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火野正平 藤田まことはテレビが生んだ最大のタレントだった

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 1970年代に多くの人気時代劇に出演した火野正平は、藤田まことや勝新太郎、鶴田浩二など今は亡きスターたちと共演してきた。スターたちを間近で見た思い出を火野が語った言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏の週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』からお届けする。

 * * *
 1997年、火野正平は『新・必殺仕置人』に出演、藤田まこと、山崎努、中村嘉葎雄の殺し屋チームの情報屋を演じている。

「山崎さんや嘉葎雄さんが『火野正平を更生させる会』とか作ったんだよ。あの頃の俺はスキャンダルだらけだったから。

 でも、その言葉はそっくりあの人たちに返したいわ。酒飲んだら行儀悪いし、台本はすぐに直したがるし。当時の山崎さんは『俺の役はこうこうこうだ』って紙に書いてきたこともあるからね。もちろんそれで『念仏の鉄』というキャラクターができたから、あの人としては大成功なんだろうけど。

 藤田さんは『凄い』『凄くない』とか、そういうのと違う所にいる人だと思った。『凄い』と思わせちゃいけないんじゃないのかな。普通のオッチャンだから、あれだけ一つのシリーズを何十年もやれたんだ。しかも、その時代ごとに主役でずっとやり続けることができた俳優はいないよね。テレビの申し子、テレビが生んだ最大のタレントだよ」

『新・仕置人』四十話「愛情無用」では自ら劇中歌を歌った。

「長いこと助監督だった高坂光幸と一本撮れるということになって、それがたまたま俺がメインの回だったんだ。それで、『今までの「必殺」じゃない音楽を使いたいんだけど、既製のだと高いし、どうしよう』と言うんで、『そんなもん、作ったらええやないか』って言って、俺の知ってるギター弾きを呼んで、撮影後に録音部に残ってもらって、その場で詞を書きながら、酒を飲んで録音したんだ。

 歌うのは好きだよ。この歳になって高橋真梨子さんがデュエットしてほしいというんで、先日仮歌を録ったら、高橋さんの旦那のヘンリー広瀬プロデューサーが俺の歌声を『日本のトム・ウェイツだ』って。今年いちばん嬉しい出来事だったね」

 1970年代の火野は、『痛快!河内山宗俊』で勝新太郎、『次郎長三国志』で鶴田浩二と、テレビ時代劇シリーズで次々に映画スターと共演している。

「勝さんの現場は楽しかったね。あんな面白いオッチャンはいないし、いい顔してるんだもん。でも、映画の人でテレビの製作費ではついていけない撮り方をしてるから、御大の言うとおりに全てやっちゃうと、これは勝プロも潰れるわなと思った。

 勝さんはヤンチャな感じの人だったけど鶴田さんは男前やったな。大女優さんといろいろあったというのも、よく分かった。

 最初に楽屋に挨拶に行ったら、俺が慕ってる先輩の名前がポスターから消してあるんだ。鶴田さんはその人があまり好きじゃなかったみたいで。俺としては尊敬している先輩にそんなことされて黙って帰ったら男ちゃうなと思って、『このポスター、替えてください』って言ったら怒られた。でも、それで鶴田さんに気に入ってもらったみたいなところもあるみたいよ。

 でも、勝さんも鶴田さんも、一個ズレたら怖いというのはあったね。機嫌を損ねたり、行儀が悪かったりして怒ったら、おっかないんだろうっていう。あの人たちもそうやって戦ってきたんだと思う」

■春日太一(かすが・たいち)/1977年、東京都生まれ。主な著書に『天才 勝新太郎』『あかんやつら~東映京都撮影所血風録』(ともに文藝春秋刊)、『なぜ時代劇は滅びるのか』(新潮社刊)など。本連載をまとめた『役者は一日にしてならず』(小学館)が発売中。

※週刊ポスト2015年6月19日号


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