【超シンプル】絶品「塩まぐろ」のつくりかた ~フィッシュロックバンド「漁港」森田釣竿氏に聞く~
千葉県・浦安市。
ここは「浦安魚市場」。
昭和初期に浦安で市が開かれたころから「町の台所」であり続けた、古き良き魚市場である。
もともと漁師町だった浦安という地域のシンボル的な存在であり、いまでも当時の賑わいを思わせる面影が、場内のそこここに残っている。
もちろんいまでも新鮮な魚を中心に、様々な食材が取り揃えられ、朝方などは仕入れの業者さんたちでおおいに賑わっている市場なのである。
(一般のお客さんも入れるので浦安にお越しの際はぜひどうぞ!)
(新鮮な魚介類を大盤振る舞いでやっております!)
さて、ここ浦安魚市場にある天然マグロ・クジラの専門店「泉銀(いずぎん)」は新鮮で抜群な品揃えで地元でも定評のある魚屋さん。
そして、さきほどから魚市場内の写真で何度も見え隠れしているこの人物……実はここ「泉銀」の3代目の店主なのである。
そして……この男には、もうひとつ別の顔がある。
彼の名は、森田釣竿(もりた・つりざお)。
あのフィッシュロックバンド「漁港」のリーダー(ボーカル・包丁担当)、その人なのであーる!
漁港(バンド) – Live 2015.05.31 // Fullset 43min – YouTube
どうだ。
めちゃめちゃカッコよくないか。
最近では静岡県で開催されたロックフェス「マグロックフェスティバル 2015」でも数千人のオーディエンスを熱狂の渦に巻き込んだばかり。「漁港」は「日本の食文化を魚に戻し鯛!」を合言葉に、漁師の出で立ちをして魚への愛について歌い、ライブ会場では物販で鮮魚類を売ったり、さらにステージ上でまぐろの解体ショーまでやってしまうという異色のロックバンドなのだ。
もちろん、その姿は決してダテや粋狂ではない。森田釣竿氏は現役バリバリの本物の鮮魚商。そのうえメジャーデビューしたロックバンドのリーダーでもあり、最近では俳優としても映画に主演するなど、各方面で精力的に活動中だ。
映画『アナタの白子に戻り鰹』特報 – YouTube
ちなみに主演した映画『アナタの白子に戻り鰹』では「MOOSIC LAB 2013」で最優秀男優賞まで獲得している。
そんなわけで、ミュージシャンや俳優としての森田氏に思わず目が奪われてしまうそうなところでもあるのだが、なんといっても彼の第一の顔はまず「まぐろのプロフェッショナル」。
これまであらゆるまぐろを取り扱い、まぐろの目利きとなってきた。いわば「まぐろの達人」である森田釣竿氏。
これはそんな男に「究極のまぐろの食べ方」を教わってしまうおうという、非常に大胆な企画なのだ!
絶品! 「塩まぐろ」のつくりかた
──それでは、森田さんイチオシのまぐろの食べ方を教えてください!
はい、よろしくお願いし鱒(ます)! 今日はぜひ『メシ通』の読者の皆さんに覚えて欲しいまぐろの食べ方をご紹介し鯛(たい)です。非常にシンプルな「塩まぐろ」というレシピです。
まず、そもそも魚は海にいる生き物ですので、肉のなかに非常に多くの水分を含んでおり鱒。そこに大量の塩をまぶしてあげることで、魚の身のなかに含まれている水分を抜くと同時に、うま味を引き出していくというわけです。
選ぶまぐろは、赤身でもいいですし、もちろん大トロでもいいですし、どんなまぐろでもいいです。ただ、塩まぐろにすると安価なまぐろでもよりいっそう美味しく食べることができるので、まずは手頃な値段の赤身のまぐろで試してみるといいです洋(よう)。
その際、注意点がひとつだけあり鱒。
切り身のまぐろを買うのではなく、「柵(さく)」でまぐろを買ってきて欲しいのです。
皆さんがスーパーで買う刺身用のまぐろで、板状の長方形になっているものを見かけると思い鱒が、あれがいわゆるまぐろの「柵」です。
とにかく、柵で買うのがポイントなんです。
一般的に切り身のまぐろよりも柵で買うほうが安いですし、魚っていうのは、切った瞬間から断面に雑菌がついてしまい鱒。それは味を悪くする原因になり鱒し、また切り身にしてしまうと「ドリップ」と言われる魚の身の中にふくまれる水分が出てきやすい状態にもなり鱒!
基本的に雑菌は水で洗い流してしまえばいいのですが、鮮度の面や味の面からも、まぐろは柵で買って、食べる直前に自分で包丁を使って切ることが美味しく食べるポイントなんです洋!
まず柵で買ってきたまぐろをバットにおき鱒。
まぐろの身の全面にガッツリと塩をまぶし鱒。
こんな感じで全面にくっつけてなじませて……。
使う塩は、基本的にどんな塩でも大丈夫です。
最初は自分のうちにある塩でいいし、もっと凝りたくなったらいろいろな高級塩なども試してみ鯛ですね。
あとはこのまま待っていると、浸透圧の関係で塩が染み込んでいき、まぐろの身のなかの水分がじわじわと表面から出てき鱒。
こんなふうにバットを斜めにしてあげて、水分が下に垂れてくるのを待ち鱒。
解凍されている柵のまぐろだとして、お好みでかまいま鮮(せん)が、だいたい10分とか15分くらい待つのがいいです洋。
塩が染み込んで水分が出てきました。
しばらく放置してまぐろの身の水分を出し鱈(たら)、さっとまぐろを水洗いし鱒。水で塩を洗い流すイメージです。
これをキッチンペーパーなどで包んで、表面の水分を吸い取り鱒。
たったこれだけで完成です。
これでもう、まぐろがぐっとしっとりとしてくるんです洋。〆さばと一緒で、塩分で身が締まってくるんですね。水気が抜けて、さっきまで「べちゃっ」「ベタベタ」としていたまぐろの弾力がなくなり……
このように、指先で押すとちょうど羊羹(ようかん)のような弾力になっており鱒!!!!この状態がベストなんです!!!!
まぐろは「切り方」で味が全然ちがい鱒!
そして、なんと言ってもまぐろは切り方が大事なんです! まぐろは切り方と厚みで味が全然違うってことを、もっと皆さんに知ってもらい鯛と思っており鱒。
ポイントは、「自分にとって美味しい厚み」を知ることです。
ちなみにまぐろの切り方はトロと赤身でちがい鱒が、今回はまず赤身で食べることを前提に話をさせてください。
まず切る前に、とにかく包丁は研いでから使って欲SEA(しい)のです。
まぐろは柵で買って、自分の包丁で切って食べる!
包丁を使えよ男たち! と声を大にして叫び鯛ですね(笑)。
皆さんもぜひ簡単な研ぎ器を買って欲SEAんです。普通に100均とかにも売っており鱒し。
まぐろの身を包丁で切るときは、ノコギリみたいに何度も前後させてはいけま鮮。
とくに切れ味の悪い包丁で切ると、何度も包丁を前後させないといけないから、それだとまぐろの身の繊維がつぶれてしまうし、美味しさも半減してしまい鱒。
このように、包丁の根元から入れて、刃先で一気に1回かぎりで切りましょう。
くれぐれもノコギリのように包丁を何度も前後させないように切ってください。
そして、いちどで手前に引く動作だけで切りきってしまうこと。
男らしく、一太刀でスパッと切り落とし鱒。
こう、包丁の根元からクッと切りに行って、
スッと刃先で終わるように……。
ここが重要です。
この際に、切り口のだいたいの厚みとして、少なくとも男性の小指の幅くらいの厚みが欲SEAのです。
柵といっても、きっちりとした長方形ではないから、イメージとしては「自分の口の中に入れて総重量が同じになるようなイメージ」で切っていき鱒。あくまでも自分のなかで「このくらいの大きさで食べたら美味SEAかな?」というボリューム感で切り分けてください!
よく安い居酒屋とかで喰う刺身だったり、スーパーで安売りしているような切り身のまぐろって、「なんか美味しくないな」って思うことありま鮮か? で、地方の旅館なんかで食べる刺身が、すごく美味しかったり。
あれって、じつは「刺身の厚み」がすごく関係しているんです。
あまり美味しくないお店で食べる刺身って、厚みがペラペラしているじゃないですか。
それだと、口のなかに入れるとすぐに無くなっちゃう。
で、ペラペラの薄さで切って、醤油をべちょべちょ付けて食べるでしょ。
で、まぐろの風味を台無しにしちゃう。
だいたいこのくらいの厚みが理想的ですね。
このくらい厚みのある刺身だと、口のなかに入れたときに何度も噛まなくちゃいけないから、食感はもちろん、噛むたびに身の旨味をじっくり味わうことができて、頬張ったときの満足度が違うんです。
皆さんもまぐろを切るときに、「何度も噛むくらいの厚み」にこだわって欲SEAのです。
で、これにわさびを乗せて食べます。
そして、醤油はつけずにいっちゃってください。
──えっ!? 醤油をつけずにわさびだけで食べるんですか?
すでに塩の味が染み込んでいるし、まぐろの味をギリギリまで引き出すために切り方や厚みにこだわっており鱒ので、このほうがまぐろ本来の味を味わえるんです。
さっそく私もひと口食べさせていただいた。
口のなかで、それこそ「もぐもぐ」とまぐろの身を何度も噛みしめる。
引き締まった旨味がいっぱいにひろがり、喉奥まで飲み込んでしまうのが勿体ない感じ。
「……うまい」
思わず唸ってしまった。
余計な水分を抜かれたまぐろの身は、ねっとりとした舌触りに変化している。
噛みしめるたびにまぐろの旨味がじんわりと溢れ出してくる。
なによりまぐろの味がめちゃめちゃ濃い。
そして、わさびだけで食すので、醤油の塩っぱさでまぐろの風味が隠れない。
まんま、ダイレクトにまぐろの旨味を味わっている感じ。
──うわ、なんですかこれは……旨いです。いますぐ日本酒が欲しい!
そうなんです洋! 超シンプルな食べ方なのですが、まぐろ本来の味を引き出す食べ方だと思うんです。まぐろを柵で買う醍醐味は、まぐろの厚さを自分で決めることができること。日本酒にも当然合い鱒けど、ワインにも合い鱒よ。
ちなみにこの応用で、塩まぐろに オリーブオイルとレモンを絞ったものを黒胡椒で和えれば洋風のカルパッチョ塩まぐろ 柵のままの塩まぐろを30分ほど酢で〆れば和風の塩まぐろ 切った塩まぐろをコチュジャンとごま油で和えて白髪葱を乗せれば中華風塩まぐろ
と、和洋中のバリエーションが楽しめます洋!
──おお、それはそれで美味しそうですけど、すでにこれを味わっちゃってからだと蛇足というか、勿体ない感じすらしますね。
そうなんです洋! このままわさびだけで食べるのが、いちばん美味しい食べ方かもしれま鮮ね。
よく安売りで買えるようなまぐろのことを、私は「ストリート系のまぐろ」と呼んでいるのですが(笑)、身は水っぽいし、味も薄いものが多いのです。だったら、こういう塩まぐろにして食べたほうが、旨味が引き出されて断然美味SEAものになり鱒。もちろん、ちょっと贅沢してトロの入った柵を塩まぐろにしても、それはもう格別の旨さです。まぐろの世界は、本当に深いんです洋。私はまぐろを売っている側ですけど、売っていてぜんぜん飽きないですから!
どんなまぐろを買えばいいかどうか分からなかっ鱈(たら)……そんなときは、迷わず
浦安魚市場に来てください!
ここにいる魚のプロたちが、新鮮で美味しい魚を優しく教えてくれるはずですから!
いやはや、「塩まぐろ」だなんて、食べたことがなかった。
醤油なしで、わさびだけで食すこのシンプルさ。
酒のアテには最上級のメニューだろう。
しかし、ただでさえ美味いのにこれ、トロでやったら、どれだけうまいのか。
さっそく今夜ウチに帰ったら、自分でも試してみることにしよっと。
撮影:平山訓生
お店情報
浦安魚市場 泉銀
住所千葉県浦安市北栄1-10-20
営業時間:4:00~12:00
定休日:月曜日・第3火曜日
ウェブサイト:http://www.urayasu-uoichiba.ne.jp/storeinfo/izugin
「漁港」公式ウェブサイト
漁港 GYOKO OFFICIAL WEB SITE
書いた人:
多部留戸元気(たべるこ・げんき)
40歳ライター。このところ、しょっちゅう塩まぐろを作って晩酌にしています。わさびは生のものを直前におろして、塩は目の細かい天然塩。まぐろはちょい奮発して中とろの柵でやると、最高です。焼酎と合いますよ。
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