給与も低い、役職もなし!「報われない40代」の実像
バブル崩壊後世代の給与は全体的に低い
私は人事制度コンサルティングを通して、たくさんの企業で給与の実態を見てきました。その中で感じることは、40代後半から年配の世代と、40代前半以下の若い世代の間に溝があることです。バブルが崩壊する前に就職した人と、バブル崩壊後に社会に出た人の間に、給与面で不公平が生じていることは多々あります。つまり、40代後半より上の世代と比較すると、40代前半より若い世代(以降はバブル崩壊後世代と呼ぶ)の給与が全体的に低いということです。
理由はさまざまです。まず一つは、バブル崩壊後に初任給額や昇給額が低い水準になったということがあります。また、年功的な人事登用によって管理職数が増加し、なおかつ上の世代が管理職に居座るため、バブル崩壊後世代がなかなか管理職に登用されないという事情もあります。
統計からも「40代前半世代は報われていない」ことが分かる
そのような現実は、厚生労働省が発表した「2014年賃金構造基本統計調査」にも表れました。男女計の平均賃金は29万9600円で、対前年比1.3%の増。しかし、年齢別に見ると、バブル崩壊後世代の中でも40代前半が苦しい現状に置かれている状況がうかがい知れます。
他の世代が対前年比でプラスになっている中、40~44歳男性の給与だけが対前年比マイナス0.6%となっています。また、学歴・年齢別で見ていくと、大学・大学院卒で男女ともに対前年比を割っているのは、40~44歳と65~69歳の2世代だけです。私が経験的に感じていた「40代前半世代は報われていない」ということが、統計からも見て取ることができます。
給与が「働きがい」に直結するわけではない
以上のデータだけを見れば40代前半の人には希望がないように思われますが、そんなこともありません。今まで見てきたのは、あくまでも給与だけのことです。給与というのは、さまざまな外部要因によって影響を受けるため、自分の思うようにはいきません。しかし、「働きがい」というものは給料だけが影響するものではなく、仕事の本質からいえば給料以外のところから生じます。
本質的な働きがいというものは、自分で考えて仕事が進められること(=自律)であったり、自分の能力を超える仕事をすることによる成長の実感であったり、他者への貢献感から生まれるものです。昇進や昇給ばかりに目を向けるより、自律・成長・貢献に意識を向けた方が、豊かな職業人生が送れるはずです。管理職になることだけが、働く目標ではないのです。
給与に依存しない人事施策が求められる
一方で、企業としては働き盛りの40代のモチベーションが低下することは、大きな損失となります。モチベーション向上のための策を実施するとなれば、「人件費が上がる」と心配する経営者や人事担当者もいますが、コストをかけなくてもモチベーションは上げられます。それは、「働きがいを与える」ことです。もちろん、あまりにも不公平な人事制度であったするのは問題外ですが、本質的には給料は働きがいの源泉にはなりません。
自分で考えて仕事をする裁量を増やしてあげたり、成長が促進するサポートを行ったり、より貢献感を持つことができる仕組みを構築したりすることによって、本当の働きがいを与えることができます。そのような地道な施策の積み重ねによって、働きがいのある職場というものは構築されていくのです。経営者や人事担当者には、給与に依存しない人事施策を考えてもらいたいと思います。
(福留 幸輔/組織・人事コンサルタント)
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