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漫画座談会「裾野をひろげないと漫画というジャンルが死んでしまう」『コミPo!』田中圭一×喜多野土竜×一色登希彦×スチームトム

歴史を紐解けば、歴史の教科書でおなじみの近松門左衛門もそうですね。彼は歌舞伎の方から人形浄瑠璃に回帰したんですが、それは役者の色を嫌ったからだと自分は思っています。
生身の人間が演じるってのはメリットも多いですが、どうしても役者に引きずられる。

有名な俳優がときどき声優として演じることがありますが、どうしてもその役者の顔が浮かんじゃいますよね。人形浄瑠璃は細かな所作や表情などは役者に及ばなくても、役者の個性によって台本を書いた作家の作家性を打ち消されることは少ない。アニメーションなどの表現もそうなんでしょうけれども、そこは表現独自の可能性を追求できれば、確立した表現になりうるかもしれませんね。

一色:『コミックシーケンサー』という名の『コミPO!』が今後さらに進化して、肉筆の漫画以上の何かを生み出す道具にならないとは言い切れないと思います。

長期的な希望的な話をしてしまいましたが。「プロ用ツールとして」という展望はどうでしょう?

田中:『プロ用コミPo!』のあるべき姿は、別の軸線で考えるべきだと思います。ネームエディター、絵コンテエディターと呼べばいいのでしょうか? 漫画の製作に入る前段階での漫画の内容検討を容易にするツールとして、ニーズは高いと思います。

スチームトム:確かに別業界ではプロジェクトを管理するツールは山ほど販売されていますよね。漫画現場に特化した管理ツールもあってもいいですよね。あ、これはお金の匂いがしますよ!(無駄に大声)

喜多野:ずっと『コミPo!』で疑問に感じていたことが、おかげ様で明確になってきました。ネームエディターとしての『コミPo!』と、完成品作成ツールとしての『コミPo!』を、田中さんとしては、ある程度分けて考えてらっしゃるわけですね?

将来的にはともかく、少なくとも現段階では、ライトユーザー向け製品だと。現在はまだ過渡期のものなので、じょじょに完成度を高めていく途中だと。そういう区分なら、自分もおおむね賛成なんですけどね。

●『コミPO!』ユーザーからプロデビューは可能か

ジャンルの死

喜多野:あえて、別の軸線として考えてらっしゃる『プロ用コミPo! 』についても、部外者の立場から、少し踏み込ませていただいてよろしいでしょうかね? 前述の素材としてのミク歌と、生声としての表現との差に、引きつけて。

生声でミクの楽曲を歌う人間の中で、プロの歌手になれるのは何人いるのか? 可能性は広がっても、可能性をつかめるのはやっぱり、全体として少数派です。そうやって考えると、今度は表現者の質の問題が、再び浮上してきますよね。

コンシューマが自分の楽しみとして活用したりするのは、よいと思います。でもそれが、何か営利を得られるほどの物になるかどうかは、別ではないか。そこには、容易に越えがたい才能の壁があると、自分は思っています。

江戸時代の文化を見ていますと、素人芝居が大変盛んだった事が分かります。あの頃は歌舞伎が最大の娯楽でしたから、見るだけでは飽きたらなくなる。仲間を集めてやる素人芝居を、一般に“茶番”と呼んだわけですが。

スチームトム:お、雑学ですね。

喜多野:ところが、そういう素人の楽しみとしての芸事の中から、プロが出てくる。落語中興の祖と言われる三遊亭円朝の父親は、そういうタイプですね。昭和の名人古今亭志ん生の父親もそうで、結果的に息子が名人になった。

ジャンルを支えるのは一握りの天才ではなく、厚い裾野の人材ですし、常にそこに人材がリクルートされないと、ジャンルの死がやってきます。ライトユーザー層への普及を田中さんが重視するのも、つながりますね。

一色:アマチェアでもプロでも、とにかく何かひとつのジャンルが栄えるには、興味を持つ人が多くいるべきです。

茶番から名作が、楽しみのお遊びから人の人生を動かす何かが生まれるかもしれませんし、そうした、興味を持つ人を引きつける道具として興味深いです。

以前田中さんからお話を伺った時に、「例えばスーパーのチラシやお店のポップなどに“コミPo!”を使って漫画形式の広告を作る事だってできるというお話を伺いました。「素人の楽しみ」と「プロの商業活動の為の道具」との間にも、そういった多様な使われ方があるだろうということは想像ができます。

スチームトム:最近、『バクマン。』の影響か『ボクマン』の影響か知りませんが、急速的に漫画原作者やゆでたまごさんのような共作でのデビューを目指す方が増えてきていると聞きました。

『コミPO!』での応募が規定上難しいようなのですが、本当に漫画原作者だけを募集するのであれば『コミPO!』でも十分に募集をかけられるのではないかと感じます。というのも、その漫画原作志望者がコマ割りまで想定して話を考えているか、コマ割りは下手だが話はいい……ということが応募の段階で瞬時に分かるというのは画期的だと思います。

『モーニング』で『MANGAOPEN』というものがあって、何でも投稿可とうたっているのですが、毎回応募の度に、原作の審査が大変だとおっしゃられていました。『コミPO!』での投稿を規程にした原作者募集は少しありだと思います。『コミPO!』で投稿してきた面白いネタをプロのギャグ漫画家が書き直せば、さらに面白くなると思います。こんな企画は田中さん、いかがでしょうか?

田中:すでに『コミPo!』で描かれた漫画、特にいままで漫画を描いた経験のない人による傑作がいくつか登場してきています。代表作はSEDESUさんの『ひとりぼっち』( http://ameblo.jp/komipocyan/entry-10748753556.html )です。この作者は、『コミPo!』というツールに触れて初めて漫画作品を描き始めました。なので、この作品を描いた時点ではイマジナリーライン(2つの対象を結ぶ仮想の線、映像を撮影する際に用いられる用語)という概念も知りませんし、演出面でもアマチュアっぽい部分が残っています。それを差し引いても読み手に与える感動は大きいし、読後感も良い、なによりもストーリー展開に合わせて画面の彩度を変える演出は見事です。

喜多野:作品を拝読しましたが、確かに生まれて初めての作品としては高いレベルです。自分が出版社の編集の頃ならば、他の作品プロットを幾つか見てみたいですね。ただ、引っかかったのは先に述べた点と同じく、著者の到達点の設定でしょう。

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深水英一郎(ふかみん)

記者:

トンチの効いた新製品が大好き。ITベンチャー「デジタルデザイン」創業参画後、メールマガジン発行システム「まぐまぐ」を個人で開発。利用者と共につくるネットメディアとかわいいキャラに興味がある。

ウェブサイト: http://getnews.jp/

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