増える「若者ホームレス」 ホームレスは”甘え”か

access_time create folderエンタメ

wakamono01

 雇用状況は若干回復の兆しを示しているのに、若者の雇用情勢だけは悪化している。そんな中、かつては50歳以上が多数を占めていたホームレスの世界に変化が起きている。20~30代の「若者ホームレス」が増加しているのだ。彼らの多くは路上でなく、24時間営業の店舗などを中心に生活をしているため、「巡回による目視」で調査される国の統計からはこぼれ落ちてしまう。だが、「ネットカフェ難民」が話題になったように、その数はどんどんと膨らんできているという。

 彼らはどうして「ホームレス」になったのか。ニコニコ動画の生放送「ニコ生トークセッション 若者ホームレス ~なぜ、働かないのか?~」では、若者ホームレスの実態に関する議論が展開された。ノンフィクションライターの飯島裕子氏は、若者ホームレスが生まれる原因の1つとして”学歴”に言及する。50人の若者ホームレスにインタビューしたところ、その内20人が”中卒(高校中退含む)”だったというのだ。確かにそれは、就職の上で大きなハンデとなるかも知れない。だからといって、「勉強ができなかった」のひと言で片づけて良いものだろうか?

「経済的な理由で高校に行けなかったという人はほとんどおらず、みな『勉強が嫌いで必要なかったから』と言っている。学校の先生や親から『高校に行きなさい』と後押しされなかったというのが、一番衝撃的だった」(飯島氏)

 多くは小学校からの”落ちこぼれ”で、人間関係が上手く築けなかったり、イジメに遭ったりすることも少なくなかった。そうした中で、彼らは学校での居場所や接点をなくし、進学という流れから”排除”されていく。”つながり”がないため、引き上げてくれる人や引き止めてくれる人がなく、知的障害や精神疾患などがあったとしても誰も気付かない。

■”甘え”と決めつける前に

wakamono02

 若者ホームレスに対し、「甘えている」と感じる人は少なくないだろう。自分にできることが、どうしてこの人たちにはできないのか。ちゃんと勉強しなかったのが悪い。人生を真剣に考えていない。なぜ、すぐ辞めるのか。死ぬ気で働け…。

 批評家の荻上チキ氏は、「その理由を”甘え”の3文字にやる前に、背景に目を向けてほしい」と語る。

 「ホームレスやニートが『甘え』と思うのは、自分がそうならないようにという戒めとしては良いと思います。ですが、社会問題というのは、そうした人がいることを前提として、どうすべきか議論していかなくてはならない」(荻上氏)

 若者ホームレスは、「なぜホームレスになったのか」と聞かれると、「全部自分が悪いんです」と答えるという。彼らは1人で行動することが多く、炊き出しなどには行かないことが多い。誰にも頼れず、自己責任を内面化し、そして病んでいく。「甘えどころじゃないんですよ」と言うのは、ホームレスが販売する雑誌『ビッグイシュー』の日本代表・佐野章二氏だ。

 「『俺のことを何とかしてくれ』と隣人に声をかけたり、見ず知らずの人にも『助けてほしい』と言ったりすべき。それが『甘え』だとしても。あえて『甘え』という言葉を使うなら、甘え方を知らない」(佐野氏)

 イギリスのホームレスは通行人に「ギブ・ミー・マネー」と積極的に声をかけるという。日本ではどうだろう。「慎ましやかさ」は国民性であるといえるのかも知れないが―。

ニコ生トークセッション 若者ホームレス ~なぜ、働かないのか?~
「佐野氏の、若者ホームレスは『甘え方を知らない』発言」部分より再生
http://live.nicovideo.jp/watch/lv39059000#01:15:12
(番組はタイムシフト機能で2011年2月9日まで視聴できる)

(野吟りん)

【関連記事】
「働いたら負け」あの有名ニート君!?が就活中
アラサーニートの悲痛な叫び 「どうやって生きていけばいいですか」
「風俗に行こうかなと思って」 中卒作家、芥川賞受賞の喜びを語る

  1. HOME
  2. エンタメ
  3. 増える「若者ホームレス」 ホームレスは”甘え”か
access_time create folderエンタメ
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちら
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。