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あの空は誰のもの? ドローン規制にはじまる空と人の新たな関係性

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ドローンメーカー・DJIが発売している人気機種『Phantom』シリーズ
4月22日に首相官邸の屋上で、落下した小型無人機(ドローン)が発見されて以来、安全面や運用目的などドローンへの関心、議論がより高まってきている。

現在、日本政府は国の重要施設上空での飛行を規制する法案成立に向けた動きを進めている。また、機体の製造・販売時の登録義務や、操縦者の技能試験を設けることなども検討している。

東京都では既に4月28日付で都内にある都立公園・庭園の管理者宛に園内でのドローンの使用を禁止する通知が都から出されている。

このように、一連のドローンを巡った世情からは、新たな空域に関する規制やルールが検討される中で、航空機の実用化以来となるであろう、人と空との新たな関係性が築かれているように感じられる。

これまでのラジコンヘリをはじめとする人と空の関係

もともと、ホビーの分野では一般的だったラジコンヘリが、今回のように社会を巻き込んだ問題として取り上げられるケースは少なかった。

おもちゃのラジコンヘリなどは、保護者による安全配慮のもと楽しまれ、大型や高性能のラジコンヘリは高額かつ、運用に専門知識や高い技術も必要されるため、必然的に販売店舗や熟練者を中心とした小さなコミュニティが形成される。

そうした家庭やコミュニティの中で絶え間ない情報交換と安全管理は保たれ、また複雑な操縦技術が習得されてきたといえるだろう。

また、国が定める航空法施行規則では、ドローンやラジコンヘリは模型航空機として定められ、航空機の運航に危険を及ぼす空域での飛行が禁止されているほか、上空250メートル以上の高さを飛行させることはあらかじめ禁止されている。

そのほかにも、民法207条で土地の所有権はその土地の上下を含むと定められており、他人の土地の上を飛行させる場合は、土地の所有権を侵害することにもなる。

少なくとも上空250メートル以内を飛行しなければならないドローンは、法令を侵害するリスクも大きい。

これらの規定の中で旅客機やヘリコプターの安全面は確保され、ラジコンヘリなどは一定のマナーのもと、趣味として楽しむことができるだけではなく、農薬散布などを目的とする農業機械としても有効活用されてきた。

ドローンが縮めた人と空の距離。その問題点とは?

昨今のドローンと総称されているものは、マルチコプター/クアッドコプターなどとも呼ばれる機体だ。一般的に翼が2つ以上あり、従来のラジコンヘリと比較すると安定的な飛行を可能とするものである。

現在、一般販売されているドローンの多くは、各種センサーによる自動制御機能を搭載しており、初心者でも操縦しやすく、高画質カメラを搭載し、その安定性を活かして手軽に綺麗な空撮を楽しめることを打ち出している。

数十万円のプロ仕様のドローンもあれば、1万円程度の安価なものまで幅広いラインナップで発売されている。

しかしながら、このような状況で懸念されるのは、正しい知識や操縦技術がほとんどない状態で、実店舗に行かずインターネット経由でドローンを購入し、最終的に屋外で飛行させてしまうことだろう。

前述のラジコンヘリに比べると、操縦が容易であるとは言え、販売メーカーなどが中心となるコミュニティはまだまだ成熟しているとは言えず、また未経験者がネット販売を利用して機体を購入した場合には、必要な飛行知識や操縦技術を習得する機会を持つことができない。

また、多くのユーザーが目的とするドローンでの空撮に関しても、公共の場での大規模なロケ撮影や、近隣への影響がある撮影などは、事前に様々な許可申請が必要となっている。映像業界ではそういった知識は長い積み重ねによって周知されているが、事前に学ぶことなく、安易にドローンでの撮影を敢行してしまうことでトラブルに発展する恐れがある。

こうした問題は、世界各地で発生しており、アメリカでは飛行禁止区域でドローンを飛ばしてしまい刑事事件に発展したケースや、日本でも15歳の少年(ニコニコ生放送の有名ユーザーだった)が長野市・善光寺境内にドローンを墜落させてしまう事例が起きている。

このような状況に対応するため、中国のドローンメーカー・DJIは、4月21日に三井住友海上と提携し、専用の賠償責任保証制度を展開。また、DJI主催でフライト講習会などの取り組みを進めていることなどを発表した。

今後もメーカーが主体となって、ドローンの発展ならびに有効活用を進め、またユーザーに空を飛ぶことの自由とその責任を周知させていく必要があるだろう。

本当のドローンの姿。各分野でドローンがもたらすイノベーション

ワクチン輸送などの発展途上国支援を目指す、Matternet社が開発した「Matternet ONE」は、スマートフォンをタッチするだけで自立輸送を開始するスマートドローンだ。最小限のコストで軽量品を誰でも簡単に輸送することを目指している。

また、Amazonが挑戦するドローンを利用した新たな物流サービス「Amazon Prinme Air」など、必然的に人的コストが高くなってしまう物流業界では、ドローンのもたらすメリットが大きく注目されている。

日本国内でも、瀬戸内海の島々へむけて、離島の不便さを改善するための物流サービス「空飛ぶカモメの宅配便 KamomeAirプロジェクト」が、クラウドファンディングでの資金調達に成功している。

鳥のように世界を見つめる。ドローンの活用は芸術やエンタメの分野でも

広島にある企業・ルーチェサーチは小型無人ヘリシステムでの撮影業務を行っており、2014年8月に発生した広島土砂災害時には、近づくことが困難な地点を無人機で空撮することで、安全を確保しながら災害状況を多くの人に伝える役割を果たした。

また、NHK仙台放送局は、福島第一原発周辺の警戒区域の状況を小型無人飛行機で撮影。「原発事故4年目の決断」として、NHKサイト内の特設ページにて、原発周辺の様子を公開している。

このように、取材困難な状況下においても、ドローンを使うことで安全に報道することが可能となる。同様に、災害時の救護者の発見等にも大いに活躍するだろう。

そのほかにも、日本アビオニクスが発表した無人機搭載用リモートサーモカメラは、赤外線により対象物の熱を測定することができ、ドローンと合わせて運用することで、太陽光パネルの点検や、火山活動の測定・監視などにも活用が期待されている。

OK Go – I Won’t Let You Down – Official Video

報道分野のほかにも、ドローンによる空撮は映像制作において重要な役割を果たしている。

これまでの空撮は、ヘリコプターをチャーターする必要があり高額な費用がかかるため、気軽に空撮することは難しく、またヘリの機体が大きいため、比較的高い高度からの撮影しかできなかった。

ドローンの登場は、低高度での撮影、滑らかな空撮映像を安価で可能にした。OK Goによる「I Won’t Let You Down」のMVもドローンによる撮影が行われており、集団パフォーマンスのワンカット長回し映像が大きな話題を呼んだことも記憶に新しい。

Perfumeのライブ演出などで知られるライゾマティクスの真鍋大度さんは、ドローンを使った演出をテストする模様をのYouTubeに公開している。

ドローンを規則正しく発光させ、空間を演出している様は、どこかホタルのような美しさを感じさせる。

こうした、アートやエンタメといった表現活動の領域においても、ドローンは新たな可能性を秘めていると言えるだろう。

ドローン、そして、レオナルド・ダ・ヴィンチ。

有史以来、人間は空に憧れを抱いてきた。稀代の発明家であり芸術家のレオナルド・ダ・ヴィンチも、現在のヘリコプターの始祖と言える「空気ねじ」のスケッチを残している。

現在では、当たり前となった航空機やヘリコプター、そしてドローン。これらすべては人類の発明であり、その歴史はいくつもの困難や失敗を積み重ねた上に成り立っている。

こうした観点から考えると、現在のドローンを取り巻く状況に、ある種のジレンマを感じる人間は少なくないだろう。

文明の発展や、大きなイノベーションを生み出すためには、数多くの発明家が辿った過程と同じく、ガチガチに固められた制約ではなくある程度の失敗が許される寛大な環境が必要だろう。

しかし、一方で話題となっているドローンが関連する事件や事故からは、専門知識がなくとも、誰でも自由にドローンを飛ばせることへの懸念が膨らんでいく。

日本国内では、先述の通り、政府による飛行区域の規制をはじめ、メーカーによる自主的な講習会など、安全管理への対策は広く検討され、実行に移され始めている。

安心安全のために制約するべきか、未来の発展に期待して寛大な対応をとるべきか━━そうした議論がなされる中でも、世界各地のあらゆる分野で、人々の先進的なアイデアと野心を乗せて、ドローンは新たな活路を日々切り開いていくだろう。

空中という、人が自力で移動することのできない世界で、どんなイノベーションを起こし、どれほどの感動を与えてくれるだろうか。

ドローンが空と人をつなぐ重要な1つの鍵となることは間違いないだろう。

引用元

あの空は誰のもの? ドローン規制にはじまる空と人の新たな関係性

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