ガジェット通信

見たことのないものを見に行こう

木下ほうかを筆頭に俳優陣の快演が光る! 『ニート・オブ・ザ・デッド/遺言』

DATE: BY:
  • ガジェット通信を≫

「ヒキコモリの息子がゾンビになった!」

ゾンビが蔓延する世界という非現実的な設定で始まる本作『ニート・オブ・ザ・デッド』は、コミカルな部分を含みながら、現代社会の問題を暗喩した快作だ。
同時上映の『遺言』とも、ゾンビが蔓延する世界を軸にしたSFめいた世界が舞台になっているが、両作を通じて根底にあるのは、現代社会への暗喩と指摘である。

ゾンビが蔓延する世界の中、一軒家で籠城をはじめた家族だったが、ヒキコモリの息子(金子鈴幸)がゾンビになっていることが判明する。息子を捨てようとする父(木下ほうか)と、このまま息子と過ごすと対立する母(筒井真理子)。

現実離れした設定であるはずなのに、父母の会話は異様なくらいリアルだ。育児や介護に疲れた母の爆発を受け止めきれない父の逃げ口上は、耳が痛い。

家庭を顧みず、妻にも向かい合わないシビアな役どころを演じながらも、時折、爆笑をもたらす俳優木下ほうかの快演は見物だ。
また、母親役を演じる筒井真理子が結末の中で見せる演技は、「母の愛はここまで狂気に至るのか」と震撼せずにはいられない。

同時上映の『遺言』も、ゾンビが蔓延するというSFめいた設定という点では『ニート・オブ・ザ・デッド』と共通している。また、『ニート・オブ・ザ・デッド』と同様、現代社会の問題をゾンビに暗喩したと見える表現も非常に興味深い。

ゾンビ化してしまい、もはや夫として一緒に生きることもできないことが分かっていながら、過去の良い思い出に縛られ葛藤する妻、京子。自らを守るために自警団を結成した人たちは、ゾンビ化してしまった人間は射殺する以外に方法がないと割切る。自警団に所属する佐藤は京子を支え、夫を射殺することを説得するが、京子はかたくなな姿勢を崩さない。
その中で佐藤は、自分にもゾンビ化した妹がいることを京子に告げる。

本作でも「ゾンビ」とは、家族として機能しなくなった人の比喩として機能しているように思える。ゾンビの姿に、介護を受ける高齢者であったり、脳死状態に陥った誰かの家族であったり、失職した家族と姿を重ねてしまうことを禁じ得ない。

『遺言』は、結論を導かない社会問題を見事に表現した側面も持ち合わせている。結末はネタバレになるので伏せるが、男女の愛がここまで強く人間の結びつきを生むのかと感じさせる結末も本作の魅力だ。

『ニート・オブ・ザ・デッド』の監督は、脚本家として活躍され、本作が遺作となった南木顕生氏の初監督作品でもある。その点でも、非常に貴重な作品だ。

映画「ニート オブ ザ デッド」予告編 – YouTube
https://youtu.be/sF-Glvz1Zjw

『ニート・オブ・ザ・デッド』

プロデューサー&脚本&監督 南木顕生
キャスト
木下ほうか 筒井真理子 金子鈴幸 吉田達 ホリケン 白河理子
カラー38分

『遺言』

プロデューサー/監督/編集 木部公亮
脚本      澄田尚幸  木部公亮
キャスト
中島菜穂 小幡誠 白石直也 小柳基 神社勝之 アラリン
新川美咲 遺伝子雑太郎 金子一夫 西田宣善
カラー32分

2015年6月13日より26日(金)まで
東京・渋谷ユーロスペースにて(21:10)より2週間限定レイトショー公開

―― 見たことのないものを見に行こう 『ガジェット通信』
(執筆者: 松沢直樹) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか

ガジェ通ウェブライターの記事一覧をみる ▶

記者:

ウェブサイト: http://rensai.jp/

TwitterID: anewsjp

  • 誤字を発見した方はこちらからご連絡ください。
  • ガジェット通信編集部への情報提供はこちらから
  • 記事内の筆者見解は明示のない限りガジェット通信を代表するものではありません。

TOP