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教員採用試験の願書放置、大学側に問われる責任

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学生の教員採用試験願書にまつわる大学側のミスが発覚

関西の私立大学で、大学が学生から預かっていた公立学校の教員採用試験願書の一部を期限までに提出しておらず、一部の学生が採用試験を受験できなくなったという問題がありました。元々、内容に不備がないか大学側が願書を預かって確認の上、志願先の教育委員会にまとめて郵送していたようですが、その過程でミスが発生したとのことです。

教員試験は年に1回しか実施されないため、願書が提出されなかった学生が当該自治体の教員になりたいと考えるのであれば、来年の試験を受験する必要があります。志を持って教員の道を目指していた学生のチャンスを失わせたという点で、学校当局のミスは重大であり、きちんとした原因究明と再発防止策の検討が求められることはいうまでもありません。

大学側には本件によって学生に生じた損害を賠償する義務がある

学校当局も「学生への経済支援に取り組み、問題が起こった原因を究明して再発防止策を練りたい」とコメントしていると報じられており、真摯にこの問題へ対応することが求められるでしょう。

では、このような問題が生じた場合、学校側にどんな責任が生じるでしょうか。大学と教員試験に出願する学生の間では、大学側が願書を確認して適正に提出するという約束(契約)が黙示的に存在するといえます。今回、大学がその契約に違反して願書を提出しなかったわけですから、大学側には本件によって学生に生じた損害を賠償する義務があるでしょう。

不法行為も成立する余地が

また、大学側のミス(過失)により学生の権利(教員試験を受験できる機会)を失わせたことになり、不法行為も成立する余地があります。では、損害はどのようなものになるでしょうか。まず思いつくのは、願書の取得・作成にかかった費用が考えられます。しかし、これは金額としては微々たるものでしょう。

受験できなかった精神的苦痛についての慰謝料ということも考えられます。では、次年度に受験するまでの学費や、今年受験して合格し、教員として就職していた場合の給料相当額はどうでしょうか。

大学が学生に対し十分な支援を行うことが最も必要

これについては、そもそも受験しても合格するとは限らず、近年教員の採用倍率は極めて高いため、合格しても採用されるとは限らないということ、他の自治体の教員試験を受験する可能性もあることを考えると、本件の損害として認められる可能性は低いと思います。

しかしながら、大学が願書を預かった以上、その提出は責任を持ってなされるべきですので、それを怠った道義的責任というのは軽視できないと思います。法的な意味での責任ではなく、学校としての道義的責任に基づき、大学当局が当該学生に対しきめ細やかなで十分な支援を行うことが、最も必要なことではないでしょうか。

(半田 望/弁護士)

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