頭脳明晰、けれど冷酷?!エリートに多い「サイコパス上司」の見分け方

スマートで仕事ができ、会話力も抜群。一見すると誰もが羨む「デキる上司」。しかし、裏に回ると成果第一主義で、相手が自分にとってメリットがあるうちはチヤホヤしてくれるが、用済みとなると全面否定。一度、敵とみなされるや否や、相手を完璧に叩きのめすまで、その手を緩めない――。そんな上司に出会ったら、どうすればよいか?

今回は、エリートに多いといわれる「サイコパス特性」の実態に迫る。

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大統領や大企業のCEOにも多い「サイコパス特性」

近年アメリカでは、正常とされる人格から離脱した「サイコパス」と呼ばれる得意な人格の研究が進んでいる。「サイコパス」と聞くと、「残虐で冷酷な殺人鬼」を想像しがちだが、圧倒的に多くのサイコパスは実社会で普通に生活している「非犯罪者」だ。大統領や大企業のCEOなど、社会的成功を収めている人物にサイコパスはかなり多い。

アメリカの研究によると、サイコパスは男性で0.75パーセント、女性で0.25パーセントいるといわれ、傾向があるとされる者は、1.23パーセントから3.46パーセントとされている。50人から100人の職場に1~2人いる計算だ。

「サイコパス」と呼ばれる人たちの脳は、通常人と比べて、前頭前皮質腹内側部から扁桃体にかけての活動が低下しているという。この部分の機能が低下すると、衝動性が高まり、他人との感情の共有に大きな障害が出てくる可能性が高まる。情動に関わる認知がうまくできなくなるぶん、理性的な認知が活発となり、「良心の呵責」や「共感」にとらわれない冷静な判断や行動を得意とし、他人を自在に操ることができるようになる。

サイコパス志向の持ち主が、ある部分では社会のために大きく貢献し、一方で周囲の人たちに大きな被害を与えている可能性が高いといわれるのはそのためだ。

サイコパス特性のある人物の見分け方

ロバート・ヘアは、サイコパスに関するそれだめの研究結果をまとめた「サイコパシー・チェックリスト」の中で、「サイコパスの特徴」を示している。あくまで目安であるが、下記10項目以上にチェックが入るなら、サイコパス的な人格のある可能性が高いという。ただし、サイコパスの診断を下すためには、専門医が本人と面談したうえで、基準に沿って慎重に判断する必要がある。下記リストは、「サイパシー・チェックリスト」の一部であり、あくまで目安である。

・口達者で魅力的だといわれる

・自己中心的で自分には価値があると過信している

・退屈しやすい。フラストレーション耐性が低い

・平気でウソをついたり人を騙したりする

・ずるい。正直さが欠けている

・良心の呵責や罪悪感が欠けている

・情緒の深みがなく感情が浅薄

・無神経で共感性がない

・他人に寄生するような生活様式

・短気でコントロールができない

・性的関係の乱れ

・幼少期から行動上の問題があった

・現実的で長期的な計画が実行できない

・衝動性がある

・親として無責任な行動をとる

・何度も結婚や離婚を繰り返す

・少年時代から非行歴がある

・自分の行動に対して責任を取れない

サイコパス度が高い職業・低い職業

「冷酷な殺人鬼」というイメージの強いサイコパスだが、実際は「面白い人」「魅力的な人物」として、各方面で活躍していることが多いという。

サイコパス度が高い職業は、

1.企業の最高経営責任者(CEO)

2.弁護士

3.報道関係(テレビ/ラジオ)

4.セールス

5.外科医

となっており、冷静な判断力と、大胆な行動力が必要とされる職種が目立つ。

逆にサイコパス度が低い職業は

1.介護士

2.看護士

3.療法士

4.職人

5.美容師/スタイリスト

となっている。サイコパス度が低い職業は、より「共感力」が必要とされる職業がランクインしている。

法心理学者スティーブン・ルーベンザ―と心理学教授トマス・ファシンバウアーらによると、アメリカ合衆国の歴代大統領である、ジョン・F・ケネディや、ビル・クリントンをはじめ、何人もの大統領が顕著な「サイコパス特性」を示したという。プレッシャーに負けない決断力やチャーミングな語り口調、恐れを知らない果敢な行動力は、サイコパス特性とされ、大統領としての資質につながっているのだ。

サイコパス度の高い上司とコミュニケーションを取るには

頭脳明晰ゆえにバリバリ仕事をこなしていく。けれど、「共感力」に欠け、時に残酷に人を切る。そんな「サイコパス特性」を持った人物が、自分の上司になったらどうすればよいのだろうか。注意すべき点として「サイコパス特性」のある人物は、普通の意味での感情の共有ができないため、通常のやり方ではうまくコミュニケーションが取れない。軋轢や衝突を避けるためには、いくつかのポイントをおさえておく必要がある。

1.相手の「サイコパス度」をよく観察し、理解する

肩書や著名度、お金持ちかどうかに惑わされず、まずは相手がサイコパス度の高い人物かを見抜く必要がある。うまく感情が伝わらない、背筋がぞっとする感じがする、笑えない冗談や行動をすることが多い等、サイコパス度の高い人物像の特徴を頭に入れておこう。

2.「付き合いを避ける」ことが基本

サイコパス的な特徴を持つ人物は、自分の目的を達するために、相手を「手段」として利用してしまうことが多い。いいように使われて、利用価値がなくなればさっさと捨てる。良心の呵責がないため、こうしたことが起きやすいのだ。

サイコパス度の高い人物に対しては、自分の弱みをさらけ出さず、深入りしないのが賢明。もし、被害に遭ったなら、復讐しようとは考えず「逃げる」ことに徹しよう。

3.そのような生き方があると学ぶ

とはいえ、会社の命令で、サイコパス度の高い上司の下につかなければならないこともあるだろう。サイコパス度の高い人物は、成果第一主義、業績重視の可能性が高いので、まずはきちんと成果を挙げることに徹するのが賢明。少しでも「デキない人物」と思われると、いじめに遭うなど不当な扱いを受けやすくなる。

また、「絶対服従」は基本だ。独特のやり方に固執したり、相手のやり方を批判したりすると、思わぬ攻撃を受けてしまうので注意しよう。「極端な人格」があることを知り、「このような考え方をする人もいるのか」と冷静に距離を置きながら接することを刺激することなく、自分自身を守ることができる。

とはいえ、前述したように「サイコパス」の診断は、専門医のみが可能だ。思い込みによるレッテル貼りは、避けたいところである。

文:山葵夕子

引用:

ゆがんだ正義感で他人を支配しようとする人/梅谷薫(講談社)

診断名サイコパス―身近にひそむ異常人格者たち/ロバート・ヘア(ハヤカワ文庫NF)

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