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少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

したがって、将来の育児資源が増えることは、曲線I全体が上向きにシフトすることで表現できる。

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

曲線Iが、曲線I’までシフトした場合、持つべき子供の数は新たな均衡点P’の水準で決まる。人々が、将来の育児資源が増えるという期待を持つことができれば、合計特殊出生率は回復するはずだ。高度経済成長期に(乳児死亡率の低下にもかかわらず)合計特殊出生率が下がらなかったのはこのためだ。

では、どうすれば将来の育児資源が増えるという期待を形成できるだろう?

まず生殖年齢にある10代後半~30代の男女の所得を増やさなければならない。私の調査では、世帯の年間所得500万円ぐらいが、結婚するかどうか、子供を作るかどうかの閾値になるようだ*8。現在の日本でこの水準に達している20代男性は少なく、非現実的でさえある。しかし夫婦の共働きであれば現実味を帯びてくる。女性労働力の活用と、出産・育児が機会損失にならない仕組みの構築が必要だろう。

また、子供の医療費や教育費の無償化も効果的だろう。今まで親が負担していた費用を行政が肩代わりすれば、そのぶん、別のもので子供に投資できる。子供1人あたりの投資を増やせるのだ。

大切なことは、将来の育児資源が増えるという期待の形成だ。

たとえば円安を誘導する場合、中央銀行が「円安にします」と宣言するだけでは、充分な期待は形成されない。実際に市場に介入しなければ、目標額の円安にはならない。少子化対策も同様だろう。「対策します」と宣言するだけでは無意味だし、ちょっとやそっとでは焼け石に水だ。「子供を3人、4人作っても大丈夫だ」と信じられるぐらい手厚い対策を行って、ようやく効果が出るものと思われる。

現代の少子化と、技術と教育の競争

合計特殊出生率が4.0以上から2.0前後まで下がった現象と、2.0前後から1.5以下まで下がった現象は別だと考える人もいるようだ。しかし、ホモ・サピエンスは20万年以上の歴史があり、その大半を狩猟採集民族として過ごしてきた。合計特殊出生率は4.0~6.0で推移したものと思われる。農耕の開始以降、これが上昇した。これほど長期間に渡って、4.0以上の水準を維持してきた。合計特殊出生率が2.0前後まで下がったのは、最近のわずか数十年のことだ。このタイムスケールで考えれば、2.0と1.5はほとんど誤差の範囲だ。

合計特殊出生率が2.0を割ると、個体数を維持できなくなる。このことから、現代の少子化は過去のものとは違うと考える人もいるらしい。しかし、これは生物の世界では珍しいことではないだろう。たとえば資源が限られた環境でいたずらに個体数を増やせば、個体群そのものの絶滅に繋がる。繁殖を抑制して、資源が充分に増えるまで待つという戦略を持つ生物がいてもおかしくない。

何より、この記事で紹介した少子化メカニズムのモデルは、現在の人口減少についても矛盾なく説明できる。

たしかに戦後すぐの「人口転換」と、現在の少子化は、表面的には異なった現象に見えるかもしれない。しかし、表面的には違う現象だからといって、違うメカニズムが働いているとは限らない。月の公転と隕石の衝突は、引き起こす結果は大きく異なる。しかし、働いている重力のメカニズムは共通だ。地球とリンゴは似ても似つかぬ物体だが、万有引力が働く。少子化メカニズムも同じだ。時代を問わずに当てはまるものだ(と私は期待している)。

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

ここでは親の生涯所得が変わらないにもかかわらず、教育費が高騰した場合を考えてみよう。たとえば、教育・養育にかかるコストが2倍に増えた場合、子供の数が変わらなくても、その子への投資は半分になってしまう。このことは、曲線Iが下向きにシフトすることで表現できる。(※シフト=平行移動)

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

曲線Iが曲線I’までシフトした場合、新たな均衡点P’の水準で親は子供の数を決定する。したがって、合計特殊出生率は下がる。

ここでは「教育費が高騰する場合」を考察したが、人々の所得低下でも同じことが言える。

将来、自分の生涯所得が増えない・もしくは減るだろうという予想が成り立つなら、それは曲線Iの下向きシフトで表現できる。新たな均衡点P’が1人以下の水準まで下がった若者は、子供を作ろうとしないし、結婚もしない。日本は婚外子が極めて少ない国で、結婚と出産が強く結びついている*9。子供を作らない(作れない)なら、同棲しているカップルであっても結婚に踏み出さない場合が多いようだ。

*9:「図録▽婚外子(非嫡出子)の割合(国際比較)」
http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/1520.html

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

日本では戦後、男女を問わず高学歴化が進んだ。
(※余談だが、とくに注目すべきは女子の大学進学率だろう。合計特殊出生率が比較的高く第2次ベビーブームの起きた1964~74年は、ちょうど女子の大学・短大進学率が急上昇した時期に重なる。したがって女性の高学歴化が少子化をもたらすという俗説は間違っている)

第二次大戦後に高学歴化が進んだのは日本だけではない。多くの先進国で同様の現象が見られたという。にもかかわらず、賃金所得の格差は戦後、それほど広がらなかった(トマ・ピケティ『21世紀の資本』みすず書房(2014) p282以降、p316以降)。個人的な感想から言っても、日本で格差拡大が盛んに議論されるようになったのは21世紀に入ってからという印象がある。終戦から20世紀末の長期間に渡り、日本では賃金格差はあまり広がらなかった。

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