細野氏、組織改編の権限掌握「今一番大事なのは『廃炉』に向かってどういうビジョンを描くかだ」

自由報道協会主催の会見で語る細野豪志原発担当相

 細野豪志原発担当相は、2011年7月22日に行われた自由報道協会主催の会見で、来年4月にもスタートする原子力の規制機関の組織改編について、「原子力安全・保安院と原子力安全委員会の2つの機関があることで責任体制が若干不明確になっている」と現状の問題点をあげ、「(保安院と原子力安全委員の)統一化をしたら責任体制を明確にし、権限も強化する」と語った。組織のあり方としては「委員会的な要素を残してすべて公開で自由にものが言えるような専門家にいていただく」と開かれた組織とする考えを披露。「2つあることによる弊害を取り除いて、プラスになる部分は残すような組織改変を目指す」と意欲を語った。

 担当大臣が分かれていた原子力委員会と原子力安全委員会の2つを同時に所掌することになった点については、「今まさに一番大事なのは廃炉に向かってどういうビジョンを描くかだ」と直面する課題を示した上で、「短期的な安全の問題については原子力安全委員会の能力をフルに活かし、廃炉に向かってこの問題を解決するという意味では原子力委員会の力を活かし、両方の力を結集して問題解決に向けて努力する」と両組織に期待する役割を述べた。

 また、海江田万里経産相について「保安院といろいろ緊張関係を持ちながらがんばってやっておられるけれども、(海江田経産相は)組織のトップなのでこの組織を中から変えるというのは簡単なことではない」との見解を示し、一時会見などで「経産省自身の手で独立性を高めていく」と述べていた海江田経産相を牽制。「私の役割として、海江田大臣との違いとして、しっかりやっていきたい」と原子力の規制機関の組織の改編は細野原発担当自らの手で行うことを強調した。

■細野豪志原発担当相とニコニコ動画記者(七尾功)とのやりとり

七尾記者の質問に答える細野原発担当相

七尾記者: 細野大臣は17日のNHKで「保安院についてエネルギーの安定供給を念頭におきながら規制をしないといけないという自己矛盾を抱えている」と発言されましたが、一方で内閣府においても原子力政策を推進する立場の「原子力委員会」と規制する立場の「原子力安全委員会」が大臣のもとにあります。これも経産省と同じ問題を抱えているのではという指摘がありますが、この点いかがお考えでしょうか

細野原発担当相: 私が原子力委員会と原子力安全委員会を両方所掌しているのがどうなのかというお話ですが、確かにこれまでは内閣府の中にこの2つの委員会が存在をしてきた中でそれぞれ担当大臣を分けてきたんですね。今回、全部確認しきってませんけれども両方兼ねるというのは珍しいことは間違いありません。この2つとも持つということになりましたのは、まさに今生じている特殊な事情に鑑みて原子力の専門家の英知を集めたほうがいいだろうという、そういう菅総理の判断があったというふうに考えています。

 それぞれの役割を少し整理して申し上げたいんですが、原子力安全委員会はもちろん安全サイドに立って様々な助言をする、ダブルチェックといわれますが、そういう機関ですからどちらかというとブレーキ役をやるわけですね。原子力委員会は長期的な原子力のビジョンをつくるという役割がありますので、そういった意味では確かにこれまでは原子力を進めるという立場でやってきたんですが、もうひとつ原子力委員会で非常に重要な役割があって、それは長期的に原子力に関して取り組まなければならないことについてビジョンを出すという、こういう役割があるわけです。

 そういう整理をしたときに今の原子力の問題で長期的に一番取り組まなければならない問題はなんでしょうか。これは明らかに廃炉に向かってしっかりやることなんですね。ですから私のほうで原子力委員会の近藤駿介委員長に対しては長期的なビジョンをつくってもらいたいと。もちろん長期的なビジョンにはエネルギーの供給についての様々な考え方もあるんだけれどもそれよりむしろ今、より優先順位が高いのはですね、もちろんエネルギーの安定供給大事なんですよ。大事なんですけれど今まさに目の前で一番大事なのは廃炉に向かってどういうビジョンを描くかだと。さらには原子力委員会は例えば六ヶ所村の問題とか高速増殖炉とかそういうことも扱うんですけれども、そのことにお金をかけるよりは今はむしろこちらのロードマップ、長期的なものをつくるほうを優先すべきだということを要請をして今、原子力委員会はそういうことにもっとも力を入れて検討していただいています。ですから短期的な様々な安全の問題については原子力安全委員会の能力をフルに活かし、廃炉に向かってこの問題を解決するという意味では原子力委員会の力を活かして、両方の力を結集して問題解決に向けて努力すると。これは今の私の考え方です。ですからそこは現段階においては矛盾を感じていません。

七尾記者: 保安院と原子力安全委員会の統合について検討されるとのことですが、そうしますとその新たな機関を第三者的にチェックする別の組織というのは念頭にありますでしょうか。

細野原発担当相: 保安院と原子力安全委員会を統合した場合に機関がひとつになりますから、そこは他のいろんな意見が反映しにくくなるのではないか、そういうご質問ですよね。そういうご批判は確かにあります。ただ逆に2つ機関があることで責任体制が若干不明確になっているところがあるのも事実なんですね。例えば原子力安全委員会で今検討しているのは「安全設計審査指針」というベースになる原子力の安全の基準をつくっています。ただ原子力安全委員会がつくるこの指針に基づいて保安院がやらなければならない法的な義務があるかというと、そういう体制にはなっていないんです。原子力安全委員会がつくるこの指針を、言うならば斟酌をして、それぞれ例えば保安院がいろいろ政省令を出していたり、いろんな基準をつくっていたり、今は例えば緊急安全対策をやったり、ストレステストをやり始めていますが、それらをやるという形になっていて、この2つの責任体制が非常に不明確になっているんですね。私はここは統一化をしたら責任体制は明確にしたいと思っています。権限も強化します。そのことによって基準を作ったら、それが守られているかどうかも一元的に確認をすることでしっかりと安全をそれこそ責任をもって確保できる体制を整えたい、これがまず第一なんですね。その上で残された課題は、今、七尾さんがいったように、じゃあ自由にものが言える、セカンドオピニオン、さらにはサードオピニオンが出てくるような規制機関のあり方の方がいいのではないか。そこは私も配慮したいと思っています。

 ですからひとつの組織を作るとしてもそこに何らかの委員会的な要素を残して、そこはもうすべて公開で自由にものが言えるような専門家にいていただくと。そのことによって例えば新しくできる規制機関が万々が一誤った方向に行きそうになった状況になったのであれば、しっかりとそこで違う意見が出てきて国民の皆さんがおかしいなということに気づいていただけるような、そういう組織づくりは心がけていきたいと思っています。ですから2つあることによる弊害を取り除いてプラスになる部分は残すような組織改変を目指していきたいということでございます。

■細野大臣の組織と海江田大臣の組織の棲み分けについて

七尾記者: 細野大臣の組織と海江田大臣の組織の棲み分けというか関係について教えてください。

細野原発担当相: 私が大臣になって3週間くらい経ったかと思うんですが、役割はもう明確になってきたと思っています。まず東京電力の福島原発の収束は、これは私の担当ですので。経済産業省にかかわる保安院の皆さんにも協力をしていただいてますし、例えば健康の問題なら厚生労働省、文部科学省、モニタリングならばまた様々な省庁の皆さんに協力をしていただいて私のもとでやるという体制が整いました。ですからそこはひとつ大きな役割分担として明確になっているところですね。

 そしてもうひとつ役割としてやはり私がやっていかなければならないのは、ちょうど先ほど申し上げた部分ですけれども原子力の規制機関の組織の改編。これは海江田大臣ももちろん保安院の皆さんといろいろ緊張関係を持ちながらがんばってやっておられるけれども、やはり組織のトップですから、この組織を中から変えるというのは簡単なことじゃありませんので。私は組織の外にいるだけに保安院をどう切り離して新しい組織をつくっていくのかということについて、比較的そこは柔軟に私なりのいろんな知見をいただいた上で判断をして行うことができるようになっていますから、わたしの役割として海江田大臣との違いとして、しっかりやっていきたいと思っています。

(七尾功)

◇関連サイト
・[ニコニコ生放送] 七尾記者の質問部分から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv57205860?po=news&ref=news#0:12:05

【関連記事】
横粂議員「菅総理の『脱原発宣言』は偽りのもの」
民主党除籍の横粂議員「菅総理の信なき政治を終わらせる」 菅首相の地元で出馬へ
大学講座の新しいかたち ネットユーザー参加型実践講座「会見質問をみんなで考えよう」
「電力消費量を10%削減し、10年以内に脱原発を」 共産・志位委員長が外国特派員にアピール
菅首相の「脱原発依存」の方針に、原口氏「今回は間違っていない」

  1. HOME
  2. 政治・経済・社会
  3. 細野氏、組織改編の権限掌握「今一番大事なのは『廃炉』に向かってどういうビジョンを描くかだ」
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。