「上司へのハンコは斜めに押す」は金融業界の悪しき慣習?
ハンコの押し方には注意が必要
報告書、休暇届け、納品書、領収書など、「ハンコ社会日本」では、日常生活やビジネスシーンにおいてさまざまな機会でハンコを押します。ハンコは文字を刻んだもので、通常「判」や「印章」と呼ばれ、「確認しました」「受け取りました」という意思表示の意味と、確定申告や小切手のように法律上の手続きにおいて必要になってくる場合があります。
このように、ハンコにはさまざまな用途や種類がありますが、押し方には注意が必要です。また、ハンコには「捺印(なついん)」と「押印(おういん)」があり、自筆で署名してハンコを押すのが捺印で、自筆以外に書かれた名前にハンコを押すのが押印の意味で使い分けられています。
敬意表現には押し方よりも渡し方や言葉遣いが重要
ところで、そのハンコの押し方について、金融業界では左斜めに傾けて押す慣習が存在すると、インターネットを中心に話題を集めています。主に上司へのハンコを斜めに押すことで、「部下が上司にお辞儀するように」との意味合いがあるそうですが、斜めに押された印影を見て好感が持てるとは思えません。
確かにお辞儀は上司への尊敬の念を表すものですが、お辞儀はハンコではなく、心を込めて動作で表現するものです。書類で上司に敬意を表現するには、ハンコの押し方よりも「渡し方」や「言葉遣い」に気を付けるべきです。つまり、上司に書類を渡す時には姿勢を正し、上司に見やすいように正面を向けて両手で渡すと、丁寧な所作になります。
上司の教養や品格も問われる
加えて書類を渡す時に発する言葉は、「書類をお持ちしました」や「こちらでの報告書の内容でよろしいでしょうか?」など、敬語を正しく使用すれば敬意が伝わります。ちなみに、上司への年賀状の賀詞で「迎春」「賀正」は、敬意が込められてないので不向きです。さらに大切なことは、部下が上司に対して態度や言葉遣いなどで敬意を表現すれば、上司はそれを理解して真摯に受け止めることです。つまり、上司の教養や品格が問われるということです。
また、ハンコを斜めに押すもう一つの理由として考えられるのは、右上がりになるよう縁起を担ぐためです。このような慣習であれば、それに倣うのがベターですが、上下関係に左右されず全員統一した方がいいと思われます。
ハンコを押す意味や責任の重大性を再確認
ハンコの押し方には、押した人の気持ちや性格が映し出されるといわれますが、真っすぐに鮮明に押されたハンコは凛として誰からも好印象が持たれます。ハンコを正しく持って、捺印・押印する場所を確認し、朱肉をつけすぎず、紙に対して垂直に押して下さい。「の」の字を書くようにして押し、ゆっくり真上に向けて離すのがお勧めです。なるべく、朱肉版を使用して下さい。
さらに、ハンコを押すことは、単なる認めの印として押す場合もあれば、大金の保証人になったりする時もあります。加えて婚姻届け・離婚届に押すこともあります。程度は時と場合によりますが、いずれにせよ、気持ちにゆとりを持って押すことが大切です。特に大きな決断をする際には、深呼吸して気持ちを整え、ハンコを押す意味や責任の重大性を再確認して下さい。
(平松 幹夫/マナー講師)
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