日本映画よ表現の規制を超えていけ! “攻める邦画”まとめ2016初夏
今年、規制にとらわれない“攻める邦画作品”が立て続けに公開されています。これまで、暴力や過激な描写の作品といえば韓国映画を連想するが、日本映画界においても近年その勢いは増すばかり。
園子温監督、三池崇史監督の作品を筆頭に、最近では、花沢健吾のベストセラーコミックを、大泉洋主演で実写映画化したパニックホラー作品『アイアムアヒーロー』が大ヒットし、同作は世界各国で映画賞を総なめにするなど話題となっています。一方で『先生を流産させる会』、『ライチ光クラブ』などでメガホンを取った内藤瑛亮監督や東京フィルメックスで話題を集め、7月30日に公開が決定した『クズとブスとゲス』の奥田庸介監督、本物の不良を起用したことでも話題となった『孤高の遠吠え』の小林勇貴監督などといった若手監督たちの活躍からも目が離せません。
特にこの5、6月は“攻める邦画”がザックザク。現在公開中の作品から、公開待機作品まで、オススメ映画をまるっとピックアップ。
『ディストラクション・ベイビーズ』公開中
『イエローキッド』『NINIFUNI』などので知られ本作で商業映画デビューとなる真利子哲也監督が手掛けた若者による群像劇。愛媛県松山を舞台に、若者たちの欲望と狂気を描く。暴力にとりつかれた主人公には現在、TVドラマ『ゆとりですがなにか』や数々の映画作品で独特なオーラを放つ柳楽優弥が扮し、ほとんどセリフのない難役を演じ切っている。さらに共演には『共喰い』などの菅田将暉、『渇き。』などの小松菜奈、『2つ目の窓』などの村上虹郎ら今をときめく若手俳優たちが出演している。
(C)2016「ディストラクション・ベイビーズ」製作委員会
『シマウマ』公開中
小幡文生のベストセラーコミックを実写化したクライムムービー。依頼者が抱く恨みをさまざまな方法で晴らす回収屋となった青年が、裏社会で活躍していく姿を追う。メガホンを取るのは、『王妃の館』などの橋本一。主人公ドラ役には今最も注目を集める若手俳優・竜星涼が勤め、苛立ちや焦燥感を抱えながら裏社会で生きる“ダークヒーロー”を体当たりで熱演している。回収屋の一員で“ジョーカー”のような奇抜なメイクを施した猟奇的な快楽殺人者・アカに須賀健太、同じく回収屋の紅一点で敵か味方か分からない“ミステリアス”な女・キイヌに日南響子、回収屋を取り仕切るに包まれた“ボス”の男・シマウマに加藤雅也、その他にも、高橋メアリージュン、天乃舞衣子、脇知弘、松田賢二、福士誠治など、一癖も二癖もある面子が脇を固めている。ワケありクセありのキャラクターにふんした彼らの力演に加え、人間の心の闇を深く見つめたストーリーにも注目。
(C)2015 東映ビデオ
『ヒメアノ〜ル』5/18公開
森田剛が映画初主演作として狂気の連続殺人鬼を務め、そのリアリティを追求した衝撃描写ゆえ【R15+】指定となっている問題作。「行け!稲中卓球部」「ヒミズ」の人気漫画家・古谷実の同名コミックを『さんかく』、『銀の匙 Silver Spoon』などで知られる吉田恵輔監督が実写化。先月4月22日にはイタリアのウディネで開催された第18回ウディネ・ファーイースト映画祭で喝采を集めた本作は容赦ない描写を体言する森田剛と、森田演じる殺人鬼に狙われることになる、濱田岳、ムロツヨシ、佐津川愛美演じる若者たちのコミカルな恋愛劇とのギャップが異様な緊張感を生み出す本作。ふたつの世界が交じり合い、緊迫感溢れるシーンの連続にこれが映画初主演となる森田剛のキレキレのサイコパスっぷりは必見!
(C)古谷実・講談社/2016「ヒメアノ~ル」製作委員会
『葛城事件』6/18公開
威厳のある父に美人の母、2人の息子に自慢の我が家と“葛城家”は理想の家族のはずだった……。無差別殺人事件を起こした加害者青年とその家族、加害者と獄中結婚した女性が繰り広げる壮絶な人間模様を描いた『葛城事件』は赤堀雅秋監督自身が手がけた同名舞台が原作。父・清役で主演を務める三浦友和が、日本映画史上に残るクズ男を怪演。南果歩、舞台版で無差別殺人事件の犯人となる稔を演じた新井浩文と実力派キャストが集結。映画版では稔役に大衆演劇出身の若葉竜也が大抜擢。“胸糞”な展開の連続はどんよりとした気持ちにさせるのに、目が離せない痛快さも共存しているという奇跡のバランス。現代の問題点を切り取った衝撃の展開はぜひスクリーンで。
(C)2016「葛城事件」製作委員会
『クリーピー 偽りの隣人』6/18公開
『岸辺の旅』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門監督賞を受賞した黒沢清監督最新作。新居に引っ越してきた幸せな夫婦が奇妙な隣人によって翻弄されるサイコ・サスペンス。西島秀俊、竹内結子のほか、奇妙な隣人役の香川照之がスクリーンいっぱいに奇妙すぎる演技を魅せる。また昨年『ソロモンの偽証』で女優デビューを果たした藤野涼子が抜群の存在感を示しているので注目。“これぞ黒沢清”と言える奇妙かつ美しい映像、ヴァイオレンス表現、黒沢作品でしか観れない独自のセンスはサスペンスを越えてもはやダーク・ファンタジー。
(C)2016「クリーピー 偽りの隣人」製作委員会
『日本で一番悪い奴ら』6/25公開
本作はやらせ捜査が発覚し<日本警察史上の最大の不祥事>といわれる実際の事件を題材に、北海道警察・刑事の壮絶な26年間を描いた物語。映画やドラマなど出演作が目白押しの俳優・綾野剛を迎え、実在の連続殺人事件を基にした映画『凶悪』で2013年国内映画賞を総なめにした白石和彌が監督を務めている。綾野剛演じる北海道警の刑事・諸星は、捜査協力者で“S”と呼ばれ裏社会のスパイとともに悪事に手を染めていく。諸星に協力する“S”として、暴力団幹部役の中村獅童、麻薬の運び屋役のYOUNG DAIS、盗難車バイヤーのパキスタン人役にはお笑い芸人デニスの植野行雄が演じるほか、『凶悪』でも抜群の存在感を発揮したピエール瀧が諸星に刑事のイロハを伝授する先輩刑事役を演じるなど個性豊かな豪華キャストが集結。綾野剛の代表作になりうるこの1本は映画ファンらずともチェックすべし作品と言っても過言ではない。
(C)2016「日本で一番悪い奴ら」製作委員会
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