Googleが“死海文書”をデジタル化 オンラインで検索・閲覧可能に
24世紀の長い時を経て砂漠からウェブへ――歴史ロマンあふれる、まさに究極の電子書籍の登場です。2010年10月、イスラエル考古学庁(IAA)とGoogleが、現存する世界最古の聖書関連文書“死海文書”を高解像度デジタルスキャンしオンライン公開すると発表して話題になりましたが、ヘブライ暦のおおみそかにあたる本日『死海文書オンラインコレクション』としていよいよ公開されました。
2000年後の世界って想像したことがありますか? 紀元前の人たちは、まさかこの文書が「世界中で読まれる」時代が来るなんて想像もしなかったでしょうね。たぶん、彼らにとっては、私たちがウェブで死海文書を見ている姿は、漫画『テルマエロマエ』(作・ヤマザキマリ)の主人公が、ローマの浴場から日本の温泉に出てきてたとき以上の衝撃だと思います。
死海文書は、紀元前3世紀から1世紀にかけて書かれた、これまで発見されたもののなかで最古の聖書写本群といわれるもの。紀元前68年、ローマ軍の侵攻から守るために、視界沿岸にあるユダヤ砂漠の11の洞窟に隠されたと考えられています。1947年、ベドウィンの羊飼いが洞窟に石を投げて、何かがあることに気づいたことから発見されるに至りました。
同文書は、1965年からエルサレムにあるイスラエル博物館の聖典聖堂に展示され、キリスト誕生をはじめ、古代エルサレムの生活や宗教をひもとく非常に貴重な文献として扱われてきました。今回、同博物館にGoogleが技術協力をするかたちで、デジタル化された5巻の死海文書を世界中で閲覧・検索できることになりました。
デジタル化にあたっては、一般的なカメラの約200倍以上もある1200メガピクセルの高解像度で撮影。撮影は、古文書や美術作品のデジタルアーカイブを専門とする写真家 Ardon Bar-Hama氏が担当しました。文字が書きこまれた羊皮紙の表面も、細部まで見ることができ、たとえば『Temple Scroll(神殿の巻物 11Q19)』にズームすると、厚さわずか0.1mmの皮の手触りまで伝わりそうなほどリアルです。
文書の内容は、章や節ごとに閲覧でき、画像上でヘブライ語のテキストをクリックするとその部分の英訳が表示され、コメントや自分の母国語訳を投稿することも可能。また、同博物館のサイト検索から死海文書内のフレーズを検索することもできます。
たとえば「and the wolf shall dwell with the lamb(そして、狼は羊と住むだろう)」と検索すると、『イザヤ全書(The Great Isaiah Scroll) 1QIsaa 第17章11節)』へのリンクを表示。リンクを見ると、巻物の画面が表示されて、探しているフレーズが書きこまれている部分がハイライト表示されます。
Googleは、貴重な文化遺産のデジタルアーカイブ化に意欲的で、同プロジェクトではGoogle Strage、App Engineでのホスティング、サイト仕様やデザイン、ウェブ検索などのサポートを提供しています。また、これまでにも『ヤド・ヴァシェム・ホロコースト写真コレクション』『マドリッド国立プラド美術館』などのプロジェクトもサポート。今後も、歴史文化遺産のデジタルアーカイブ化に関心のある博物館等と提携を行う予定です。
死海文書オンラインコレクション(The Israel Museum, Jerusalem)
http://dss.collections.imj.org.il/
京都在住の編集・ライター。ガジェット通信では、GoogleとSNS、新製品などを担当していましたが、今は「書店・ブックカフェが選ぶ一冊」京都編を取材執筆中。
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