますし、「こう楽しんで欲しい」というのが決まっていない作品だと。乾いた空気かと思いきや、そうでも無くて、何なんだこれは? と私も思ったので。

菅田:初めて試写会で、自分が出ている作品を素直に楽しめたんです。お客さんとして。大体試写会を観た後マネージャーさんと会話するんですけど、この映画はいつまでも話していたかったです。エンタテインメントとしても面白いですし、人間関係のあるあるもあるし、静かでも無ければうるさくも無い、人が生きている心拍数をグラフにした様な心地良さがあって。

―本当に色々な年齢、環境、状況の方が、色々な視点で楽しめる作品だと思います。今日は貴重なお話をどうもありがとうございました!

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『二重生活』大ヒット上映中
http://nijuuseikatsu.jp

(C)2015「二重生活」フィルムパートナーズ

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藤本エリ

映画・アニメ・美容が好きなライターです。

ウェブサイト: https://twitter.com/ZOKU_F

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