見てはいけないものを見てしまったのか? 台北で五星紅旗(中国国旗)が振られる!

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台湾取材中の記者は、台北101という超高層ビルの前にいた。

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同ビルは509.2メートルの超高層建築物で、日本のゼネコンがJVを組んで建設された一時期は世界一の高層ビルに認定されていた台湾を代表するビルだ。
さて、地下鉄からビルに入ろうとしたところ、地上で何やら歌声がするので見上げると、記者に見ていけないものを見てしまったような衝撃が走った。

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そこには五星紅旗(中華人民共和国の国旗)を掲げた団体が声高らかに歌っていたのだ。
台湾で五星紅旗を掲げるというのは、とんでもない示威行為のはずだ。こんなことが許されるのだろうか。

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そして、その団体を取り囲むようにして一緒に歌って手をたたいている見物客がいたのだ。
目を疑うような光景で、官憲に捕まるのではないだろうかと思いしばらく見ていた。
ビルの警備関係者が遠巻きに見てはいるものの退去させるような気配はないし、警察も来ない。
現地の人に聞いてみた。

--こんなことをして捕まらないのですか?

「台湾は自由ですからあのような行為をしても誰も制止できません。彼らはそれを知っててやっているのです」

--彼らはどんな主張をしているのですか?

「台湾も中国人であるから、中華人民共和国の成立66周年を祝うと書いてあります。そして、中国も香港もマカオも台湾も釣魚島(尖閣諸島)も分割できない中国の領土だからみんな同じ中国人だと。だから大陸側の観光客を歓迎するという内容のようです」

--では、それらを見て一緒に手をたたいて歌っている人たちはこの主張に賛成の人なんですか?

「いえ、ほとんど中国人(大陸の人)でしょう。台湾人は賛同するときに手をたたいたりしませんから。こぶしを挙げるのが普通です。賛同するときに手をたたくのは中国と北朝鮮くらいです。たまたま台湾に旅行に来てこの団体に出くわしたのか、示し合わせて団体で来たのかは知りませんが、いずれにしても台湾人ではないのは間違いないですよ」

--では、主張している人たちは台湾人なんですか?

「一応、マカオに住む台湾人商人ということになっているようですが、彼らの歌の発音は台湾人には違和感を覚えます。中国人の発音ですね。書いてある文章も中国語には変わりありませんが簡体字ですし、台湾人はあんな文章は書かないです。文法的に見ても中国の人でしょうね」

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その団体の反対側に「台湾独立」と書いてあるのぼりを持った人たちが整然と立っている。

--この人たちは何をしているのですか?

「大陸側のこの主張に真っ向から反対する勢力です。特に何をするわけではないのですが、主張に対しては主張で返すだけです。文字も台湾の漢字でしょう?」

--こんなことが台北のど真ん中で行われていて、どうお感じになりますか?

「無茶苦茶だと思いますよ。こういうのが中国のやり方なんです。日本でニュースになっているか知りませんが、東日本大震災の義援金は中国が最も額が多かったと平気で主張しているのです」

--そんなことはないでしょう? 額の問題ではないですが、台湾の方が断然多かったのは日本人ならみんな知ってますよ。

「なぜそういう主張になるかわかりますか? 台湾は中国の一部だから、台湾が多くの義援金を日本に送れば、その額も中国が送った額という計算で、仮に中国が少なかったとしても台湾と合計すればそういう主張になるのです。このニュースが台湾で流れた時には大反発でした。こういうことを平気でいうのが中国なんです。最近はこういうことはよくあるので、誰も気にしなくなりました。日常の風景です」

こんなニュースがあったとは、なんともやりきれない思いではあるが、政治的な主張の正当性は抜きにして、こういうことが平然と行われているのが現在の台湾の実情である。日本で報道されることはない日常だろう。

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さて少し離れたところでは、今度は団体で座り込んで何やら祈るような仕草をしている。
中国では非合法化された法輪功の会員が自分たちの正当性を主張しているのだいう。

まもなく総統選挙が行われる台湾ではあるが、水面下で行われている駆け引きなのか、単なる自由な主張合戦なのかは記者にはわからないが、これもまた報道されない台湾の実情である。

※写真はすべて記者撮影

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(執筆者: 古川 智規) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

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