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空き家と新築が共に増加する住宅市場の矛盾

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現在の状況では、中古住宅に住もうとは誰も考えない

空き家が増加しているにも関わらず、住宅着工数が増え続けているという事態が発生しています。現状、住宅着工戸数は毎年約100万戸に対し、空き家を含めた中古住宅の取引数は毎年約15万戸です。考えるまでもなく、消費者心理からすれば当たり前のことで、「寒い・狭い・古い」の三拍子揃った中古住宅に好んで住もうとは誰も考えません。

景気の先行きが不透明になると、真っ先に住宅投資を促す施策が打たれます。その施策である「減税・補助金・ポイント」など、ほぼ全てが新築住宅の取得に対する優遇措置です。銀行融資も新築のほうが金利・金額、どちらも好条件です。中古ローンを取り扱ってくれる金融機関は少なく、申し込んだとしても担保価値なしと見られるのが関の山、次いでリフォームローンはインターネットで一晩探さないと望むものは見つかりません。都市圏を離れれば、手続きはさらに至難の業です。

賃貸物件に住んでいる人に待ち受ける厳しい現実

そんな状態の中、空き家になっている中古住宅を全額現金で購入すると仮定してみます。安さを求めれば200万円程度、中には1円で購入できる空き家を専門に扱うサイトもあります。しかし、購入しただけでは住むことができないため、リフォームが必要になります。一例になりますが、古い空き家で現代風の生活を目指すのであれば、リフォーム費用が1,500万円程度かかるそうです。しかも、ローンを組めなければ全額キャッシュです。古い家の味わいを求めながら便利な生活もしたいと欲張れば、そのくらいの覚悟が必要です。

上記のような状況が、空き家増加にも関わらず、新築の住宅着工数も増加している要因と言えます。さらに、現在の状況は今後、賃貸物件に住んでいる人に対しても厳しい現実を突きつけています。

家賃をぎりぎりで払い続ける生活から抜け出せない危険性がある

今後もハウスメーカーやデベロッパーは家を造り続け、新築住宅数が増えても利益を考えると価格の下落は期待できません。同時に中古住宅や空き家も増え続け、需要と供給の関係から1円、100円、1万円といった捨て値の物件も急激に増加するでしょう。しかし、新築が高額だからという理由でそうした物件を購入すれば、リフォーム地獄が口を開けて待っています。

結局、新築も空き家も買うことができない人々にとって、現在の状況は芳しくありません。特に低所得層は手取り月15万円の給料からワンルームマンションの家賃8万円を、ぎりぎりで払い続ける生活から抜け出すことができない危険性をはらんでいます。

(中山 聡/不動産鑑定士)

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