ガジェット通信 GetNews

見たことのないものを見に行こう

体験を伝える―『ガジェット通信』の考え方

面白いものを探しにいこう 本物を体験し体感しよう 会いたい人に会いに行こう 見たことのないものを見に行こう そしてそれをやわらかくみんなに伝えよう [→ガジェ通についてもっと詳しく] [→ガジェット通信フロアについて]

デザイナー コヤマシゲト インタビュー後編「デザインは、食事を美味しく食べることから」

デザイナーのコヤマシゲトさん デザイナーのコヤマシゲトさん

人生の多くの時間を費やす「仕事」において、自分の「好き」を見つけ、その「好き」を行動に起こしていくことで、人生をより豊かなものにできるのだと思います。

その好きを見つける応援をするため、さまざまな「働くヒト」に光を当て、その過去から今、そして未来について伺い、働く楽しさ、働く意義をお届けしていきます。

その第3回目のゲストは、『トップをねらえ2!』で初めてアニメに携わり、その後『交響詩篇エウレカセブン』や『HEROMAN』、『STAR DRIVER』、『ベイマックス』など、数々の作品に参加してきたデザイナーのコヤマシゲトさん。

インタビュー前編では、コヤマシゲトさんのバイト経験からアニメ業界に飛び込むまでの来歴を中心に、お話をうかがってきました。

後半となる今回は、ディズニー映画『ベイマックス』参加のきっかけや「デザイナーの先輩として後輩にアドバイスするとしたら?」といった質問から、同人サークル「CCMS」の相棒でもあり、2015年末に設立された「SF.inc」に共に所属する、盟友であるデザイナーの草野剛さんに、「コヤマシゲトさんってどんな人?」という部分を中心にお話していただいています。

 

「『プーさん』はドラッグ映画でしょ?」から始まった交流

krk0015_1

──ここまで、コヤマさんの来歴をうかがってきました。コヤマさんは人との出会いを通じて、自分に合った仕事につながったという印象です。コンセプトデザインの一部を担当された『ベイマックス』のお仕事も、きっかけは監督と仲良くなったことだったそうですね。

コヤマ 僕は『ベイマックス』の監督であるドン・ホールさんが手がけた前作『くまのプーさん』(2011年)が好きだったんですが、たまたま彼が来日した際に、友人で翻訳家の柳亨英さんが来日中のドンさんたちのアテンドをすることになったので、彼との食事の機会を設けてくださって。それも、ひとつの縁ですよね。

映画の『プーさん』って、ディズニー作品にもかかわらずハチミツでトリップするような……もうハチャメチャな作品で、「これをつくった監督はとんでもない奴だな」と勝手に思ってたんです(笑)。それで、ご飯食べながら、正直に本人に「これはドラッグ映画だろ」という話をしたら、彼もニヤリと笑って(笑)、そこから心を開いてくれて、どんどん深い話をしてくれて意気投合しました。

──「若い人たちは質問しに行かない」というお話もありましたが(前編参照)、「嫌われたくない」「波風を立てたくない」と、空気を読む傾向にあるということですね。

コヤマ 後輩達をみてると、みんな優秀ですごく空気を読んで、僕らの世代が気分を悪くしないようにしてくれているんです。それはありがたい反面、そこまで空気を読む必要もないのかもな、って思います。もっと“圧”を出していってもいいのに、と。

空気を読んでみんなが前に出ない中、空気を読まないで前に出れば、潰されるか、一歩先に行けるかのどちらかでしょう。だから、あえて空気を読まないという選択もあると思います……って、発言が完全にオッサンですね(笑)。

 

デザイナーとして物事を分解して考える基本は食事から

krk0037_1

──これまで仕事のお話をうかがってきましたが、生活する上で気をつけていることはありますか?

コヤマ まずは「ご飯を美味しく食べる」こと(笑)! これは、ずっと大事だと思っています。というのも、デザイナーは作品をちゃんと理解した上でさらに「分解」もできないといけないので、「どうしてこの色が使われているのか?」とか「どうしてこういうデザインになったのか?」を常に考え続ける仕事でもあるんです。

そもそも、アニメを見て、「なんとなく面白くないなぁ」で終わってしまうタイプの人はデザイナーには向いてないと思います。見た作品が面白くないと感じたら、その面白くない理由や問題点を理解して把握するのがデザイナーの習性なんですよね。

ご飯も同じで、「なんとなく飯を食う」という行為がルーティンになってしまったり、食事を“無自覚”に済ませてしまったりすることが危険だな、と思ってます。自ら楽しんで美味しく食べる、つまり「咀嚼する」というのはフィジカルな健康面に繋がるだけでなく、それは「自覚的に作品を理解する」こととまったく同じなんです。自覚的に物事を考えて分解するクセを日常的につけていかないと、感性もどんどん鈍くなっていきますし、これではデザイナーとしても致命的かなと思います。

僕にとって食事は半分趣味というかライフワークではありますが、そうやって食べたほうが楽しいんですしね。だから僕は、食事だけは仮に経済的に苦しくてもギリギリまでお金をかけてでも、その分味わって食べた方が良いと思ってます。ちなみに、僕はどこで誰と何を食べたのか、というのをノートにずっと記録していて、それが自分のアーカイブになってます(笑)。

──食事に限らず、日常的なことが仕事であるデザインにつながっていく、という感覚ですね。物事を考えて分解していく思考法が身につくと、アニメの観方も変わってくる。

コヤマ 圧倒的に変わりましたね。僕が初めて入ったスタジオがガイナックスだったわけですが、あそこは、新人からベテランまで、みんなで他人の絵を見て、「このイラストの首は長すぎるんじゃないか?」「ここに影が入ってるから長く見えるんじゃないか?」とか、常にみんなで画を研究をしている恐ろしい集団というか、梁山泊状態だったんですよね(笑)。それは、料理をものすごくよく噛んで味わってるのと同じことで、すごく重要なことだと思いました。

──学生でも、作品を逆算して見てみるというのはトレーニングになりそうですね。

コヤマ 確実になると思います。ガイナックス社長でもあり『オネアミスの翼』の監督でもある山賀博之さんの「映画『がんばれ!ベアーズ特訓中』を10回見たら映画監督になれた」という話も、今となってはわからなくないなと(笑)。日常的にじっくりものを見る、じっくり味わう、という訓練は必要だと思います。

1 2 3次のページ
fromA(フロム・エー)しよ!!の記事一覧をみる
  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

山寺宏一&高木渉で『ポプテピピック』

GetNews girl / GetNews boy