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命を救う優先順位?子どもの心臓は子ども優先、法改正の意義

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臓器移植の選択基準とは?

厚労省の作業班が5月19日、18歳未満の脳死患者から提供された心臓は、同じく18歳未満の患者に優先的に移植するように基準を改正することで合意しました。このような臓器移植の選択基準とは、そもそもどのいったものなのか、元となる臓器移植法も含めて解説したいと思います。

2010年に改正される前の臓器移植法では、脳死後の臓器提供に本人の書面による意思表示が不可欠でした。また、この意思表示ができるのは15歳以上と定められていたため、15歳未満の脳死患者の臓器提供は事実上不可能でした。しかし、上記臓器移植法改正により、本人の書面による意思表示がない場合でも(積極的に臓器提供を拒否している場合は除きます)、家族が臓器提供について承諾している場合には臓器提供を可能とするという非常に大きな制度の変更がなされました。このため、15歳未満の脳死患者からの臓器提供ができるようになったという背景があります。

今までの選定はコンピューターで公平に選ばれる

さて、一般に臓器提供候補者(ドナー)が現れた場合、移植候補者(レシピエント)の選定がなされます。具体的には、この選定は臓器ごとの「移植希望者選択基準」に基づき、コンピューターで公平に選ばれることになっています。

今回問題となっているのは、心臓に関する「移植希望者選択基準」の変更です。この基準は平成9年に制定された後、これまでに臓器移植法の改正や医学の進歩などを背景に何度も改定されており、今回もその一つになります。

医学上の問題、倫理上の問題などさまざまな問題が絡んでいる

18歳未満の子どもから提供された心臓については、これまで移植希望者の優先順位として、1)緊急度が最も高い18歳未満の希望者、2)緊急度が最も高い18歳以上の希望者、3)緊急度が中位の18歳未満の希望者の順に定められていました。

しかし、今回の改定が実現すれば、緊急度にかかわらず、18歳未満の子どもから提供された心臓については、18歳未満の希望者が優先されることになります。この背景には、ドナー家族による「子どもの臓器は子どもに提供したい」という希望、また、18歳未満の患者について、医学的な緊急度にかかわらず18歳以上の患者よりも生存率が低いという客観的データの存在があるとされています。

この移植希望者選択基準の問題は、心臓に限らず、医学上の問題、倫理上の問題などさまざまな問題が絡んでおり、簡単に答えが出せる問題ではありません。前述のように、常に医学の進歩や国民の倫理意識などを反映させ、絶えずより望ましい基準を模索し続ける必要がある、極めて難しい問題といえるでしょう。

(永野 海/弁護士)

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