幻のエネ庁案
※衆議院議員河野太郎さんのブログ『ごまめの歯ぎしり』よりご寄稿いただきました
●幻のエネ庁案
エネ庁の若手官僚から添付ファイルが3通ついたメールが来た。
その一
5月1日の政府・東電統合本部全体会合の議事録。
『このままいくと8日にも高濃度の放出が行われる。』
『細野補佐官から,本件は熱交換機の設置といった次のステップに進む上で非常に重要である,また,(今後,放射性物質が外に排出され得るという点で,)汚染水排出の際の失敗を繰り返さないよう,関係者は情報共有を密に行い,高い感度を持って取り組んで欲しい,とする発言があった。』
その二
『今回の震災で明らかになった現行エネルギー政策の課題 経済産業省 平成23年4月24日』なる文書
その三
『東京電力の処理策(改訂版)』
「4月中旬に「上に」握りつぶされた幻の案」というコメントがついているが、極めて的を得た処理策だ。「上に」というのは、政治主導の民主党政権では海江田大臣他の政務三役を指す。
この案を潰して、単なる東電擁護の料金値上げ策では、民主党の正体見たりだ。
以下、一部引用する。
『東電が夏の大停電に対する社会の懸念を利用して、「東電を破綻させると大混乱になる」と政府を脅かしており、それを真に受けている向きも多いが、破綻=オペレーション停止ではないことを明らかにし、オペレーション確保及びそのための資金調達には政府保証を行うことを早急に明確化させることが重要。(それがあれば時間をかけた処理が可能となる)
間違っても、債務超過だからまず国有化、政府出資という選択をしてはならない。国民にリスクを一気に転嫁することになりかねない。
東電は、基本的にJALや一般の事業会社と異なり、完全地域独占で顧客が短気で逃げることができず、安定的に料金収入が入るという特徴がある。(電力料金値上げを真顔で語れることがこれを物語っている。つまり、再生の時に強調される事業価値の毀損を防ぐため早期に処理を終わらせなければならないということに強くこだわる必要はない。)東電が破綻すると金融不安が生じるとか社債に傷がつくと社債市場が崩壊するという脅かしも使われているが、数兆円規模の不良債権化であれば十分市場で対応できるし、仮に貸し出し余力がなくなるなどという銀行があれば金融安定化スキームを活用してこちらに公的資金を注入すると言えばよい。(銀行は絶対に嫌なので黙るしかなくなるはずである。)
今の価格で取引に入ってきた株主は、国が支援すればぼろ儲けできるという計算で買っている者も多いはず。市場は既にかなりの破綻の可能性を織り込み始めており、古くからの株主でも多くは損切りしているか破綻覚悟の保有という判断をしていると思われるので将来100%減資としても大きな問題はない。現にJALの時も全く同じ議論があったが、100%減資が実施された。今後も市場は破綻リスクを徐々に織り込んでいくはずである。
(中略)
課題のプライオリティ
1福島原発の事故の収束
2夏場を含めた電力安定供給(突然死的大停電の回避)
3東電財務不安に起因する金融危機の回避
4福島原発被災者への補償の早急な実施
5国民負担の最小化
6関係者の公平な負担の実現と国民の納得感獲得(円滑な処理に不可欠)
7誘発地震対策、保安院分離を含めた原発規制の抜本的見直し
8発送電分離を含めた電力事業規制の抜本見直し
9東電の分離を含めた再生処理の決定・実施(中略)
原発規制の見直し
1原子力安全規制は経産省から完全に切り離すことが必要。
2原子力安全保安院は廃止し、原子力安全委員会を抜本的に改組・強化(人員も増強)して独立性の高い3条委員会とする。
3委員会の委員の独立性・公正性を確保するための措置を導入。(電力会社やその関係組織・支援組織からの資金提供に関する情報公開など)
4事務局には、外国人を含む民間人を大量に登用。専門知識が必要なポストにはそれにふさわしい職員を配置する。必要に応じて給与体系も特別に作る。この分野は極めて専門性が高いが、日本のレベルは米・仏などに比べて官民ともに極めてレベルが低いことが判明した。バブル崩壊で金融分野の人材のレベルが暴露されたのと同じ。官民の人材流動化が必要。これによりガラパゴス化した原発規制分野の人材の国際化と高度化を図る。山一、長銀破綻などが人材の流動化の突破口となったのと同様、東電破綻がその突破口となる。(以下略)』
菅政権は、官僚の能力を最大限活用できていないのではないか。
ガジェット通信はデジタルガジェット情報・ライフスタイル提案等を提供するウェブ媒体です。シリアスさを排除し、ジョークを交えながら肩の力を抜いて楽しんでいただけるやわらかニュースサイトを目指しています。 こちらのアカウントから記事の寄稿依頼をさせていただいております。
TwitterID: getnews_kiko
- ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
- 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。