お好み焼き店の啓蒙イベントを取材したら広報担当者の挑戦を受けた ~お好み焼き道とん堀~
株式会社道とん堀が運営する『お好み焼道とん堀』が、期間限定で食事と栄養バランスについて啓もうするためのショップ『FAST FOOD AID』を原宿に開設したので、それを取材した……はずだった。
同ショップでは、管理栄養士がファストフード等のレシートの内容から不足している栄養素を診断し「不足分のサプリメントを無料で配布」するというもの。
体験取材するためには昼食に何かを食べなければならないので、とりあえずラーメンを食べてレシートを握りしめてショップに向かった。
管理栄養士からヒアリングを受け、足りていない栄養素分のサプリメントが次々に投入されていく。
要するに、栄養が偏ることにより特定の栄養素が不足する栄養失調のリスクを警告するものだった。
ラーメンの場合、合計22個のサプリメントがボトルに詰められて、無料でもらえた。
そして、ここからが種明かしとなるわけだが、実はお好み焼きは野菜が多く入っているので栄養素がそれほど偏らず、バランスの良い食事であるということが“キチンと”説明される。
そして、不足の栄養素がないサプリメント0個入りのボトルが渡され、その中には同社が経営するお好み焼き店の割引券が入っていたというオチ。とはいえ、至極真面目な取り組みで、こういうことに敏感な外国人客が多いような気もした。
さて、取材はこれで終わりかと思い、広報担当の吉岡亜紀さんに話を聞いた。
--お好み焼きが栄養素のバランスがいいというのは意外でしたが、御社のものはどこか違いがあるのですか?
「はい。メニューにもよりますが、野菜を350グラム取れるものがあります。これは1日当たりの理想的な野菜摂取量と同量です。また、4月5日より使用する野菜はすべて国産のものに切り替えています」
--取り組みや啓もう活動の趣旨はよくわかります。とはいえ、失礼ですがお好み焼きですからね。いくら多くの野菜が取れるからと言っても美味しくないとダメですし大丈夫ですか?
「それは大丈夫です! 自信があります。日を改めて店舗にお越しください。お待ちしておりますので! 必ずですよ!」
と、挑戦を受けてしまうという、妙な展開になってしまった。
挑戦されて受けないのは男が廃る…とは言わないが、せっかくの招待なので、二子玉川近郊にある店舗へ出向いた。
メニューは季節により変えているとのことなので、変更になる場合もあることをご承知いただきたい。
まずは、オーソドックスに普通のお好み焼き『道とん堀ミックス』を食べて、「基本性能」を確認することからスタート。
同店では、お客さんが自分で焼くことをデフォルトとしている。もちろん、店員さんに焼いてもらうことも可能だが、その方が楽しいし、だれがどのように焼いても美味しくできるように生地の調合から野菜のカットまで研究し尽くしているというから見上げたものだ。
「女子高生が来たときにびっくりしたのは、彼女たちは早く焼けるように最初から4分割して焼くんです。焼いたのを4分割して友達とシェアするというのはわかりますけど、最初から4分割して焼くというのはすごいですよね。確かに早く焼けます。でも、そういう焼き方をしても美味しく焼けるように工夫していますから、突拍子もない焼き方をされても大丈夫です」
記者は写真撮影があるので、焼くのは広報の吉岡さんに任せたが、特別なテクニックは使っていないようだった。ただ混ぜて鉄板に流し込んで片面を焼いてひっくり返しただけ。
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ところで、同店は道とん堀という大阪の地名が店名になっているが、東京の会社。お好み焼きと言えば大阪というイメージ戦略で命名したそうだが、最終的に大阪に進出したいと思っていたそうだ。現在では海外展開もしているという。
まずは一口。頭の中に「?」がわいた。
何か違う。生地感というか、粉感があまりない。
ちゃんと混ざっているが、イカやエビの味がそれぞれきちんと判別できる素材の素の味が味わえる。
続いて、広島焼。
作るのに手間がかかり、技術もいるので広島ではたいてい、お店で焼いてくれる。しかし、同店ではお客さんが焼くこともできる。
広島風に言えば、「肉玉そばにイカ天トッピング」がデフォルトで出てきてちょっとびっくりした。
イカ天トッピングは、記者も大好きで広島では必ず加えるものだが、ここでは最初から入っている。
吉岡さんが、「失敗かなぁ?」と言いながらも、お見事。
ちゃんと焼き方マニュアルもあるので、挑戦する気分で焼けるのも楽しい。
また、卵は2個ついていて、「慣れないお客様が卵1つの上に乗せるのは難しいので、2つにしています」とは吉岡さん。
キャベツの甘みと見た感じではわからなった本当に分厚い豚肉が食べごたえ十分。
お次は長いもとジャガイモとモチが入ったホクホクのお好み焼き。
これは、酒のつまみにもなると思う。
長いもの鉄板焼きは居酒屋の定番メニューだが、これに北海道産のジャガイモと、プレーンなはずなのに味わいのあるモチが素直に美味しい。
酒を飲みながら、これをつまんでいる自分の姿を想像する。
最後は、件の350グラムの国産野菜が入った『ベジ盛り』の豚玉。
容器からあふれんばかりの野菜に言葉を失う。
やはり粉感があまりないのが不思議だったので確かめてみたところ、キャベツと生地の割合を3対2にしているとのことで納得した。生地でボリュームを出すのではなく、中身でボリュームを出していたということだろう。
想像を超える野菜で野菜に劣らずこちらがしんなりしてしまいそうだが、当の野菜はしんなりしておらず、シャキシャキ。
言葉でいうのは難しいが、野菜いための卵とじを食べているような感覚だった。
全体を通してわかったのは、どんなに分厚くても皿の上で箸で簡単に切れるということだった。両面のパリッと感と、中のふわふわ感のマッチと言えるだろう。
これについては、鉄板の厚さを9ミリメートルにして、温度を摂氏190度に保てるように設計してあるという。
さぁ、食べ終わったし引き上げようかと思っていると、「デザートにもんじゃでもいかがですか?」ときた。
出てきたのは、『パフェもんじゃ』。さすがにこれはやりすぎでしょうと、けん制したのだがすでに混ぜ始めている。
生クリームとベリーとなんだろう?この際、何でも食べてやると、追い打ちをかけるような挑戦にただただ閉口するしかなかった。
とうとう、生クリームを鉄板の上にぶちまけてしまった。
「ベリーはつぶさないと美味しくないんですよね」と言いながら、すでに何だかわからないものをつぶし始めた。
ところが、これが食べる部位と焦げ具合によって全く違う味がするから不思議だ。
ある位置では焼き菓子の工場焼き立ての味、ある位置では作り立てのジャムの味、またある場所では焦げた生クリームと生地が香ばしい何とも言えないクセになる立派なスイーツだった。
吉岡さんの挑戦に完全脱帽の記者。味は個人の好みゆえに絶対的な評価はできないが、少なくとも記者としては「ただのお好み焼き」が、「マイごちそう」になり得るという確証は得たような気がした。
※写真はすべて記者撮影
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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか
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