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知ると違う 日本絵画における鑑賞の「ツボ」

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 美術館などで、日本絵画を目にするとき、みなさんはどのような点に面白さを感じることが多いでしょうか。

 出光美術館理事・学芸部長である黒田泰三さんは、日本絵画の面白さは「刺激的な色や形が織り成す造形美ではなく、むしろありふれて何でもないモノや出来事を描き、刺激的ではない色や形」であらわされているところにあるといいます。

 本書『思いがけない日本美術史』では、黒田さんが日本絵画史上重要であると考える12点—-「伴大納言絵巻」、「彦根屏風」、仙厓「老人六歌仙画賛」、長谷川等伯「竹鶴図屏風」「竹虎図屏風」「松林図屏風」、狩野光信「勧学院客殿一之間障壁画」、「江戸名所図屏風」、田能村竹田「梅花書屋図」、「十王地獄図」、「当麻曼荼羅図」、「僧形八幡神影向図」の作品を中心に、どのような点が面白いのか具体的に伝えていきます。

 たとえば、権威と形式を嫌い、地元民衆のために禅の強化に努めた仙厓。仙厓の残した作品数は、2000点を優に超えるともいわれていますが、その画の多くは、単にユーモラスなだけではありません。何でもない日常的な事象を描きながらも、そこに宿る生の本質を描いている点を見逃してはならないと黒田さんは指摘します。そして本書でとりあげる「老人六歌仙画賛」は、その典型的な作品なのだといいます。

 この作品では、6人の老人たちが描かれ、同時に彼らの嘆きやぼやきが記されていますが、そのぼやきを現代語訳すると、次のようになるそうです。

「しわがよる、ホクロができる、腰が曲がる。頭が禿げる、髭は白くなる。手は震え、足はよろつく、歯は抜ける。耳は聞こえず、目は見えなくなる。(中略)何事にもくどくなり、短気になり、やがて愚痴になる。でしゃばりたがり、世話をやきたがる。そしてつい何度も同じ話をして、わが子を誉めてしまい、自分の達者を自慢までしてしまい、人にいやがられる」

 時代を超えて共通する、老いの問題。しかしこうした衰えゆく老いの悲しさを記しながらも、描かれている老人たちの表情は実に明るいもの。仙厓は、老いや死を否定するのではなく、身近なものとして肯定しているのではないかと黒田さんはいいます。

「老いや死を前にして、平常でいられるということ。ユーモアを保てるということ。生の本質に対する仙厓の解答のひとつが、そこにはたしかに存在しています」(本書より)

 人生や死とは何か? といった根源的な問いかけを、素朴な造形と共にわかりやすく伝えようとした仙厓。こうした視点を持って作品を見てみると、新たな面白さを見出すことができるのではないでしょうか。日本絵画における鑑賞のツボを本書にておさえれば、より一層その世界を楽しむことができるはずです。

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