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今週の永田町(2015.5.13~21)

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【安全保障関連法案を閣議決定のうえ国会に提出】

 先週14日、自民党と公明党は、武力攻撃事態対処法や周辺事態法、自衛隊法など法律10本の改正案を束ねた一括法案「平和安全法制整備法案」と、国際社会の平和・安全の確保に資する他国軍の取り組みを後方支援するために自衛隊の海外派遣を随時可能にする「国際平和支援法」の安全保障関連2法案の了承手続きを終え、安全保障法制整備に関する与党協議会(座長:高村・自民党副総裁、座長代理:北側・公明党副代表)で正式合意した。

これを受け、政府は、同日中に国家安全保障会議(NSC)9大臣会合、臨時閣議を相次いで開催して関連2法案を決定し、翌15日に国会へ提出した。臨時閣議では、武力攻撃に至らないグレーゾーン事態<武装集団による離島への不法上陸の恐れがある事案、日本領海で国際法上の無害通航に該当しない他国軍艦の航行、公海上での日本の民間船舶に対する侵害行為>に自衛隊による治安出動または海上警備行動の発令を速やかに行うため、NSCや臨時閣議の開催が困難な場合には、電話での審議・決定やメール連絡などを認める方針も決定した。

 

安倍総理は、臨時閣議後の記者会見で「もはや一国のみで、どの国も自国の安全を守ることはできない時代」との認識を示すとともに、「積極的平和主義の旗を高く掲げ、世界の平和と安定にこれまで以上に貢献していく」と平和国家としての歩みを今後も堅持する考えを示したうえで、「不戦の誓いを将来にわたって守り続けていく。そして国民の命と平和な暮らしを守り抜く。この決意のもと、日本と世界の平和と安全を確かなものとするための平和安全法制を閣議決定した」と説明した。

テロ行為で日本人が犠牲になったことや、北朝鮮による弾道ミサイルへの懸念、中国の海洋進出など安全保障環境が厳しさを増していることを念頭に「厳しい現実から目を背けることはできない。平和外交を展開すると同時に、万が一の備えを怠ってはいけない」「日本人の命と平和な暮らしを守るため、あらゆる事態を想定し、切れ目のない備えを行う法制整備が不可欠」と説明し、安全保障法制を整備する意義を強調した。また、「日米同盟に隙があると思われれば、日本が攻撃を受ける危険性が増す。そうした可能性をつぶしておく必要がある」「日米同盟が完全に機能すると世界に発信することで抑止力はさらに高まり、日本が攻撃を受ける可能性は一層なくなっていく」と、日米同盟による抑止力向上のためにも法整備が不可欠だとも述べた。

 

 また、アメリカの戦争に巻き込まれるとの批判などがでていることを念頭に、「日本近海で米軍が攻撃される状況では私たちにも危険が及びかねない。まさに私たち自身の危機」との認識のもと、昨年7月に閣議決定した武力行使の新3要件を関連法案で明記していることに触れて「厳格な歯止めを法律案の中にしっかりと定めた。さらに国会の承認が必要となることは言うまでもない」と極めて限定的な集団的自衛権の行使になると説明したうえで、「批判が的外れなことは歴史が証明している」「そのようなことは絶対にありえない」と語った。

さらに、「自衛隊がかつての湾岸戦争やイラク戦争での戦闘に参加するようなことは今後とも決してない」と断言するとともに、「戦争法案といった無責任なレッテルは全くの誤り」などとも反論した。アメリカ主導の有志連合によるイスラム教スンニ派過激組織「ISIL」掃討作戦への自衛隊の後方支援についても「われわれが後方支援をすることはない。これははっきり申し上げておく」と否定した。そのうえで「難民に対する食糧支援や医療支援など非軍事的な活動を引き続き行っていくことになる」とも強調した。

 

 

【国会論戦がスタートへ】

 安倍総理は、野党が一括法案で国会提出し審議を求めていることへの批判に対し、「今回の法制はグレーゾーンから集団的自衛権の一部行使容認に至るまで、切れ目のない対応を可能にするものだ。かつての有事法制の際には、野党からすべてまとめて法案を出すべきだとの意見をもらった。その趣旨も踏まえた」と、15日の衆議院経済産業委員会で説明した。

また、安倍総理が4月29日のアメリカ連邦議会・上下両院合同会議での演説で、安全保障法制の整備を「この夏までに成就させる」と表明したことに「外国の議会で成立を約束するのは言語道断」(民主党の近藤衆議院議員)などと批判していることに対しては、「決意を示したのは初めてではない。昨年来、記者会見や国会答弁の中で今国会での成立を図ると繰り返している」と反論した。

*衆参両院の本会議や委員会での審議模様は、以下のページからご覧になれます。

  衆議院インターネット審議中継参議院インターネット審議中

 18日の参議院本会議で、安倍総理は、集団的自衛権の行使要件となる存立危機事態について、攻撃国の意思や能力、発生場所、事態の規模に加え、「わが国に戦禍が及ぶ蓋然性、国民が被る被害の深刻性を客観的、合理的に判断する」と説明したうえで、「わが国が爆撃の対象になるような場合に限られるものではない」と語った。

そして、「密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、日本で生活物資や電力の不足によるライフラインの途絶が起こるなど、単なる経済的影響にとどまらず、国民生活に死活的な影響が生じるような場合、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様の深刻、重大な被害が及ぶことが明らかな状況に至る可能性がある」と、物資・電力不足の場合でも存立危機事態に該当しうるとした。シーレーン(海上交通路)上の中東・ホルムズ海峡が機雷で海上封鎖され、日本への石油輸入が途絶える場合、国民の生命を脅かす深刻な事態に陥れば、自衛隊を海外に派遣して機雷を掃海させることが念頭にあるようだ。

 

20日に行われた党首討論では、民主党の岡田代表が「平和憲法が、安保法制の全面的な見直しの中で揺らぐのではないかとの不安感がある」と、安倍政権との対決姿勢を鮮明にしたうえで、自衛隊の活動範囲が広がることで「リスクは飛躍的に高まる」と追及した。これに対し、安倍総理は「戦闘に巻き込まれることがなるべくない地域を選んでいく。安全が確保されている場所で後方支援を行う」「戦闘が起こったときはただちに一時中止をする。あるいは退避することを明確に定めている」と、自衛隊員が危険に遭遇する事態は回避できると反論した。また、集団的自衛権行使は限定的な容認であり、「外国の領土に上陸し、戦闘行為を行うことを目的に武力行使することはない。大規模な空爆をともに行うことはない」とも表明した。

 

 

【審議入り日程をめぐって与野党が攻防】

与党は、通常国会の会期末(6月24日)前に衆議院通過・参議院送付のうえ、会期を大幅延長して8月上旬までに成立させる方針だ。与党は、連日審議することが可能な特別委員会「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」を19日に衆議院へ設置し、21日から衆議院本会議で趣旨説明と質疑を行う日程案を提案していた。

しかし、民主党や維新の党など野党側は、審議入りまでの期間が短すぎることのほか、一括法案で国会提出し審議を求めていること、自民党が衆議院での審議時間を「80時間程度」と表明したことに「期限ありきという姿勢は受けられない」などと反発しており、与党が求める早期審議入りを拒否した。また、少数会派も委員ポストが確保できるよう委員枠(50人)を増やすことも含め、丁寧かつ徹底的な審議に努めるよう与党側に求めた。

 

 特別委員会の設置については、19日の衆議院本会議で採決を行うこととなった。民主党や維新の党、共産党などが反対したが、与党などの賛成多数により特別委員会の設置が決まった。与党側は本会議後に特別委員会を開催し、委員長を互選で選出するよう求めたが、審議時間の十分な確保などを求めている野党側が委員名簿の提出を拒否したため、開催を見送ることとなった。

特別委員会の委員数は与党の要求どおり45人<自民党28、民主党7、維新の党4、公明党4、共産党2>となったが、少数会派にも質問する機会を設けるよう配慮するとしている。委員長には、元防衛大臣の浜田靖一衆議院議員(自民党)が特別委員会の開催初日に選出される予定だ。特別委員会に常時出席する閣僚は、外務大臣と防衛大臣となっているが、民主党など野党は官房長官らを含めるよう求めている。

 

審議入りの日程をめぐっては、21日の衆議院議院運営委員会理事会で、26日の衆議院本会議で趣旨説明と質疑を行い、審議入りすることを決めた。野党は、与党に十分かつ慎重な審議の要求や、「国会をまたぐ覚悟でしっかりとした審議をお願いしたい」(維新の党の松野代表、20日の党首討論)などと通常国会中の成立を急ぐべきではないとの点で足並みを揃えており、徹底抗戦の構えだ。

もっとも、関連法案への賛否では、反対姿勢を示す民主党、共産党、社民党、生活の党などに対し、次世代の党や新党改革は全面的に賛同する立場を表明している。維新の党は、「歯止めをかける対案を示しつつ、政府の安全保障法制が抱える問題点を洗い出し、徹底審議を通じて国民の不安を払拭していきたい」などと、安全保障法制に一定の理解を示して修正協議に含みを持たせている。

 

野党第一党である民主党は、PKOの駆けつけ警護の条件つき容認など部分的な共通項目がある一方、集団的自衛権行使については安倍政権下では容認せず、武力行使の新3要件も「抽象的で、最終的に内閣がすべての情報を総合して決めるのでは、基準があってないようなことになるのではないか」(岡田代表)と批判している。政府案の一括審議・採決となれば、全面的に反対せざるをえないと主張している。

通常国会中の関連法案の成立阻止をめざす民主党は、関連法案に反対する野党だけでなく、維新の党も含めた野党共闘を模索している。民主党と維新の党は、グレーゾーン事態での政府案は不十分との理由から、政府案の対案「領域警備法案」の素案を実務者レベルでとりまとめ大筋合意した。民主党と維新の党それぞれの党内手続きを経て、早ければ月内にも共同提出をめざしているという。同法案の共同提出を野党共闘への足掛かりにしたいとの民主党の思惑もあるようだ。

 

 一方、強行採決に至る事態を避け、可能な限り野党の協力もえたうえで関連法案を成立させたい自民党も、接近しつつある民主党と維新の党の分断を図るべく、維新の党から修正協議の「要望があれば応じる用意はある」と柔軟に対応していく姿勢もみせている。

いまのところ、委員会審議が与党ペースで進む公算だが、今後、与野党の駆け引きがより本格化していくことが確実なだけに、今後の先行きに不透明感も漂いつつあるようだ。

 

 

【重要法案それぞれの主要争点の見極めを】

 労働者派遣法改正案など与野党対決型の重要法案が審議入りし、与野党の本格論戦がスタートした。

政府の農協法等改正案は農家の所得向上にもつながらないだけでなく、農協への介入でコスト増をもたらしかねないと批判する民主党は、13日、農協の自主性を尊重することを国や地方自治体に義務づけ、農協に政治的中立性を確保することを柱とする「農協法改正案」を衆議院に提出した。政府案と民主党案は、14日、衆議院農林水産委員会で審議入りとなった。

また、安全保障関連法案が国会提出されたことで、審議入り日程や特別委員会の運営などをめぐって与野党攻防が活発に繰りひろげられている。

 

まずは、水面下での駆け引きも含めた与野党攻防の行方や、委員会でどのような論戦がおこなわれているかなどを踏まえつつ、何が主要争点なのかを見極めていくことが大切だろう。
 

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記者:

霞が関と永田町でつくられる“政策”“法律”“予算”。 その裏側にどのような問題がひそみ、本当の論点とは何なのか―。 高橋洋一会長、原英史社長はじめとする株式会社政策工房スタッフが、 直面する政策課題のポイント、一般メディアが報じない政策の真相、 国会動向などについての解説レポートを配信中!

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