今週の永田町(2015.7.7~14)

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【委員会採決の前提となる中央公聴会が開催】

 今週13日、平和安全法制整備法案と国際平和支援法の安全保障関連2法案を審議する衆議院我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会では、憲法や政治学、外交・安全保障の専門家5人を参考人招致して、委員会採決の前提となる中央公聴会を開催した。

 これまでの委員会論議や意見陳述と同様、与党推薦の参考人が軍事的脅威に対処という現実的な安全保障の観点から関連2法案への賛同を示したのに対し、野党推薦の参考人が憲法論などの理論的な原則論の観点から関連2法案に反対・慎重な意見陳述となった。

 

 *衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中継

 

 元外交官の岡本行夫氏(自民党推薦)は、海外で外国軍隊が日本人を救出した事例を紹介して、「各国の善意と犠牲で国民の生命、財産を守ってもらい、それでよしとしてきた日本のあり方を転換する歴史的な分岐点」と評価した。また、シーレーン(海上交通路)防衛強化の必要性を挙げて「膨大な海域で日本人の命と船舶を守ることは日本単独では無理」であることや、国際紛争やテロ組織の勢力拡大などを挙げて「一国で生命と財産を守り抜くことは不可能」としたうえで、「世界が助け合っているときにわれ関せずの態度を取り続けるのは、日本人を守る負担を他国に押しつけることを意味する」「平和安全法制の大きな意義は、外敵の暴力から身を守り合う仲間のコミュニティーに日本も参加することだ」などと主張した。

村田晃嗣・同志社大学学長(公明党推薦)も「日米同盟の強化は理にかなったこと」と述べるとともに、「法案は憲法上の問題を含んでいるが、同時に安全保障上の問題でもある。安全保障の専門家からなる学界で意見を問われれば、多くの安全保障専門家は今回の法案にかなり肯定的な回答をするのではないか。学者は、憲法学者だけではない」と、関連法案を支持した。

 

一方、野党推薦の有識者は「専守防衛を逸脱し憲法違反だ。あまりにも空想的な希望的観測の上に法制が構築されている」「日本が他国の戦争に巻き込まれずに済んだのは日米同盟のおかげではなく、憲法9条で集団的自衛権行使を禁止していたからだ」(山口二郎・法政大学教授)、「法案は歯止めのない集団的自衛権行使につながりかねず、憲法9条に反する」「このような欠陥法案を成立させることは政治の責任の放棄だ」(小沢隆一・東京慈恵会医科大学教授)と批判した。

木村草太・首都大学東京准教授は「(集団的自衛権の行使容認は)日本への攻撃の着手がない段階で武力行使を根拠付けるもので、明白に違憲」と指摘したうえで、「法律家の大半が一致しており、裁判所も同様の見解をとる可能性は高い」と指摘した。そして、「自衛のための必要最小限の武力行使と認められるのは、あくまで個別的自衛権の行使に限られる」「集団的自衛権行使が政策的に必要ならば、憲法改正の手続きを踏み、国民の支持を得ればいい」とも主張した。

 

 

【与党・維新の党による修正協議がスタート】

維新の党は、8日、政府提出の関連法案の対案として、「平和安全整備法案」と「国際平和協力支援法案」を単独で国会提出した。一方、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態に対処するため、武装集団による不法行為が起きた場合に本土からの距離などの事情で対処に支障を生じかねない区域を領域警備区域として指定して、自衛隊が領域警備行動できるとした「領域警備法案」の共同提出をめぐっては、民主党と維新の党との間で迷走した。

6日の民主党・維新の党の政調会長会談ではで大筋合意していたが、7日の幹事長会談ではあらかじめ採決日程を決めて与党側と交渉するか否かをめぐって対立し、共同提出が白紙となっていた。ところが、8日に岡田・民主党代表と松野・維新の党代表の会談で、内容が類似する法案をバラバラに提出するのはよくないとの認識で一致し、再び共同提出で合意した。党首会談では、与党に十分な審議を求めることや、参議院送付から60日経過しても関連法案が採決されない場合には衆議院本会議で3分の2以上の賛成により再可決することが可能となる「60日ルール」(憲法59条)の適用を阻止することで一致した。これを受け、維新の党と民主党は、領域警備法案を共同提出するに至った。

 

維新の党などが国会提出した3対案は、8日の特別委員会で趣旨説明を行い、10日から政府案と並行して審議された。10日に安倍総理出席のもと行われた特別委員会での集中審議で、安倍総理は、維新の党案が「自国防衛」と「日米の防衛協力の強化」を重視している点を挙げて、「我々と全く考え方が同じだ。日本の防衛のために警備をしている米国艦船を日本が守る、というのも同じだ」と一定の評価を示した。

その一方で、安倍総理は、グレーゾーン事態への対処について「いかなる不法行為にも切れ目のない十分な対応を確保するため、海上警備行動、治安出動などの発令手続きの迅速化を閣議決定した」と強調したうえで、「現下の安全保障環境では十分対応できる体制を整えており、現時点では新たな法整備が必要だとは考えていない」と、維新の党と民主党が共同提出した領域警備法案に否定的見解を示した。中谷防衛大臣兼安全保障法制担当大臣も「警察や海保の対応能力の向上など、必要な取り組みを強化していく」と、現行法のもとで対応していく考えを示した。

 

また、維新の党案が存立危機事態の概念ではなく、「条約にもとづき、わが国周辺の地域においてわが国の防衛のために活動している外国の軍隊に対する武力攻撃が発生し、これによりわが国に対する外部からの武力攻撃が発生する明白な危険があると認められるに至った事態(武力攻撃危機事態)」にのみ自衛隊の武力行使ができるとしている点について、安倍総理は「国際法的には集団的自衛権だ」と指摘した。

8日の特別委員会で質疑に立った公明党の北側副代表は、日本周辺有事で日本防衛のために活動する米軍艦船が攻撃を受けた場合を挙げて「個別的自衛権で対処できるという立場があるが、国際法上は集団的自衛権を根拠にしなければいけない」と批判。自民党の小野寺衆議院議員も「日本が独善的に個別的自衛権と強弁すれば、国際社会から先制攻撃をする国だと評価される」「政府案と同様に、限定的な集団的自衛権を認めたものではないのか」と追及した。これに対し、維新の党は「軍事技術の発展により個別的自衛権と集団的自衛権が重なり合う部分が出てきており、他国への攻撃が次の瞬間、わが国への攻撃に転化、波及し得る」(柿沢幹事長)と、集団的自衛権か個別的自衛権かの表現にとらわれない「自衛権の再定義」によるべきと反論した。そのうえで、「国際法上は集団的自衛権と評価されることを否定しない」(小沢鋭仁・衆議院議員)、「個別的自衛権か集団的自衛権にあたるかは、国際法の世界で問題になるかもしれない」(柿沢幹事長)との認識も示した。

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