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米大発表のがん新薬 前立腺がん、白血病などに効く可能性も

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 米ペンシルベニア州フィラデルフィアで4月18~22日、世界最先端のがん治療研究が発表される「米国がん研究会議」(米国がん学会主催)が開かれた。

 そこで、米ジョンズ・ホプキンス大学キンメルがんセンターの研究チームが、新しい治療法の効果について驚くべき発表を行なった。従来の医学ではなす術がなかった末期がん患者に新薬を投与したところ、がん細胞が“消滅”したという。

 この新薬は「免疫チェックポイント阻害薬」と呼ばれる。従来の免疫療法では、免疫力を高め、がん細胞への攻撃力を強めることに主眼が置かれていた。ところが、新薬はまったく新しい発想が取り入れられている。

 一体どんな薬なのか。慶應大学医学部先端医科学研究所長の河上裕教授が解説する。

「最近の研究で、がん細胞には免疫細胞の攻撃に“ブレーキ”をかけるタンパク質が備わっていることがわかりました。がん細胞の表面にある『PD-L1』というタンパク質が、免疫細胞の『PD-1』に働きかけると免疫の攻撃がストップしてしまう。この対応関係のことを『免疫チェックポイント』と呼んでいます。

 もともと、『PD-1』は免疫系の暴走を防ぐための仕組みなのですが、がん細胞はそれを逆手にとっているわけです。その免疫チェックポイントを無効にして、免疫系が攻撃できるようにするのが、免疫チェックポイント阻害薬のメカニズムです」

 この新薬は2013年、米学術誌『サイエンス』において、「ブレーク・スルー・オブ・ザ・イヤー2013」に選ばれ、大きな注目を集めてきた。最近では、世界中の研究機関で、驚くべき有効性が次々と確認されている。

 小野薬品工業の研究によると、切除不可能で転移のある「悪性黒色腫(メラノーマ)」の末期患者に新薬を投与すると、43%でがん細胞の増大が止まり、そのうち23%(患者全体の約1割)で腫瘍が消えるか縮小する効果が現われた。

 また、米ダナ・ファーバーがん研究所によると、2種類の新薬を併用したところ61%の患者のがん細胞が縮小し、寛解した患者が22%も出たという。

 悪性黒色腫は進行・転移した場合、治療困難ながんとして知られる。最近では南海キャンディーズ・山崎静代のボクシングトレーナーを務めた梅津正彦氏が44歳の若さで命を落とした。

 治療の難しい肺がんにも効果があった。カリフォルニア大ロサンゼルス校の研究チームはこの4月、他の治療法では効果がなかった肺がん(進行非小細胞肺がん)の患者で試験を行なった。半分以上のがん細胞の中に「PD-L1」が現われていた患者の45%に効果が確認できたと発表した。

 米製薬会社「ブリストル・マイヤーズ スクイブ」の肺がんの研究でも、化学療法が効かない患者、または他の臓器から転移した末期の肺がん患者の死亡リスクを、既存の抗がん剤より4割も低減したという。

 その他、欧米の研究では卵巣がんや前立腺がん、膀胱がん、白血病など、さまざまながん種に効果がある可能性が示されている。

 だが、この新薬も“夢の万能薬”ではない。一般的な抗がん剤とは異なる副作用が現われることがあり、注意を要する。

「免疫機能が高くなることで正常な細胞まで攻撃してしまい、甲状腺機能異常や腸炎などが出ることがあります。ごくまれに致死的な肺炎が起きるので、副作用を早期に発見し、治療することが重要です」(同前)

 また、免疫チェックポイントによって免疫が機能しなくなっているタイプのがん細胞に対しては効果があるが、それらが働いていない場合にはあまり効果が期待できないとされる。

「まだ新薬の研究は始まったばかりです。たとえば、免疫チェックポイントはPD-1だけでなく、他にも見つかっている。今後、さまざまな免疫チェックポイントを阻害する薬が開発され、それらを組み合わせたり、従来の治療法とセットで行なうなどすれば、効果が期待できる患者はさらに増えるはずです」(同前)

※週刊ポスト2015年6月5日号


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