『龍三と七人の子分たち』下條アトムインタビュー「役者たちが素っ裸でやってる映画です」
全国を爆笑の渦に巻き込みながらメガヒットを記録しました北野武監督の17作目の最新作『龍三と七人の子分たち』が、いよいよ本日10月9日(金)に待望のDVD&Blu-rayリリースとなります。
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引退した元ヤクザのジジイたちが、オレオレ詐欺や悪徳訪問販売でやりたい放題のガキどもと対決する、気分爽快“ジジイ大暴れエンタテインメント”。平均年齢73歳の超ベテラン俳優たちが個性豊かでどこかチャーミングなジジイを演じ、軽快なテンポで進む本作は、北野武監督作品ではめずらしい、誰でも観られる一般映画(映倫マークG)。ご家族そろって楽しめる作品なので、三連休にぜひ。
今回、ガジェット通信では本作で重要な役柄を演じた、下條アトムさんのインタビューを入手。映画について、北野監督、藤田竜也さんについて語る下条さんの言葉にご注目。
———ご出演のオファーが来た時はどのように感じられましたか?
下條:とにかく、嬉しかったです。北野監督とは本作で初めてお会いしましたが、うちの親父(俳優の下條正巳)は一緒に『教祖誕生』などで共演したこともあり、本作に出演することをものすごく嬉しそうにしたのを覚えています。監督にも脚本のホン読みの際に「親子2代、殴られ役でよろしくお願いします」とお伝えしたら、ニヤニヤ笑っていましたね。
——撮影現場はどのような雰囲気だったのでしょうか?他と違う点など思い当たりましたら教えてください。
下條:緊張しまくりましたね。いままでの現場だと監督と役者がおしゃべりしながらいろんな選択肢を作りあげましたが、監督が来る前の時点でどう撮影するかがすでに決まっていて、そのためにスタッフ全員がびんと張り詰め、すごく緊張感に挟まれた感じでした。それが世界の北野監督がいままで作り上げてきたオーラというものでしょうね。そういう意味ではとても新鮮な現場でしたし、他の役者さんたちも同じことを言っていましたね。とにかくとても緊張しました。
——今回若造集団の一員としてのご参加でした。パチンコ屋での龍三との対峙やバスを追いかけて走るシーンなど、大変だったのでは?何か印象に残るエピソードがあれば教えてください。
下條:しんどかったです。体を張るのは好きですが(笑)。今回の作品は、徳永(役名)だけど、下條としていろんな演技や芝居をくっつけるのではなく、素っ裸で監督とぶつからなきゃいけないと思いました。だから、殴られるにしろ、蹴られるにしろ、走るにしろ、頭の中で考えるのではなく、自分のできることを全部ストレートにぶつけてみよう、ということでした。監督に身をまかせるといいますか、できる範囲のことは全部みせちゃおう、やっちゃおうという感じでした。というのも、監督からこうしてほしいという指示はちらほらあって、やり過ぎると助監督が(耳元でこそこそ)「あれはやらない方がいいですよ」と言われたりね(笑)あー見られてる!とやっぱり思った通りだと思いました。下手な芝居したら、ばれちゃう。最初のパチンコ屋のシーンがそうでした。なので、うまく演じようというんじゃなくて、その場で感じたことを藤さん(藤竜也)がおっしゃっていた「セッション」のように、パンとその場で思ったことを演じよう、と思いました。
——藤竜也さん他、ご出演者はいかがでしたでしょうか?
下條:藤さんとは初めての共演で、実はずっと前から憧れの存在でした。今は亡くなった藤さんのマネージャーさんをよく知っており、その方とよく藤さんのお話をしていましたね。男の色気もあるし、たまらないですよねー素敵で。まいっちゃいますよねー。ベールに包んでるわけでもなく、実につまらないところで見栄張ったりもしない、ご自分で名古屋(現場)まで車で運転なさったりして、そういう意味じゃ、非常にスマートな方ですよ。自然体で、ストイックでもありながら遊びこころもあるしね。いろんなものをもっていらっしゃる、実にスペシャリストですよね。中尾彬さんと一緒だとうるさいので(笑)。なるべく藤さんにお話聞きたいなと思って近くにいましたけど彬先生が「なんだ、俺のところには来ないのかよ」と、そういうことばっかり言いながら、遊んでましたけど(笑)。いじられ役を買って出たつもりはなにもないですが、彬先生がね〜「アトム、いたのか!」と、いじられ役をつくってみんなを和ませたから、結果としてそういう役名も良かったと思います。
——『龍三と七人の子分たち』本編をご覧になった時のご感想はいかがでしたか?
下條:初号試写の際に初めて観ました。その場に藤さんもいらっしゃったのですが、みなさん、藤さんいらっしゃるとそのまわりのお席を開けちゃうんですよね。気をつかって。(笑)それはそうですよね。主演の方だし。そこで、藤さんから「下條さんちょっと来てよー」と言われて、大丈夫かなー、ホモっぽくみえないかなー(笑)と思いつつ、お席を一個ずらして観ました。藤さんもいらっしゃるし、僕は一言も笑えませんでしたし、藤さんも笑ってませんでした。1回目ですから、ここでカットされたんだとか、恥ずかしい!とかね。自分がどう映っているのか、それを見るのに精一杯ですよね。終わりに藤さんがため息をついた同時に、僕も「はー」と、ため息をつきましたね。(笑)
——劇場公開で場内に爆笑が巻き起こったり、エンドロールで拍手が起こったりなど、全国各地ですごい反響がありましたが、家族や友人など、まわりの方々の反響はいかがでしたか?
下條:今回は信頼できる友達にも見てもらいましたね。みんな「なんだなんだ、今まではこんなこと何も言ってなかったのに」と言ってましたけど、チケット渡して見せましたね。そのくらい、「かけた」だとオーバーかもしれませんが、こういう喜劇はやったことがないんでね、役者としてどうみえているのか、気になりました。
——ナレーションのオファーが来た際にはいかがでしたでしょうか?
下條:嬉しかったです。即、それは嬉しいからやらせて!となりました。これでほかの方がやったら残念な気持ちになると思ってね。ただ、自分が出てるから立ち位置がわからなくて非常にぶれ條でやってました。(笑)「朝だ!生です旅サラダ」など、旅番組なら気楽に言える部分もあるけど、自分が演じているところに「おい、おい」とか入れるとかね。客観的でいいのか、それとも入っちゃっていいのか、その間がいいのか、もうちょっとテンション高い方がいいのか、わからないままやったのかな(笑)。みなさんがよかったと思えていただければ嬉しいです。(※スタッフ一同:ばっちりでした!)
——最後に『龍三と七人の子分たち』の見どころについて。
下條:この映画は、何も考えないでみてください!役者たちも素っ裸でやってましたからね。裸になって、心を開いて、笑いたいなら笑っていいし、(劇中の)藤さんのようにおならしたいなら「ぷっ」とおならしてもいいし、それくらい、毛穴も開いてみていただくと、きっとこの作品の良さがすごくみえてくるんじゃないでしょうか。あんまり、理屈を言わずに、生きていくのは誰しもしんどいことでもあり、そういうときにこういう作品があるとね。すごくその時間はうれしい時間になるでしょうね。
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