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【著者に訊け】成毛眞氏が経験から説く『情報の「捨て方」』

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【著者に訊け】成毛眞氏/『情報の「捨て方」』/角川新書/800円+税

 配慮より実質を重んじる言葉が、一々耳に刺さる。例えば、〈みんなと同じ行動──それでは“大衆”から抜け出すことはできません〉〈大衆のままでいたがることはすなわち成長の拒否であり〉〈前向きな大人たるもの、人と違う判断を下し行動を起こすため、人とは違う判断材料が必要です〉

 成毛眞著『情報の「捨て方」』は、情報をより有効に摂取・排泄し、〈手放して、「残した物」〉こそ教養だとする自身の経験もふまえた実践の書。日本マイクロソフト社長を経て幅広く活躍する氏には2009年のベストセラー『大人げない大人になれ!』等もあり、〈読まなくていい本、関わらなくていい事柄、付き合わなくていい人〉は徹底して遠ざける。だがそれも総ては人生を面白く生きるためだという。

「今はフェイスブックで面白そうな現象や記事を紹介し、コメントを付けていて、ツイッターも含めれば7万近い友人がそれを読むメディアと化しています。すると単に意地の悪い人間や、リアルな友人でもつまらないことばかり書くヤツのコメントを何がダメかを明記した上でブロックすることもよくあるんです(笑い)」

 そもそも情報は(1)インテリジェンス(2)インフォメーション(3)データに〈3分類〉できるとある。(1)は〈偏差値で言えば65以上〉、つまり全体の7%程度が知るインサイダー情報や外交機密で、文章化された途端インテリジェンスとは呼べなくなる(2)と(1)の違いは〈偏在しているかどうか〉。

 さらに(2)と違って時間の経過が価値を左右しないのが(3)データで、(2)すら知らないのは非常識、(2)しか知らないのが大衆、(1)も(2)も持ち合わせているのが〈情報通〉と、人間も3種類に分類されるという。

 また7%が知る極秘情報にも誤りや〈ダメ情報〉は多く、逆に公開情報も加工次第で価値あるものにできる以上、問題は接し方なのだが、そこで氏が始めたのが〈牛丼〉の話。今や牛丼も立ち食い蕎麦も安くてうまいだけに食べ続けると危険なのは、その安さに慣れ、〈ほかの選択肢があることを忘れてしまうからです〉。むろん高級店の厳選料理を食べ続けてもダメで、要はバランス次第で、格安の情報や〈超有益な秘密情報〉に飛びついて却って〈情報判断の閾値〉を下げる愚を、氏は何とも卑近な例で諭す。

「たとえば一般の人が名前も知らない祇園の名店で芸妓を挙げた翌日は、『王将』で餃子をほおばるとかが好きなんです(笑い)。単に高い店や、やたら偉そうな店を有り難がる人ほど本物を知らず、中の上と下だけ見て全てを知ってると思う人も実は何も分かっていない」

 かといって情報に極端に背を向けるのも危険で、〈忘れられた大衆になることは、収入減につながります〉。そこでカギを握るのがツール選びだが、自身は最新機器と〈赤色のフェルトペン〉等のアナログを両刀使いし、テレビは主にBSを24時間つけっ放し。雑誌は広告、本はベストセラー以外を読むが、最大の情報源は人だ。

 例えば氏が現在オーナーを務めるインスパイア社は、昨年上場したユーグレナの筆頭株主。ユーグレナとは今話題のミドリムシのことで、元はその将来性に着目した堀江貴文氏の逮捕時に譲り受けた株が大化けしたとか。成毛氏は書く。〈とびきりの情報は、仲良くなった人からもたらされる〉〈さあ、どんどん飲みに行こう〉

「時々テレビは観ないとか新聞はダメとか、旧来メディアを全否定する人がいるけど、バカだなと思うよね。問題はその中身の何を拾い、何を捨てるかでしょ? 僕もさすがに紙の新聞は読まなくなったけど、スマホでは新聞をよく読むし、テレビや雑誌でも然るべき工程を経て世に出てきた情報は精度が全く違いますよ」

 24時間情報を浴び続け、かつ、〈どうせウソだよね〉と疑ってかかる思考習慣の原点は巻末の「『情報』個人史」にも詳しい。百科事典を愛読し、札幌西高時代は教師らと『TIME』や『LIFE』を題材に議論に興じたが、そうした成育歴と何事にも漫然とは対峙しない現在の氏の間に、特に因果関係はないという。

「要するに子供時代の話も含めて結果というか、元々地頭がいいんですよ(笑い)。なんて言うとまた思い切り叩かれるけど、例えば孫(正義)さんだって別に金儲けがしたいとかじゃなくて、何か面白いことがしたいだけ。たぶん柳井(正)さんとかビル(ゲイツ)も、生まれた時からああだと思う。

 要は成育環境や教育より、生まれ持ったセンスだと事実を言ってしまうのも僕の性格で、予定調和は元々大嫌い。幼稚園の頃から問題児だった僕は59年間、無意味で面白くないことは一切やってこなかったんです」

 45歳の時、「経費がどうとか、フツウの会社になった」マ社を辞めた。落語や歌舞伎の粋に影響を受けたという軽妙な語り口で面白いことを面白く話す成毛氏の場合、「いかに面白い現場に立てるか」が、最大の物差しだ。

「入り口は公知の情報なんです。最先端の理論物理学とか、面白そうな分野を雑誌や専門紙で見つけてきて、面白そうな人に会いに行き、その先がインテリジェンスになる。最近はピケティや超ひも理論の本が売れたり、難しい話に興味を持つ層も増えてきて、流れが変わってきている感じがします」

 人と違う情報を意識的に摂取・排泄すると、みんなと違う面白い話ができる。しかし、それがなかなかの境地であることは言わずもがなだが。

【著者プロフィール】成毛眞(なるけ・まこと):1955年札幌生まれ。中央大学卒。アスキー等を経て、1986年日本マイクロソフト設立に参加し、1991年より社長、2000年に退社。書評サイト「HONZ」代表やスルガ銀行社外取締役、早大ビジネススクール客員教授等も務める。『本は10冊同時に読め!』『就活に「日経」はいらない』等話題作多数。2012年の『ノンフィクションはこれを読め!HONZが選んだ150冊』は現在毎年刊行。一年中ほぼアロハ姿。178cm、79kg、O型。

(構成/橋本紀子)

※週刊ポスト2015年6月12日号


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