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日本人に足りないのは「長嶋茂雄力」?テリー伊藤の提言

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 イチローや清原和博、古くは力道山など、スポーツ界には「スーパースター」と呼ばれる選手が何人かいますが、その中でも突出した存在が“ミスタープロ野球”の異名も持ち、国民的な人気を誇る長嶋茂雄さんです。
 SMAPの中居正広さんや、タレントの徳光和夫さんなど、「長嶋ファン」を公言する有名人は枚挙に暇がないほどですが、テレビプロデューサーのテリー伊藤さんもその一人。
 そんなテリーさんが、長嶋さんの生き様と魂を通して日本人にエールを送っているのが『長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう』(ポプラ社/刊)です。
 天真爛漫なイメージの強い「長嶋茂雄」と「涙」は何だかミスマッチですが、この涙は一体どんな涙なのでしょうか?そして、長嶋さんの生き方を通して日本人に何を伝えたいのでしょうか?テリーさんご本人にお話をうかがいました。

――テリーさんの著書『長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう』についてお話を伺えればと思います。まずお聞きしたいのが、なぜこのタイミングで「長嶋茂雄」なのかということです。

テリー:タイトルの『長嶋茂雄を思うと、涙が出てくるのはなぜだろう』っていうフレーズがいつからかずっと頭に残っていたんですよ。
何かを思い出して涙が出てくることってどんな人にもあって、それは青春時代の彼女だったり、今までしてきた後悔だったり、ふるさとだったりするんだろうけど、自分にとってはそれが「長嶋茂雄」だった。とくにこの4、5年、「この涙が出てくる気持ちはいったい何なんだろう」とずっと考えていて、それを本にしたいなと思ったんです。

――その涙とはどんな涙なのでしょうか。

テリー:ひと言でいえば「自分への後悔の涙」でしょうね。今、僕は65歳なんですけど「自分の人生って一体何だったんだろう」という思いがどこかにあります。「スッキリ!!」(日本テレビ)をはじめいろいろな番組に出させてもらって「なんだ、テリー伊藤も案外順調に生きてるじゃないか」って思われるかもしれないけど(笑)それでも「テレビでコメンテーターをやっているような今の人生って本当に自分の人生なのかな?」って思ったりするんです。もちろん、今現在幸せな部分もあるけど、実は本当にやりたいことを諦めてしまったんじゃないかということですね。

――「自分も長嶋茂雄みたいに生きられたかもしれないのに」ということですね。テリーさんをそんな気持ちにさせてしまう「長嶋茂雄」とはどんな存在なのでしょうか。

テリー:「正義の味方」かな。仮面ライダーやウルトラマンを斜めに見たり、穿った見方をする人はいないでしょう?それと同じですよ。物事を斜めに見ることにかけては天才的なビートたけしですら、ミスター(長嶋氏の愛称)については諸手を上げて礼賛しますからね。
ミスター自身も決して人生を斜めに見ないんです。相手の出方をうかがったり、相手の思っていることを裏読みしたりしません。まさに「来た球を打つ」生き方なんです。
今の日本人を見てみると、世の中を斜めに見るのが得意になりすぎてしまったり、客観的になりすぎて物事にのめりこまなかったり、空気を読みすぎて行動できなくなっていたり、どんどんつまらなくなっているのを感じます。こんな時だからこそ長嶋茂雄のような生き方がいいんじゃないかということもこの本を通して伝えたいですね。

――初めて長嶋さんを目にした時の印象を教えていただけますか?

テリー:小学生時代のことだったと思うんですけど、あまり覚えていないんですよね。というのも、当時は川上さん(川上哲治氏・長嶋氏が入団する前の巨人軍の看板選手)が好きだったんですよ。川上さんの現役生活の晩年に長嶋さんが巨人に入ってきて、すぐに活躍するものだから、子どもながらに「川上がかわいそうじゃないか」と思っていた記憶があります。
なにしろ、銭湯に行くと下足箱の16番(川上氏の背番号)がまっさきに取られていたのに、それがある日を境に3番(長嶋氏の背番号)の下足箱から埋まっていくわけです。「薄情なもんだな」と思いましたね(笑)。

――それがいつしかファンになってしまうというのが長嶋さんの魅力なんでしょうね。その後、実際に会われた時のことをお聞きしたいです。

テリー:とにかく明るい人。どうしてこんなに野球を楽しくできるんだろうと思いました。初めて会ったのはテレビの業界に入ってADをやっていた時なんですけど、ミスターのノックを受けたことがあるんですよ。

――それはうらやましいです!

テリー:ある番組の収録だったんですけど、僕の方はADだから、もちろんテレビには映りません。あくまでノックを打っている長嶋さんを撮るのが目的だったんですけど、そのノックを僕が捕れなくてね。あれはいまだに後悔しています。
うれしかったのが、その収録の後日またお会いした時に「先日も会いましたね」と声をかけてくれたんですよ。記憶力がいいっていうのはもちろんなんですけど、一度会っただけのADのことも覚えていて挨拶してくれるというのがすごいですよね。
それと、さっきの話と重なりますけど、世の中を斜めに見ない人なんですよ。僕はテレビマンとして番組を作ってきましたけど、テレビに限らず何かをクリエイトする仕事って人と違った角度で物を見ることがよしとされるじゃないですか。
たとえば、飲み会でみんなが盛り上がっている時に、自分はその輪の中に入らずに、「なんでこんなに盛り上がっているんだろう」と冷静に考えてしまったりする。そうすることで新しいアイデアを思いつくこともあるんだけど、長い時間やっているとだんだん素直に物事を楽しめなくなってくるんですよ。その時点で「長嶋茂雄の生き方」からはかけ離れてしまっていますよね。ミスターは常に輪の中にいる人ですから。

――長嶋さんといえば、2004年に患った脳梗塞が思い出されますが、最近になってどんどん元気になってきているような気がします。

テリー:そうなんですよ。一生ベッドから起き上がれないんじゃないかとまで言われていた人がです。
日本一のスーパースターだった人ですから、普通ならああいう形で体が動かなくなって、杖をついて歩く姿を人に見せたくないでしょう。でも、ミスターはその姿を見せることによってまたすごさを見せつけています。
ミスターが脳梗塞で倒れた時、「やはり英雄の横には悲劇がついて回るのか」と思ったんです。山本五十六にしろ、力道山にしろ、「英雄」には悲劇がつきものですから。でも、その後のミスターの回復に向けたがんばり、病と闘う姿を見て「本当の英雄とはこういうことなんだ」と考えが変わりました。順調にいっている時ではなく、苦しい時にどう生きるか、どんなファイティングポーズを取るかを見せつけるのが英雄なんです。
そういった意味でも、長嶋茂雄を知っている世代だけでなく、知らない世代の方にも読んで欲しいですね。

――世代は関係なく、ということですね。

テリー:そうですね。年齢も世代も関係なく、人生にもう一度ファイティングポーズを取りたい人、それから人生に迷っている人やまだ人生を模索している人にも読んでいただけたらいいなと思います。
(新刊JP編集部)


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