今週の永田町(2015.9.29~10.8)

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そのうえで、「年内のできるだけ早い時期に、緊急に実施する対策を策定し、直ちに実行に移す」と、年内にも具体策第1弾を打ち出す考えを表明した。安倍総理は、有識者らで構成する国民会議を加藤大臣のもとに設置して、2020年までのロードマップ(工程表)を定めた「日本1億総活躍プラン」を策定する方針だ。

 

ただ、1億総活躍社会に向けた政策テーマは横断的で、経済再生・地方創生・社会保障など他の大臣職の所管とも重なる部分も多く、どのように差別化を図っていくかがはっきりしていない。また、担当大臣の権限なども曖昧で、事務局体制づくりもこれからだ。

こうした点に、安倍総理は「1億総活躍社会づくりは、最初から設計図があるような簡単な課題ではない。司令塔たる閣僚には、省庁の縦割りを排した広い視野と大胆な政策を構想する発想力、それを確実に実行する強い突破力が必要だ」と、1億総活躍担当大臣を新設した意義を強調した。その大臣職に加藤氏を起用したことには、官房副長官として霞が関の関係省庁を束ねてリーダーシップを発揮してきたことや、女性活躍や社会保障改革に携わってきたことなどを挙げて「官邸主導の政権運営を支えてきた。司令塔、切り込み隊長として省庁の縦割りを排してほしい」と語った。

 

また、安倍総理は、「引き続きアベノミクスを支える骨格として雇用を増やし、しっかりと所得を増やす成長戦略を実行して、国民の皆さんが真に実感できる経済の好循環を回し続けていく」と、これからも経済最優先で進め、新3本の矢の1矢目「強い経済」に全力を挙げる方針を改めて強調した。地方創生についても「これからが本番だ。北は北海道から南は沖縄まで、目にみえる地方創生を進める」と語った。

 TPPの大筋合意を受けた国内対策については、農産品の関税撤廃・縮小が与える国内の農林水産業への影響を見極めたうえで、「必要な予算は、さまざまな観点から今後、検討を進めていく」と、農林水産業の競争力強化など万全な措置を講じる考えを表明した。政府は、9日にも全閣僚が参加する「TPP総合対策本部」(本部長:安倍総理)の初会合を開いて、国内対策の基本方針を取りまとめるという。政府・与党内からは、景気が足踏み状態でデフレ脱却も道半ばということもあって、TPP関連対策や地方創生も絡めた経済対策、それを裏付ける数兆円規模の補正予算を組むべきではないかとの声も出ている。今後、平成27年度補正予算案の編成も含めて検討していくようだ。

 

 

【臨時国会召集をめぐって与野党が攻防】

安倍総理が1億総活躍社会の実現を掲げて第3次安倍改造内閣が発足したことに対し、野党からは疑問の声が相次いだ。

民主党の岡田代表は、民主党綱領の「すべての人に居場所と出番のある社会をつくる」を挙げて「パクリみたいな感じだ。活躍の中身が問題で、新3本の矢は、すべてが経済からの観点だ。経済の断面だけで切っており、非常に違和感がある」「キャッチフレーズが好きだが、具体的な政策を準備しているかは疑問だ」と批判した。

また、「何が変わって、何をしようとしているのか分からない。論評にすら値しない」(民主党の枝野幹事長)、「そもそも1億総活躍とは何なのか」(維新の党の松野代表)、「全く新味がない。憲法や平和主義を壊す安倍政権に求められているのは、改造ではなく退陣」(共産党の山下書記局長)、「戦前の1億総動員を想起させる」(社民党の吉田党首)などと酷評した。

 

参院選を念頭に安倍内閣と対決姿勢を鮮明にしていきたい野党各党は、まずは新3本の矢からなる「1億総活躍社会」や、TPP交渉で大筋合意した内容などを安倍総理や関係閣僚に問い質したいとして、臨時国会を早期に召集すべきだと主張している。

当初、政府・与党内では、11月上旬に召集して安倍総理の所信表明演説と各党代表質問、衆参両院の予算委員会での集中審議を開催し、来年度予算案の編成前に閉幕する案が有力だった。しかし、日中韓首脳会談や20カ国・地域(G20)首脳会議への出席など安倍総理の外交日程がつまっていることや、TPP交渉の妥結が遅れたことで参加各国の最終合意・協定署名が年末年始の前後になる見通しで、国会承認案や関連法案の国会提出もそれ以降になる可能性が高まった。このことから、政府与党内では、臨時国会の会期を来年1月までで設定し閉会後に日を置かずに通常国会を召集する案や、臨時国会開催を見送る案も浮上している。

 

こうした臨時国会見送り論に、野党側は「議論から逃げるのは論外」(民主党の細野政調会長)、「とんでもない話」(維新の党の松野代表)などと厳しく批判した。

維新の党や日本を元気にする会などはTPP推進の立場で、基本的に評価・賛成との考えを示しているが、共産党や社民党などは大筋合意に強く抗議して、交渉撤退を政府に要求している。慎重姿勢の民主党からは、TPPによる貿易拡大の必要性を認めつつも、「今回の合意は国益に反する」(枝野幹事長)、「本当に国益に合致しているのか」(細野政調会長)と、反対論や懸念する声が出ている。賛否で分かれる野党各党だが、早期の国会審議を求める点では一致しており、与党に足並みをそろえる。

7日、民主党・維新の党・共産党・社民党・生活の党は、野党5党国対委員長会談を行い、与党に臨時国会の早期開催を求めるとともに、臨時国会に先立って、TPP交渉のプロセスなどの情報開示と衆参両院予算委員会での閉会中審査開催を求めることで一致した。

 

 その後に行われた与野党7党の国対委員長会談で、民主党が野党を代表して、TPPなどを審議する予算委員会での閉会中審査の開催と、臨時国会の早期召集を要求した。自民党も閉会中審査の開催には応じた。これにより、11月前半にも予算委員会で開催することとなった。11月9~11日に行う方向で調整している。

ただ、臨時国会の召集については、自民党が「要求を政府に伝える」と対応を明確にしなかった。自民党執行部は、臨時国会召集が必要か否かについて政府と調整のうえ慎重に判断としているが、政府・与党内では、野党が求める閉会中審査に応じて臨時国会を見送るべきとの意見が主流となりつつあるようだ。

 

 

【安倍総理や重要閣僚の発言に注目を】

 第3次安倍改造内閣が発足し、翌8日から本格的に始動となった。今後は、1億総活躍社会の実現に向けた具体策策定や、TPP大筋合意を受けての国内対策の策定、来年度予算案の編成などを着実に進めていく方針だ。また、軽減税率の導入を含む与党間での税制改正議論も近く再スタートとなる見通しだ。

安倍内閣にとって参議院選挙が大きな正念場となるだけに、どのような政策を打ち出して成果をあげていくのだろうか。第3次安倍改造内閣の行方を占う意味でも、当面、安倍総理ら重要閣僚の発言などに注目しておきたい。また、臨時国会の召集をめぐって、水面下の駆け引きも含め与野党攻防が始まっている。重要課題が山積するなか、臨時国会が召集されることになるか否かもあわせてみておいたほうがいいだろう。
 

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