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少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

*3:「戦前の初婚年齢の推移をグラフ化してみる(2016年)(最新)」 『ガベージニュース』
http://www.garbagenews.net/archives/1642786.html

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

少子化を確実にもたらすほぼ唯一のものは、死亡率の低下だ。とくに子供の死亡率の低下が、少子化社会への転換をうながすようだ。上記のグラフでは、乳児死亡率(※生まれて1年以内に死亡する子供の比率)を示した*4。一見して分かるとおり、合計特殊出生率と寄り添うように推移している。

*4:「厚生労働省・性別乳児死亡数及び死亡率の推移(1900-2013)─女性と男性に関する統計データベース(xls)」 『Winet』
http://winet.nwec.jp/toukei/save/xls/L100240.xls

20世紀前半に、子供の死亡率を引き下げる医療技術が相次いで発明された。戦後、それらが日本に持ち込まれ、子供たちの生存率が大幅に改善された。団塊世代が登場したのは、戦後に女性がたくさん子供を産むようになったからだとしばしば誤解される。しかし戦後に合計特殊出生率が跳ね上がったという事実はない。団塊世代が登場したのは、女性たちが生涯に産む子供の数を増やしたからではない。医療技術の恩恵で彼らの多くが生き残ったからだ。

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

興味深い点は他にもある。上記のグラフは購買力平価1人あたりGDPの推移を示している*5。購買力平価1人あたりGDPとは、1人あたりGDPを物価やインフレ率を補正して1990年の米ドルに換算したものだ。時代や地域を越えて「1人あたりの豊かさ」を示す尺度である。

*5:「フローニンゲン大学GGDCマディソン・プロジェクトデータベース」
http://www.ggdc.net/maddison/maddison-project/data.htm

日本の高度経済成長は1955年から始まった。1960年代には東京オリンピックで戦後復興を世界に見せつけ、1970年代には押しも押されぬ経済大国の地位を手にする。80年代には日本企業が世界を飲み込むとさえ言われた。ところが、このような経済成長が始まる1955年の時点で、合計特殊出生率は2.37まで下落していた。爆発的な経済発展よりも以前に、少子化社会への転換が進んでいたのだ。これは世間に流布している俗説に反する。

俗説では、まず経済が豊かになり、それによって価値観や生活習慣が変わり、医療が向上して、生まれる子供の数が減る。そして少子高齢化社会になっていくはずだ。この俗説が正しいとしたら、合計特殊出生率は経済が豊かになった後に下がるはずだ。少なくとも、経済成長と同時に下がらないとおかしい。経済成長よりも先に下がるはずがない。

しかし、現実のデータには一致しない。
経済成長が少子化をもたらすという俗説は、疑わしい。

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

経年変化をグラフにすれば一目瞭然だ。日本では、まず合計特殊出生率が大幅に下落して、その後、経済的に豊かになった。このグラフだけでも、経済的豊かさが少子化をもたらすという俗説の反証になりうる。

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

では、子供の死亡率はどうだろう。乳児死亡率と合計特殊出生率の経年変化を示したものが上記のグラフだ。両者の下落はほぼ同時であり、乳児死亡率のほうが若干先に低下を始めている。このことは、子供の死亡率が少子化をもたらすという仮説と矛盾しない。

少子化の原因が分かったので対策書く/書籍『失敗すれば即終了』の補足(デマこい!)

今までの話をまとめれば、つまりこういうことだ。
合計特殊出生率と1人あたりGDPとの関係を見ると、少子化(※少産化)が経済発展よりも先に起きている。結果、グラフはL字に近い形(※左下に膨らんだ形)になる。グラフがこの形になるということは、「経済発展が少子化をもたらす」という仮説には一致しない。

一方、乳児死亡率との関係を見ると、グラフは「逆さのL字」に近い形になる。乳児死亡率の低下が、少子化に先行もしくは同時に起こっていたことを示す。このことは、「死亡率の低下が少子化をもたらす」という仮説と一致する。

少子化の原因は、経済発展か、死亡率か──。
じつは、日本のデータだけでは結論を出せない。
というのも、上記の1人あたりGDPのグラフが「L字」に見えるのは、1960年代以降の爆発的な経済発展を取り込んでいるからだ。それ以前の短い期間のデータだけで作図すれば、グラフは(L字ではなく)右下がりの直線に近い形状になる。つまり、経済発展と合計特殊出生率が同時に下がった、というグラフだ。

「少子化をもたらすには1960年代の日本程度の経済的豊かさで充分だ」という仮定にもとづけば、上記のグラフだけでは「経済的豊かさが少子化をもたらす」という俗説を否定できない。購買力平価1人あたりGDPが1960年代の日本の水準、つまり3~4,000ドル程度まで経済成長する過程で、少子化社会への転換が起きるとも考えられるからだ。
経済発展と死亡率のどちらが少子化をもたらすのか?

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