映画『監督失格』公開 急逝から6年 女優・林由美香の残したもの
2005年6月、女優・林由美香さんが急逝した。享年34歳。
彼女の自宅で遺体を発見したのは、元恋人でもある映画監督の平野勝之さん。
その日、平野さんは撮影のためビデオカメラを持って、由美香さんの自宅を訪ねていた。そして……。
今年9月3日、平野さんの監督作品『監督失格』が公開された。
主演は、林由美香さん。亡くなってから6年を経ての作品公開だ。
林由美香さんは1989年、18歳の時にAVデビュー。愛らしいルックスですぐに人気となり、亡くなるまでの16年間で、AV・ピンク映画など200本以上の作品に出演した。
平野さんとは、監督と女優として出会い、やがて恋人関係(ただし平野監督は結婚していたため不倫関係)になる。
1996年7月、二人はドキュメンタリー映画撮影のため、自転車で北海道の礼文島を目指し旅に出る。この時の映像が『監督失格』の前半の柱となる。
猛暑の中の旅、精神的にも肉体的にも追い詰められた二人はしばしばぶつかり合う。
そして、本当に激しいケンカをした時、監督はその様子をカメラに収めることができなかった。落ち着きを取り戻した後、ケンカのシーンを撮らなかったことについて、由美香さんは平野さんに言う。「監督失格だね」
ドキュメンタリーを撮る監督としての立場と、感情を持った一人の男としての立場。その狭間で平野さんの気持ちは揺れ動く。
その一方で由美香さんは奔放だ。カメラの前でも躊躇(ちゅうちょ)なく泣き、怒り、ふてくされる。つぶれるまで酔っ払い、もちろん裸にだってなる。
彼女のその潔さは、どこから来るのだろう。
映画の中で彼女が何度か口にした言葉、「面白いことがしたい」。おそらく、それが彼女の中での最大の価値基準だったのではないだろうか。
正しいか間違っているかじゃない、キレイか汚いかでもない。面白いか面白くないか、そのために、一度決めたことを最後まで貫くかどうか。
そんな、人間としての覚悟を求めていたように思う。
後半では、由美香さんが亡くなった日と、その後の映像が中心になる。
繰り返される葛藤、慟哭(どうこく)。由美香さんの母と平野監督、お互い、それぞれの気持ちにけじめをつけるために、もがき苦しむ。そんな中でこの映画は生まれた。
映画を通し、由美香さんの短くも濃密な人生に触れると、その気高さに圧倒されそうになる。
その反面、幸せな結婚をして子どもを産むことを夢に見たりするような、普通の女の子らしい一面をのぞかせる時もある。
いずれにしても、映像に記録されている由美香さんは、とてもきれいで、幸せそうだ。
由美香さんと平野監督は、北海道の旅から戻った後、恋人としての関係を終える。しかし、それまでとはまた違った形で二人の関係は続いていく。
出会いから21年、林さんの死から6年。この映画は、それだけの時間をかけて、二人が産み落とした子どものような存在だ。
由美香さん。幸せな結婚を夢見ていた、あなたの望みはかなわなかったけれど、あなたが生んだこの物語は、今たくさんの人の心を揺さぶっていますよ。
そしてこれからもきっと、あなたを愛する人は、どんどんと増えていくでしょう。
映画『監督失格』は、TOHOシネマズ 六本木ヒルズで上映中。10月以降全国ロードショー。
※画像は『監督失格』公式サイトより http://k-shikkaku.com/index.html
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