原発事故調・畑村委員長「100年後に見たとき、恥ずかしくない中身にしたい」
東京電力福島第1原発事故をめぐる事故原因や法規制のあり方などを検証する第三者機関「事故調査・検証委員会」の畑村洋太郎委員長(東大名誉教授)は2011年6月7日、今後の調査のとりまとめについて「100年後に見たときに恥ずかしくない中身にしたい」と意気込みを語った。
調査にあたっては罰則や強制力は行使しない方針を明らかにし「”あなたも協力してください”という言い方が嘘をついたときに罰するよりはるかに強い力を持つのではないか」と述べた。
また、「東京電力本店と福島第1原発の吉田昌郎所長とをつなぐ『TV会議』映像が一部残っている」件については、その存在自体を「知らない」としながらも、客観情報となる可能性を認め、一定の関心を寄せた。
畑村委員長とニコニコ動画の記者(七尾功)との一問一答は以下のとおり。
七尾記者: 今回の件は特に事故当初において議事録、発言録がなく、聞き取り、メモだけで、客観情報がない点が指摘されております。こうしたなか東京電力が5月30日の政府・東京電力の共同会見で、東京電力本店と福島第1原発の吉田昌郎所長とをつなぐ『TV会議』映像が一部残っていると述べました。12日の福島第1原発1号機への海水注入の中断に関する会議映像については「まだ確認中」とのことでした。これはいわゆる本店で残っているという話で福島原発の吉田所長のところでも録画が残っている可能性があるわけですが、この点に関してのご関心のほどをお聞かせいただけますでしょうか。
畑村委員長: どこでなんの記録をとっていてどうなのかというのは僕は全然知らないし、だからあんまりコメントできないね。
七尾記者: TV会議映像の件を枝野(幸男)官房長官にもお尋ねしたところ、これは公開すべきだと。細野(豪志)補佐官も、検証委員会からTV会議映像を求められれば応じるということでしたので、そういう存在を─。
畑村委員長: 知ってたほうがいいってね。
七尾記者: はい、そうです。これが(有力な)客観情報になる可能性がございますので。
畑村委員長: そうですね。そういうことかもしれない。もうひとつね。僕はね皆がね、後からいろんなものがわかってみると、あの時そうだったのに出さなかったから「隠した」っていうふうにみんなが言う。もうひとつは、その時同時に起こっている別のものを、後から考えると矛盾した判断や行動になっている時があると「インチキやった」ってなるんだけど、どちらも僕は後から見ればそう見えるけど、その時わからないというか一生懸命やってそういうふうになっているっていうのを後からそういって決めつけてしまうような見方っていうのは、こういう検証メンバーがやるような時には、なじまない考えだなという感じがするんです。
とっても言いたいのは、例えば今東京電力の現場でものすごい数の人がなんとかしようと思って、皆でめちゃくちゃ努力しているわけね。そういう努力をしていることをきちんとこちらがわかった上で、それでそのなかに起こる矛盾とか齟齬とかね、そういうものがこんなことになっちゃうんだというふうに見るのでないと大変に申し訳ない感じがするんですよ。そこの場所でやっている人たちってね、いつもひとつとかふたつのことしか見えないしわからないなかで最善の努力を皆してると思うんですよね。そうすると後から見ると全体としておかしいことになってたって、いくらでもそういうことが起こると思う。
だからこれは責任追及のようなものとも本当は絡んでくるんだけれど、一番一生懸命きちんとやろうとしている人の結果的に見たなんかのおかしいようなものが責められるようなこととか、矛盾を指摘することとかいう方向には自分ではいきたくないなというふうに思います。
七尾記者: TV会議映像でしたら、言った、言わないというふうには少なくともはならないと思うんです。
畑村委員長: なんないですね。ならない、うん。
七尾記者: 相手側から資料の提出を求める場合は、どれくらいの強さで求めるかたちになりますか。強制力を・・・。
畑村委員長: それこそわからないね。なぜわからないのかというと例えば、強制してこの範囲のこれを出しなさいという。もうひとつ、嘘ついたらどうするの、というのがあるね。嘘ついたら罰せられるよというので、それでちゃんと出しなさいというやり方ってこういう検証するのにはなじまないと思うんです。嘘ついちゃ駄目よ、とは言ってもいいけど嘘ついたら罰するぞって言うのでそれでなんでもいいから知ってることなんでもかんでも全部喋らないといけないというふうにやるのは、ほとんど責任の追求のものと受ける人のほうから見たらほとんど同じに見えると思うんですよ。それは責任追及を目的としないといってるものと罰則を決めてやるようなものとは僕は矛盾すると思う。そっちをやりたくないんですよね。
七尾記者: 責任追及はわかるんですね、それはまた別の話で。ただ国民にとって見れば「隠蔽」というキーワードがあって隠蔽を皆さんの委員会でなんとかしてほしいというのがおそらく国民の関心だと思います。この点についていかがでしょうか。
畑村委員長: それはもうまったくそうだと思うんですよ、そこは。じゃあ本当にどうするのといったときにね、僕が思っているのは今日の(委員会の)なかで100年後に見たときに、恥ずかしくない中身にしたいって言うのをいったのはとても強く思っています。後から見たときに、あそこうまいこと言ってすり抜けてなんとかなったけど、やっぱり蓋を開けてちゃんとしてみたらあいつらなにしてたんだっていうのが50年後、100年後に言われるような、そういう検証やそういう分析か発言か記録か知らないけれどもそういうものと言うのはやはり今回のような重大なもののところでそれをやるというのは、人間が生きている社会の中で一番「あなた、やっちゃいけないことをやったことになるんだよ」という評価が僕は起こるんじゃないかという気がするんですよ。
多分一番大事なのは・・・なにか知りません。だけど後の時代から見たときの評価に耐える中身に「あなたも協力してください」という言い方が僕は嘘ついたときに罰するぞっていうのでやるよりはるかに強い力を持つんじゃないかっていうふうに思っています。
(七尾功)
◇関連サイト
・[ニコニコ生放送]七尾記者の質問から視聴 – 会員登録が必要
http://live.nicovideo.jp/watch/lv52539724?ref=news#17:34
【関連記事】
東電のTV会議映像「全面公開が当然」と枝野長官
吉田所長とのTV会議の録画「残っている」と東電
吉田所長とのTV会議の録画は存在するか 「確認させてください」と東京電力
ウェブサイト: http://news.nicovideo.jp/
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。