勝海舟と吉田松陰がテーマ 炎天下のホールに480名が参集 「第12回勝海舟フォーラム2015」レポート
海の日の7月20日、「勝海舟フォーラム2015」が勝海舟の生誕地・墨田区で開かれた。今年で12回目を迎えるこのフォーラム。勝海舟を顕彰するために年1回無料で開催されているイベントで、最高気温が33度を超す真夏日にも関わらず、海舟ゆかりの地を廻るウォークラリーには150名が参加。さらに、市庁舎横のメイン会場「すみだリバーサイドホール」は480席が満杯となった。
開会式では、墨田区区長として4期16年務めてこの春に引退した山崎昇氏が、銅像建立の資金集めの重要性について話し、新区長の山本亨氏が両国公園を市文化公園として整備したいとの思いを述べた。
今年は、大河ドラマ「花燃ゆ」の放送にちなみ、勝海舟と吉田松陰がテーマとなった。基調講演では、勝海舟の玄孫(やしゃご)の高山みな子氏、メイン講演では歴史家の安藤優一郎氏が、それぞれの視点で勝海舟と吉田松陰について史料を使って熱弁をふるい、会場では多くの参加者が熱心にメモを取っていた。
写真説明:基調講演をする勝海舟の玄孫高山みな子氏
高山みな子氏の基調講演高山氏は、勝海舟と吉田松陰は二人の共通点として、多くの優秀な弟子を育てたことを挙げ、海舟の弟子は坂本龍馬や日本鉄道の敷設に尽力した佐藤政養などの実業家、松陰の弟子は久坂玄瑞や伊藤博文など、どちらかと言うと政治家が多いことなどを指摘した。一方、海舟とその弟子にあたる龍馬の関係については次のように語った。生誕192年になる海舟の像(墨田区役所近く)は今年で建立12年目。隅田川を超えて太平洋を指さしている。一方、生誕180年となる龍馬の像(高知・桂浜)は今年で米寿を迎え、はるか太平洋の彼方を向く。二人の像は共通して、海の向こうを見すえ外国を志向している――。ところで、いつの時代にあっても、指導的立場にある者は、好機が訪れた時に、どのタイミングで実際に行動に移し、己れの目的を実現するかが問われるものである。そして、それが成功するには、日頃から、どれだけ他人(ひと)との縁を大事にしているかも大きな要素となってくる。海舟にとって、文久3年(1863)1月の土佐藩主山内容堂との邂逅は、その人となりを示す最大のチャンスだった。二人とも、たまたま船が嵐にあって下田に避難したのだか、海舟はこの好機を見逃さなかった。ためらうことなく容堂に謁見を願い出た。そして、弟子でもある土佐の龍馬たちの志を説き、脱藩の許しを得たのである。しかし、こうしたチャンスは、時間、場所、相手と、どの偶然が欠けても、得られない。だから、偶然を引き付けるのも、また人の力なのかもしれない。その海舟は、若い龍馬に何を求め、自分の志を託したのか。国の守りを堅め、産業を興し、貿易を盛んにすることで、世界に冠たる日本を作って欲しかったのだろう。その胆力とすぐれた智恵を見抜いていたのだろう。最後に高山氏は、「150年を経てその志を引き継ぎ、新しい世の中を作っていくのが私達の使命である」と次世代に向けたメッセージを送った。
写真説明:落語家・柳家海舟
2004年の二つ目の時代からフォーラムの司会を務めていた柳家麟太郎氏は、この春に真打に昇進、「柳家海舟」に改名した。それから初の司会となった柳家氏は、自分でCD発売した『勝海舟』を壇上で披露した。
写真説明:歴史家の文学博士安藤優一郎氏
歴史家の安藤優一郎氏は、勝海舟と吉田松陰に共通する人物は佐久間象山であるとして、独自の年表を用いて次のように述べた。二人は共に佐久間象山の門下生同志である。そして、勝海舟の妹・順が佐久間象山に嫁いでいる。この事実は、海舟と松陰の人間関係を知る上でも欠かせない要素であり、いろいろな人間関係をつなぎあわせることで違った幕末の歴史が見えてくる。嘉永6年ペリー浦賀来航後、二人の人生は大きく変わっていった。海舟は「海防に関する上書」を幕府に提出、この上書が老中の目に留まり、幕府が登用。技術者でもある海舟は外に向かって力を発揮し出世していった。一方、松陰も「海防に関する意見書」を藩主に提出した。しかし、脱藩の罪で士籍を剥奪、家禄も没収されるなど藩主から咎めを受けた。その後は密航計画を企てたが失敗して蟄居。投獄後に松下村塾を開塾し、教育者として内にむかう人生を歩んだ。これまで二人の関係は不明だったが、海舟の回顧録である吉本襄著『氷川清話』と、海舟と交流のあった徳富蘇峰著『吉田松陰』には吉田松陰の印象を記したくだりがあり、勝海舟と吉田松陰は実際に会っていると思われる。そして、今後も海舟と松陰の結びつきを示す資料を、引き続き探している最中である――。
(c) photo by https://www.facebook.com/minamitakahiko
勝海舟フォーラムを運営する勝海舟顕彰会(会長・廣田健史氏)スタッフの山口千鶴子さんは、「勝海舟フォーラムには歴史ファンだけでなく誰でも参加できる。このフォーラムをきっかけとして、多くの人に勝海舟の偉業と歴史への興味を持ってもらいたい」と語っている。
写真説明 「勝海舟銅像」(東京都墨田区吾妻橋)
(written by 佐藤正子)
Special Thanks&Link■勝海舟を顕彰する会 http://www.katsu-kaisyu.net/■勝海舟の会 http://katsukaisyu.com■鎌倉谷戸の工房 http://www.katsukaishu.jp■med!x/メディックス https://www.facebook.com/minamitakahiko■安藤優一郎オフィシャルサイト http://www.yu-andoh.net/■企画室SEN
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