【映画クロスレビュー】ピクサー待望の最新作は大満足の完成度!『インサイド・ヘッド』
いよいよ7月18日より公開となる、映画『インサイド・ヘッド』。
映画クロスレビュー『インサイド・ヘッド』
【ストーリー】
ミネソタの田舎町で明るく幸せに育った少女ライリーは、父親の仕事の都合で都会のサンフランシスコに引っ越してくる。新しい生活に慣れようとするライリーを幸せにしようと、彼女の頭の中の司令部では「ヨロコビ」「カナシミ」「イカリ」「ムカムカ」「ビビリ」の5つの感情が奮闘していた。しかし、ある時、カナシミがライリーの大切な思い出を悲しい思い出に変えてしまう。慌てて思い出を元通りにしようとしたヨロコビだったが、誤ってカナシミと一緒に司令部の外に放りだされてしまう。ヨロコビは急いで司令部に戻ろうと、ライリーの頭の中を駆けめぐるのだが……。
監督:ピート・ドクター
共同監督:ロニー・デル・カルメン
脚本:ピート・ドクター
製作総指揮:ジョン・ラセター
ヨロコビ:エイミー・ポーラー(日本語吹替・竹内結子)
カナシミ:フィリス・スミス(日本語吹替・大竹しのぶ)
イカリ:ルイス・ブラック
ムカムカ:ミンディ・カリング
ビビリ:ビル・ヘイダー
『インサイド・ヘッド』公式サイト
http://www.disney.co.jp/movie/head.html
「ピクサーの華麗なる復活」/@mtakeshi
正直、ここ最近のピクサーは続編が続いた上に2014年は1本も公開できず、常勝ピクサーも一段落してしまったか……と思っていました。しかし「インサイド・ヘッド」は久々にあの頃のピクサーを思い出す、実にピクサーらしい作品でした。王道の「行って帰ってくる物語」で、あらゆる登場人物の「成長」を丁寧に描いていたのはさすが。
もはやこの映画に対する前情報はいっさい不要です。ピクサー映画で一度でも感動したことのある方ならばぜひ、ぜひ見てください。特にお子さまがいる家族ならば、皆さんで映画館に行くことをお勧めします。これを見た子どもたちが、20年後に同じ映画を見てどう思うのか——多分ピクサーの制作陣は、そんなことを頭に入れながら、将来の大人に向けて作ったのではないかなあ、と思いました。
そして今回、ニコニコ動画でも有名になった七色の歌声を持つピクサーのスタッフ、“アゴジン”ことニック・ピテラ氏が映画に初出演しているとのこと(※解説は最後に)。そのことを知って楽しみにしていましたが、皆さん気付きましたか? 言われてみればなるほどの出演でした。分からなかったらぜひ、もう一度映画館へどうぞ。
【プロフィール】@mtakeshi(宮田 健)
IT系&エンターテイメント系のフリーランスライター。ディズニーのニュースをトリビア抜きで紹介するメディア「dpost.jp」(http://dpost.jp/)を運営中。IT系ではITmedia エンタープライズで「半径300メートルのIT」を毎週連載、そのコラムをまとめた書籍「デジタルの作法」が角川EpuB選書より発売中(http://www.kadokawa.co.jp/product/321501000084/)。
「“観ておいてよかった”と思い返す時がやってくるでしょう」/咲間 岩丸
強力かつきれいなストーリーで観客の心を動かす作品を送り出してきたピクサーですが、最近の作品では観た人が「その後の人生のどこかで突然思い出す」ようなおはなしが増えてきた気がします。『インサイド・ヘッド』もそんな一本です。
作品のテーマである感情について、僕らはほんの一部しかわかっていません。自分の感情であってもうまく制御できないときがあるくらいです。人のなかにある何かとどう付き合っていけばいいのか、ピクサーはヒントを見つけて観客に伝えたかったのだろうと思いました。どの年齢の人も「観ておいてよかった」と思い返す時がこの先の人生でやってくるでしょう。
頭の中のおはなしだけあって作中には“心”や“考え方”に関する現象がいろいろ登場します。もし脳や心理学に詳しい人が身近にいるなら解説を聞いてみてほしいです。ストーリー以外でも野心的な試みが散りばめられているのでお見逃しのないように。
【プロフィール】咲間 岩丸
映画やテーマパークにとどまらない、分野を横断するディズニーが大好物なディズニーファン。
「カナシミ萌え」/ふかみん(深水英一郎)
すばらしい作品です。これまでのピクサー作品の中で、俺的ナンバーワン。
個人的にもう一度観たくて、既に封切り日の映画館のド真ん中の席、予約済です。
おもいかえせば10代、20代の頃、映画を観るたびに新しい発見や、それまで味わったことのない感動を覚えたりしたものですが、30代そして40代になると、映画の中で新鮮な発見がある、なんてことがだんだんなくなってきます。
しかしながらこの『インサイド・ヘッド』は、40代の私でも新鮮な発見と驚きを与えてくれました。
頭の中の「感情」が登場人物、だなんて、はっきり言って妄想にもほどがあります。
しかしながら、どんな状況でも、自分を一生懸命応援してくれている「感情たち」の存在を、こうもイキイキと描かれると、ほんと、ほっこりとした気持になっちゃいます。例えば人間どうしの場合、たとえ親子という関係でも結局は別の人間であり、人は孤独を感じることがあります。しかし、この感情たちは、何がどうあろうと、たとえ自分の身が危なくなろうとも、必死に自分を応援してくれている。感情というものは自分でコントロールしなくてはいけないものだと思い込んでいたのですが、こういった形で、自分の中にある感情や他人の中にある感情を客観視するという視点を得られると、自分自身も落ち着いて物事に対処できるようになるし、他人に対しても、優しくなれるなと思いました。こんな、新しい視点を、楽しみながら得られる本作は、本当に優れた作品だなと感じます。
この映画に登場する「感情たち」は、それぞれ特徴があり、愛らしいのですが、特にカナシミは格別ですねぇ。
最初は、カナシミをもたらすキャラクターなわけですから、ヤなやつかと思ってみていたのですが、だんだん、単なるヤなやつじゃないということがわかっています。もちろん、脳内ヨロコビにあふれてた方が人は一見幸せに見えますが、果たしてそうなの?
それだけでいいの? なんてことを考えつつ、いつのまにかカナシミ萌えになってる自分に気づきます。
封切りが楽しみです。
【プロフィール】ふかみん(深水英一郎)
ガジェット通信発行人。焚き火でマシュマロ焼くのが好き。
「これは義務教育として全国民に見せるべき映画」/よしだたつき
『インサイド・ヘッド』のおかげで人に優しくなれ、生き方が楽になりました――。雑誌の最後によく見かける胡散臭い広告の宣伝文句のようですが、これマジです。
生活をしていると、どうしても気が合わない、言動が理解できない人っているじゃないですか。きっと頭の中の感情たちが“未熟”なんだと分かりました。頭の中の“指令部”にいる感情たちは“操作卓”を使ってヨロコビ、カナシミ、イカリ、ムカムカ、ビビリの指令を送り、本体の言動をコントロールします。映画の中では人それぞれでこの操作卓の構造が異なるのが面白い。子どもはボタンの数が少ないけど、大人になるとより複雑化してあらゆる状況に適応できるようになるんです。付き合いが難しかった人と対面しても「あ~、この人の操作卓はファミコンのコントローラ並みなんだな」と思えば、もう何も気にならなくなりましたよ。あれ……、つまりオレの操作卓がアップグレードされたってことか?
映画のメッセージをかなり捻くれた感じで受け取ってしまいましたが、こんな学びは全体のほんの一部。他にも、夢の中は話がしっちゃかめっちゃかなのはナゼ? 記憶が薄れていくのはナゼ? CMソングのキャッチーなメロディが頭の中でリフレインされるのはナゼ? などなど、頭の中のナゼをいろいろと“納得”させてくれるアトラクション型脳科学ムービー。これは義務教育として全国民に見せるべき映画です。うーん、もうピクサーは“スゴい”を通り越して“コワい”よ!
【プロフィール】よしだたつき
PR会社出身の肉好き草食系雑食ライター。頭の中は“ビビリ”が司令塔です。
「男女の“脳の違い”に爆笑」/藤本エリ
まず、ライリーの気持ちが痛いくらい分かって。筆者も中学2年生の時に転校を経験していて、仲良しの友達との別れに、不慣れな環境、新しい学校……。と、そりゃあもう感情乱れまくり、転校初日はワンワン大泣きしました。その後は結果、たくさん友達も出来たし、楽しい日々に変わったわけですが、映画の中のライリーを観ていて胸が苦しくなっちゃいました。
人間、特に子供の揺れ動く感情は脳の中でそれぞれのキャラクターが意見を戦わせて動いている、という設定が考えれば考えるほど素晴らしすぎるのですが、その他にも「人格を形成する島」とか「思い出の収納場所」とか、楽しいアイデアがたくさん出て来ます。ピクサー映画って観ていると「よくこんな事思いつくもんだ!」と感動するのですが、『インサイド・ヘッド』はその最たるものでは無いでしょうか。
笑えるし、泣けるし、驚かされるしって、まさに観ている人の頭の中が大忙しのこの映画。でも全く疲れません。観たあとは爽やかな感動です、しかも観た後友達とか周りの人と感想言い合いたくなります、絶対に。筆者は個人的に、ライリーのママとパパの脳の違い、つまり男女の脳の違いについて描かれたシーンが大のお気に入り。超・あるあるなので、アラサー、アラフォーの女性も必見です!
【プロフィール】藤本エリ
ディズニーは映画もパークも大好き。一番好きなアトラクションは「ミッキーのフィルハーマジック」。一番好きなパークフードは「ユカタンソーセージドッグ」。
※@mtakeshiさんのレビュー解説/
文章注のアゴジンことニック・ピテラとはこの人です。
http://dic.nicovideo.jp/a/nick%20pitera
http://dpost.jp/2015/07/03/wp-25250/
ニック・ピテラの出演、正解はこれだそうです。てっきり脳内のボーイフレンドの声かと思ってたら……。
http://www.slate.com/blogs/browbeat/2015/06/29/inside_out_s_triple_dent_gum_jingle_now_you_too_can_prank_your_friends_with.html
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