「師走は、かきいれ時だ」の「かきいれ」は、「掻き入れ」?「書き入れ」?

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「師走は、かきいれ時だ」の「かきいれ」は、「掻き入れ」?「書き入れ」?

 いきなりですが、次に挙げる漢字にまつわる二つの問い、すぐに答えが思い浮かぶでしょうか。

 まずひとつめ。「師走は、かきいれ時だ」というときの、「かきいれ」。これを漢字で書くと「掻き入れ」でしょうか、あるいは「書き入れ」でしょうか。

 続いて「のるかそるか、この試合にすべてをかけてみよう」というときの、「のるかそるか」。こちらも漢字で書くと「乗るか反るか」でしょうか、それとも「伸るか反るか」でしょうか。

 それぞれ二択のうち、どちらの漢字が正しいか、迷うことなく答えられたでしょうか。
日本語は漢字に仮名に片仮名にと、複雑な言語であるがゆえ、日本語を母国語とする者でも、読み方や書き方を間違えてしまうことはしばしばあります。

 上記の二つの問いも、誤用しがちな語彙の一例。

 方言学や社会言語学を専門とする佐藤亮一さんによる『学び直しの日本語』では、誤用しがちな漢字熟語や慣用句に焦点を当て、それぞれの慣用句や熟語の正しい意味、用法、由来等をクイズ感覚で学べるようになっています。

 では早速、上記の問いの答えを見てみましょう。

 まず「かきいれ」。この場合の正解は「書き入れ」。お金を掻き集めるというイメージから掻き入れと思っていた方も多いのではないでしょうか。

 佐藤さんによると、これは江戸時代から使われている言葉で、当時は金銭の収支や物品の出し入れを帳簿に手書きしていたため、商売が繁盛すると帳簿の書き入れに忙殺されるという意から、最も売れ行きが良く利益が上がる時期を「書き入れ時」と呼ぶようになったのだそうです。

 次に「のるかそるか」。こちらの正解は「伸るか反るか」。矢師が矢を作るときに使った言葉がもとだと、佐藤さんは説明します。

「矢竹を曲がりを直す道具に入れて乾燥させた後、『伸るか反るか(真っ直ぐになったか曲がっているか)』と、成否を案じながら竹を取り出したことによる。成否を天に任せて、思い切ってやるの意」(同書より)

 このように言葉の生まれた、そもそもの由来を知れば、誤用を防ぐことができそうです。

 しかし、誤用があまりにも広がりすぎたため、それが正式となってしまった例もあるとのこと。たとえば、腹をかかえて大笑いすることを表す「抱腹絶倒」。元々は『史記』が語源の「捧腹絶倒」だったのですが、あまりにも間違いが多く、意味もほぼ同じであったため、誤用の「抱腹」も正式な言葉に。

 あるいは「宿命」。本来の読みは、仏教語で前世における善悪・苦楽などの状態を表す「しゅくみょう」でしたが、「しゅくめい」と誤読され、今ではそちらが定着してしまったといいます。

 日本語の読み方、書き方、使い方、誤用していないか本書で確かめてみませんか?

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