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ライドの絶頂を捉えたシューゲイザーの金字塔『NOWHERE』

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伝説のバンド、ライドが18年振りに再結成。『FUJI ROCK FESTIVAL ’15』に出演するため再び日本の地を踏む! 彼らが伝説の存在になるきっかけになったデビューアルバム『NOWHERE』の衝撃とその功罪を考える。

「Ride」と「Play」という2枚のEPでその後、マスコミによってシューゲイザーと名付けられるギターロックのルネサンスをリードする存在として、いきなり大きな注目を集めたライドは90年10月、ついに“NOWHERE”と題したデビューアルバムをリリースした。当時、EPをリリースするばかりで一向にアルバムをリリースしない彼らにやきもきしていたファンが少なくなかったことを考えると、“ついに”という言葉が相応しい、まさに待望のリリースだったわけだけれど、改めて調べてみたら、「Ride」のリリースは90年1月。そこから『NOWHERE』のリリースまで9カ月。それを長いと考えるか短いと考えるか意見は分かれるところだが、その間、「Play」(90年4月)、「Fall」(90年9月)とEPとはいえ、立て続けにリリースを重ねていたにもかかわらず、ついにリリースされたと受け止められたことがデビューアルバムに対する期待の大きさを物語っていた。
この『NOWHERE』が現在、ロックの名盤のひとつに数えられる理由は、ロックの一ジャンルに止まらず、今やロックサウンドのスタイルのひとつとして当たり前のものになっているシューゲイザーの金字塔と言えるアルバムであることに加え、ライドの絶頂を捉えた作品でもあるからだ。ひょっとしたら、マンチェスター・ブームとブリットポップ・ブームの狭間で、今となっては一瞬にも思える輝きを放った彼らの存在すら知らない若いロックファンもいるかもしれないから、改めて言っておきたい。ライドは90年代前半、最も成功を収めたUKバンドのひとつである。
バンドのスタートは88年。マーク・ガードナー(Vo&Gu)とライド解散後、ハリケーン#1を経て、オアシスにベーシストとして加わるアンディ・ベル(Vo&Gu)がオックスフォードでスティーヴ・ケラルト(Ba)、ローレンス・コルバート(Dr)と結成。すぐにライヴ活動を始めた彼らはアラン・マッギーに認められ、当時、マッギーが経営していたクリエイション・レコードから前述した通り、90年1月にセルフタイトルのEPでデビューを飾った。
96年に解散するまで、彼らが残したオリジナルアルバムは『NOWHERE』を含め計4枚。轟音ギターとトラッドフォークの影響が感じられる美しいメロディーの組み合わせ(=シューゲイザー)だけに止まらないサウンドにアプローチし続けていたにもかかわらず、“現代のザ・バーズ”と言ってもいい挑戦が『NOWHERE』以上に歓迎されることはとうとうなかった。解散の直接の原因は、ともに曲を書き、歌も唄うガードナーとベルふたりのフロントマンの対立と言われているが、自分たちでは前進と考えていることが過去を超えられないんだから、メンバーたちがバンドを続ける気持ちを失っていっても仕方ない。
『NOWHERE』の一番の聴きどころはギターの轟音もさることながら、ロックと言うにはあまりにも線が細い、その繊細さにあった。中には弱々しい、覇気がなさすぎると感じる人もいるかもしれない。思うに、ファンの多くが愛していたライドはそんな『NOWHERE』までの、あまりにも儚げで、あまりにも頼りなげな彼らだったのだろう。多くの人がそこに、それ以前のロックの世界を支配していたマチスモとは対極にあるセンシティブな感性を聴きとり、共感を重ねたにちがいない。轟音ギターと美しいメロディーの組み合わせ云々よりもむしろそういう感性を、ロックの世界において打ち出したことがライドの斬新さであると同時に存在意義だとするならば、作品を重ねるごとにトラディショナルなロックに回帰していった彼らの成長はもちろん、トラディショナルなロックサウンドを彼らなりに究めたもうひとつの傑作『Carnival of Light』(’94)など、『NOWHERE』を歓迎したファンは望んでいなかった。それがライドの不幸だった。いや、それだけファンに衝撃を与える作品を残せたんだから幸せと考えるべきか、なかなか微妙な問題だと思う。

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