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消せるボールペン

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 最近、消せるボールペンをよく使っている。パズルなどをするときに便利だ。ボールペンの頭部分についているプラスチック製の部分でこすると消える。一定の熱が加わることによって消えるという仕組みである。

 この消せるボールペンで思い出したことがある。その当時は消せるボールペンなどない時代である。ある会社が、従業員に対して懲戒解雇を言い渡した。従業員側は、懲戒事由がないこと、仮にあったとしても処分として重いことを主張して裁判となった。

 マイカー通勤をするには、事前に申請書を会社に提出し、所定の保険に加入すること、業務に使用しないことを条件として、マイカー通勤は許可される。マイカー通勤の場合、原則として、通勤中の事故について会社側が責任を問われることはないが、それでもきちんと保険に入っていた方がいいし、マイカー通勤によって支給する交通費の計算も異なってくる。

 ところが、幾度注意をしても、申請書を提出しないままマイカー通勤を繰り返していたとするのが、会社側の主張である。通常の交通費とガソリン代の差額を着服していたとも主張している。

 これに対して、従業員は、就職するに際して提出した書類にマイカー通勤の申請欄があり、これに記入していたので許可されていたと思っていたと主張し、これまでのたびたびの注意には、そのような事実は一切ないと反論をした。

 たびたびの注意があったかどうかは水掛け論である。会社としては、きっちりと証拠を残さなければならない。今後の労務管理の課題である。

 会社は、マイカー通勤の許可申請欄が空欄の書類を裁判所に提出した。これに対し、従業員は、就職に際して会社に提出した書類の控えを出してきた。そこでは、確かにマイカー通勤の申請がなされていた。
 会社側保管の書類では空欄、従業員の控えは申請ありとの食い違いがある。会社側が自己保管書類中、その部分を抹消したか、従業員側が自己の控えに書き足したかのいずれかである。
 従業員は、会社側がマイカー通勤欄を消去したのだと主張した。果たしてボールペン記入は消去できるのか?

 会社側は元科捜研にいた人に鑑定を依頼した。一般的にボールペンで書いたものは消えないこと、当該書類で使用されているボールペン記載も消去は不可能であること、書類の裏側を鑑定した結果、当該部分に筆圧がまったく存在せず記載した痕跡がないこと、仮に消去が可能であったとしても、紙には消去した痕跡が残るが、そのような痕跡は一切ないこと、したがって、その欄には何の記載もなかったとの鑑定が出た。

 しかし従業員側は抵抗する。自分たちで実験をしたら消えたと代理人弁護士は言い張るのである。では、どのような手順でどのような薬品を使用して消したのかを書面で明らかにしろと求めても、実験の手順を忘れた、とにかく消えたのは事実だなどと言う。阿呆な弁護士である。

 ただ、裁判所は、解雇は重きに失すると考えていたようで、金銭支払いをなして退職届を出すとの和解を提案してきた。会社側としては不満である。しかし、解雇が不当であるとしたら、その従業員の雇用を継続しなければならないし、より高い金銭の出費も見込まれる。

 和解の場で、従業員代理人は、こんなひどい会社はないと非難しまくって、和解金額をつり上げようとした。ボールペンが消えるなどという嘘までついた人が何を言うのかである。
 従業員が求める和解金額をはるかに下回る金額で和解が成立した。

元記事

消せるボールペン

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