ひろゆきイズムの継承者になりたい!『2ちゃんねる』ブラウザの作者・山下遼太インタビュー 後編

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『2ちゃんねる』ブラウザ『Jane Style』の開発者であり、株式会社ジェーンを立ち上げた山下遼太さんに独占インタビュー! 今回は、その後編をお届けします。25歳の社長が考えるインターネットの行く末とは? どうぞお読みください(インタビューの前編はこちら)。

■ユーザビリティについて
長田: 『Jane Style』の機能がとにかく多いじゃないですか。ユーザーの声をどんどん取り入れて、機能を追加して使いやすさを追求していくというところを目指しておられるかと思います。

山下: 機能を追加することによって重くなるとか、それだけは避けようと思っています。ユーザーの声を拾い上げては、不具合をつぶしつつ機能を増やしていく、というのが基本的な開発スタンスです。

長田: いろんな機能がどんどん増えると、たとえばテレビのリモコンのボタンが多すぎてわからない、というような感じの、ユーザビリティが下がる場面というのが出てくる可能性もあると思います。

山下: おそらく一見さんは、『Jane Style』の設定画面を見て、既に「何がなんだかわからない」という状況に陥っていると思います。それでも、初心者の方がインストール直後にクリックするだけで使えるようには配慮してあります。上級者の方にはよりカスタマイズ可能な仕様にしたまま、初心者でも使いやすいようなソフトウェアが理想ですね。

長田: 機能の取捨選択基準ってありますか?

山下: 自分が使うか使わないか、というのは非常に大きいです。今まで、その判断基準でやってきました。でも自分が絶対使わないだろうなと思ってた機能でも、ユーザーの希望がかなり多かった機能を追加したことがあります。そうしたら、かなり便利で自分も使っていた、ということもありました(笑)。ユーザーの声もやはり大切ですね。

長田: 内なる声に耳を傾けつつ、開発するわけですね。

山下: でも、これはなかなかむずかしいですね。何でも付けたら意味のわからないプログラムになってしまいますし。

長田: ユーザーさんによっても意見は分かれるでしょうしね。

山下: 以前、メニュー項目を一新したときに、使いづらいじゃないかとえらく怒られたことはありました。個人的にはシンプルなメニューがいいなあ、と思って変えたんですが、既存のユーザーからすると今の状態に慣れてしまっているというのはありますからね。

■ユーザーインターフェース(UI)について
長田: たとえば、クラシックインターフェースと新しいインターフェースを混在させて、ユーザーに選択させるとか?

山下: UIのデザイン一新もやってみたいな、と思っているんですが、いかんせん、工数がかかるのが悩みの種です。今までだったら気の遠くなるような時間が必要だったかもしれないのですが、法人化することで、こういったことも出来るようになればいいなと思います。

長田: Appleとかって、UIの点で巧いですよね。

山下: Appleはキレイですよね。Appleさんの良いところは、UIを変えても、ユーザーは受け入れてくれるイメージがあります。そういうものだ、と。そのあたりは羨ましいです。

長田: いつも『Windows』なんですか?

山下: 僕は『Windows』ですね。今、『Windows XP』を使ってるんですが、『Windows 7』には期待しています。

■『ニコニコ動画』について
長田: 『ニコニコ動画』用のソフトもありますよね。ニコニコ動画保存ツールの『SmileDownloader』や『YouTube』と『ニコニコ動画』専用ブラウザ 『TubePlayer』など。

山下: 掲示板に張られる動画URLを簡単に閲覧できるツールが欲しいなあ、と思っていたんです。わざわざブラウザを立ち上げて見る、というのは面倒くさいですよね。画面の片隅で「ながら見」ができるような形で『TubePlayer』ってのを作ってみました。当初は『Jane Style』の一機能とするか悩みましたが、動画サイトの仕様変更に迅速に対応できるように、別途開発しました。

長田: ニコ動はよくご覧になるんですか?

山下: ランキング見ても、上位がアニメばっかりなので、最近は余り見ていませんね。

長田: アニメはご覧にならないんですね。

山下: はい。アニメはぜんぜん観ないんでわからないんですよ。もうちょっと一般的なものが総合ランキングに上がってきたら楽しめるのですが。ネタ動画とか動物とか、そういったのが好きなんです。

深水: 最近のランキングは高度すぎてわからないですね。抽象化しているというかマニアックで。女の子の上半身が揺れているだけ、とか(一同笑)。これは行き着くところまで行っているな、と。

山下: 今、アニメ好きだけが集まる場所になりつつあるじゃないですか。そこは残念ですね。とはいえ、一般的になったらコアな人は離れていくという側面もあると思うので難しいとは思います。動画の視聴で一体感を感じられるニコニコ動画はすばらしい仕組みなので、今後の展開に期待してます。

■作り始めたきっかけ
山下: もともと、ブラウザは『Donut』と『Donut P』を使ってたんです。そこに『Sleipnir』が出てきて。軽量でデザインもいいんですが、なにより、作者さんのユーザーを大切にする開発姿勢に共感していたところもありました。それにあこがれて、(『Jane Style』の)開発を始めた、という経緯があります。

長田: かなり『Sleipnir』の影響を受けていらっしゃるんですね。

山下: そうですね。かなり受けています。

■プログラムを始めた頃
長田: 今って、おいくつなんですか?

山下: 25歳です。

長田: ずっと、プログラムばかりやっておられたんですか?

山下: いえ。プログラム始めたのが大学に入ってからなので…5年前くらいからですね。そもそも『Jane Style』を作り始めたのが、初のプログラミング経験でしたから。大学、文系(経済)に居てまして……、その、大学ってとにかく暇じゃないですか(笑)。かといってお金はなかったですし。それで(プログラミングを)始めたんです。

■Delphiという開発環境
長田: それで、Delphiと出会って?

山下: 昔からプログラムには興味があったんです。ただ、プログラミングをやりたいと思っていても、何を作ったらよいかわからないのが一つ目のハードルだと思うんです。特に今は「欲しいな」と思うソフトは窓の杜やベクターに行けば手に入っちゃう状態ですし。

当時、発展途上段階であった『2ちゃんねる』専用ブラウザと出会えたのは幸運だったと思います。言語がDelphiなのは、『Jane Style』がDelphiで書かれていたから、というだけの話です(笑)。また、Delphi6っていうのは当時(開発環境が)無料で配られていたというのも大きいですね。だからお金がなくても始められたんです。使ってて、良かったな、と思うのはコンパイルの速さですね。

長田: 速いですか?

山下: コンパイルするためのキーを押して、5秒くらいで確認できますから楽ですよ。C++とかに比べると断然に速いと思います。

■プライベートについて
長田: 作業するときのこだわりとかありますか?

山下: こだわり…うーん、『iTunes』で音楽を聞きながら、ってところくらいですね(笑)
洋楽でもJ-POPでも、何でも聴きます。

長田: 唐突ですが、どんな幼少をお過ごしになっていましたか?ご自分で説明するのは難しいとは思いますが。

山下: 外でよく遊ぶタイプだったと思いますよ。家より外のほうが好きでしたね。

長田: ステレオタイプなイメージだと、プログラマさんは家で本を読むのが好き!みたいな風に勝手に思っていました。(笑)好きなスポーツとかありますか。

山下: 実は、大学に入ってからゴルフをはじめました。そこで出会えた友人や人間関係を今でも大切にしてます。あと、大学時代のアルバイトは、ゴルフつながりでキャディをやってました。「お客さんナイスショットです!」とか言ってました(笑)。

■これからプログラマを目指す方々へ
長田: 最後になりますが、第2の山下さんを目指している方に、一言ありますか? オープンソースからカスタマイズなどを経てソフトを作り上げ、そして起業するといった山下さんのスタイルは、今後の指標のひとつとなりうるのではないかな、と僕は勝手に思っています。僕も山下さんになりたい! という若い方にアドバイスをお願いします。

山下: 好きなことを続けていくが重要だと思います。僕は、やっぱりプログラミングが好きです。確かに、やっていてなかなか巧い具合に機能追加できなかったりバグが取れなくてイライラすることもありますけど、イライラしているときですらそれを楽しんでいる自分が居ます。もちろん、うまく行ったときの達成感は最高です。プログラムに完全に没頭できる「ゾーン」に入り込んだときの充実感はたまらないですね。どんな開発環境であれ、自分のやりたいことを貫けば、結果は自然と付いてくると思います。

長田: ユーザーさんの声に報える、というところも大きそうですね。

山下: 普通の生活ではなかなか日常で人に影響を与える場面ってほとんど無いじゃないですか。僕の場合ゼミとかサークルとか、(その当時のレスポンスという意味では)10人20人が精一杯でしたが、プログラミングの場合となると、1万人の声、10万人の声っていうのを得ることが可能です。そういった声が励みにもなりましたし、うれしかったですし、楽しかったです。作ったものをアウトプットできるのであれば、どんどんみんなに見せていくのがいいと思います。自分一人では気づかなかった点に気づけると思います。

長田: 今のユーザー数って、わかっている所で40万人位ですよね。40万人のユーザーの皆さんに、一言お願いいたします。

山下: 皆さんの期待を裏切らないように、便利な機能の追加や強化、不具合の修正をしていきたいと思います。また皆様に喜んでいただけるソフトウェアやサービスを継続して提供できる仕組みをもった会社を作りたいと思います。これからもご支援よろしくお願いいたします。あと、開発や心意気に興味がある方は、ぜひ声をおかけください。「会社情報 | 株式会社ジェーン」のメールアドレス宛にお問い合わせください。大阪はいいところですよ(笑)!

長田: 今日はありがとうございました。

山下: ありがとうございました!

執筆: 長田

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