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サイケデリック・ロックのみならず、パンクの出現にも影響を与えたテキサスのカルト・バンド、13thフロア・エレヴェーターズが残した隠れた名盤

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ロック界の生きる伝説、ロッキー・エリクソンの来日公演が実現することを祝して、サイケデリック・ロックのパイオニアと謳われる13th フロア・エレヴェーターズ時代の傑作とともに、これまであまり語れてこなかった魅力を振り返る。

まさか、ここ日本でロック界の生きる伝説、ロッキー・エリクソンのライヴを観られる日がくるとは思わなかった。いや、ロッキー自身はかつて廃人になりかけたとは思えないほど、近年、精力的にライヴ活動を続けているから、どうしてもライヴが観たいと思えば、飛行機に乗ればいい。しかし、いくらカルトな人気を誇るロッキーとはいえ、みんながみんなそこまでできる熱烈なファンではないんだからやはり今回、来日公演が実現する意味は大きい。何より来日公演がきっかけになって、ロッキーが改めて注目される機会がひとつでもふたつでも増えることがうれしいじゃないか。
実際、取り上げるべき名盤が他にもまだまだあるにもかかわらず、名盤は名盤でも頭に裏が付く13thフロア・エレヴェーターズ時代のアルバムを今回、取り上げることができたのは来日公演というきっかけがあればこそだ。そういう貴重なチャンスを使って、サイケデリックな感覚を視覚的に表現したアートワークが有名で、エレヴェーターズ唯一のヒット・ナンバー「You’re Gonna Miss Me」が収録されているデビューアルバム『The Psychedelic Sounds Of The 13th Floor Elevators』(’66)ではなく、あえて2ndアルバムである『Easter Everywhere』(’67)を取り上げたのは、デビューアルバムよりもこちらを名盤に挙げるファンが少ないことに加え、ロックの名盤特集や名盤カタログの類におけるデビューアルバムの選ばれ方が安易に感じられることがままあるからだ。
もちろん、デビューアルバムもエレヴェーターズの代表作には違いない。しかし、ことサイケデリックということにこだわるなら、エレクトリック・ジャグによる“トゥクトゥクトゥク”という効果音を使って独自のサイケデリックサウンドを打ち出しながら、ブリティッシュビートの影響がまだ色濃いデビューアルバムよりも断然、この2作目じゃないか。プライマル・スクリームが『スクリーマデリカ』でカバーしたアルバムのオープニングナンバー「Slip Inside This House」に顕著なように、デビューアルバムの延長上でうねるようなグルーブを獲得したことで、格段の進歩を遂げたバンドの演奏を考えてもこの2作目のアルバムはデビュー盤と同じぐらい多くのロックファンに聴かれなければおかしい。アートワークのインパクトが強烈なせいか、エレヴェーターズと言えば、デビューアルバム、そして何かと耳にする機会が多い「You’re Gonna Miss Me」ということになっているようだけれど、そんな伝説(いや、定説)を今一度取っ払って、エレヴェーターズを聴きなおしてみる必要がある。
それはロッキーに対しても同様だ。いや、分かってらっしゃる人はちゃんと分かってらっしゃると思うんですよ。しかし、ロッキーのことをダメ人間とか狂人と決めつけ、エレヴェーターズの作品を、そういう人間が作ったぶっとんだ音楽と無責任に面白がる輩が意外に少なくない。もちろん、演奏中、マイクを仕込んだ壺(ジャグ)の口に向かって“トゥクトゥクトゥク”言い続けているメンバーがエレヴェーターズにいたことやエレヴェーターズ解散後、ソロアーティストとしてホラーロックを打ち出したロッキーの80年代の活動を思えば、そういう楽しみ方もありだと思う。しかし、それはロッキーが純粋に美しい音楽を作りつづけてきた無垢な心を持ったミュージシャンであることや、なぜホラーロック時代、「I Walked With A Zombie」と歌ったのか、その背景にある苛酷な体験を理解してからの話だ。
ロッキーやエレヴェーターズがドラッグをキメすぎた(まぁ、実際そうだったのだが)頭のおかしいバンドだと思っている人は、ぜひこのアルバムに収録されているボブ・ディランの「It’s All Over Now, Baby Blue」のカバーをはじめ、「Dust」「I Had To Tell You」といったフォークナンバーに耳を傾けてみてください。これまであまり語れることがなかったエレヴェーターズのリリシズムとワイルドなシャウターとして知られるロッキーの繊細な歌声の魅力が感じられるはずです。こんなにも美しい「Baby Blue」を僕は他に知らない。

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