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「時代」で語られる「非行・犯罪少年」の本来の姿

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無表情で気持ちを適切に表現できない収容少年

最近ある新聞に、「無表情、集団生活嫌い…激変した『少年院』収容少年たち」といった、少年院の記事が掲載されました。取材先は東京八王子市にある多摩少年院で、指導教官の話として、「(振り込め詐欺などで来る最近の収容少年は)元気がなくなってきた。うれしくても悲しくても無表情で気持ちを適切に表現できない」などと紹介されています。

それでは非行・犯罪少年の特徴は以前と比べて変化しているのでしょうか。私は、1995年まで25年間、法務省の心理技官として少年鑑別所や刑務所などで非行少年や成人犯罪者の心理判定やカウンセリングにあたっていました。この問題を、私が勤務していた当時と比較して考えてみたいと思います。

今も昔も、子供たちの素の姿は変わっていない

私の結論は「非行・犯罪少年の姿は基本的には大きく変わっていない」というものです。実は、前述の多摩少年院の指導職員も、「一皮剥けば、子供たちの素の姿は変わっていない。そこにたどり着くための時間がかかるようになったということでしょうか」と述べています。この問題を考えるとき、先に紹介された多摩少年院に収容されている少年は必ずしも「全体の非行・犯罪少年を反映しているとは限らない」ということに注意する必要があります。

というのは、多摩少年院は、少年院法では心身に著しい故障がなく犯罪的傾向の進んでいない者が収容される中等少年院で、また日本で最初に設立された少年院という経緯もあって、いわば特殊な「モデル少年院」であるからです(ちなみに、心身に著しい故障のある者は医療少年院に、犯罪傾向の進んだ者は特別少年院に送られます)。なお、年齢による少年院の種類の撤廃などを改正した少年院法が今年6月より施行されますので、現在の少年院の姿は大きく変わる可能性があります。

一部であり全体の非行・犯罪少年を反映しているとは限らない

次に少年院収容者の全体像を見てみましょう。法務省の犯罪白書によると、少年院に収容された者の犯罪別では、上位を窃盗や暴行・傷害が占めています。ですから、「振り込め詐欺」を起こした少年をもって非行・犯罪少年の全体像を語るのは早計といえるでしょう。

ただし、社会環境の急激な変化が少年犯罪に与える影響は無視できないといえます。例えば20年前には、インターネットやスマートフォンによるSNSの普及などは考えられなかったでしょう。これらITの普及は、生身の対人接触の希薄化による対人不適応の増大など、対人関係の在り方・持ち方に多大な影響を与えたことは否めないといえます。

犯罪は時代の社会環境の中で起きている

進化論に基づく進化心理学では、急速な文明の変化に人の適応が追い付かない状態を「ミスマッチ」と呼びますが、この加速する「ミスマッチ」が新たな犯罪などの社会不適応行動を生んでいることは言えると思います。

そして犯罪は時代の社会環境の中で起きていることを考えれば、非行・犯罪少年にその時々の社会環境が反映されているといえ「急激に変わったのは社会環境であり、少年の方ではない」というのが私の考えです。ですから、非行犯罪問題を考えるときは、単に個々の少年を対象とするのではなく、問題行動を生んだ社会的要因も同時に考えないと真の問題解決には至らないと考えます。

(村田 晃/心理学博士・臨床心理士)

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