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人の“恐怖心”は遺伝するのか?

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人間が暗いところや高いところを恐れたりするのは、太古の体験を継承しているからだと聞いたことがある。猿から人間へと進化する過程で、危険と知らずに近づき、命を落としかけるような経験を積み重ねてきたことで、人類はそれを避けるべきものと学習したのだ、と。

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しかし実際のところ、“恐怖心”のような感情が遺伝することなど、あるのだろうか? 東京大学・分子細胞生物学研究所の小林武彦先生に聞いてみた。

「遺伝子に、特定の情報を格納して伝える機能はありません。たとえば一流ゴルフプレイヤーの子供は、運動神経の良さを引き継ぐことはあっても、技そのものを習得済みの状態で生まれてくることはないですよね。経験や学習した内容は、遺伝することがないからです」

ただし遺伝子には、危険を避けるための“本能”が生まれもってプログラミングされていると小林先生は捕足する。

「たとえば蛇が目の前に現れた場合。大人は噛まれると危険な動物であることを知っていますから、当然逃げますよね。では、蛇を見たことがない子供の前に蛇を放すとどうなるか。やはり多くの子は、それが危険なものと学習していなくても、怖がったり気持ち悪がったりして近寄ろうとはしないでしょう。これは蛇についての情報を親から引き継いだからではなく、得体の知れないもの、よく動くものに対して警戒心が働く本能を持っているためです」

そういった、よくわからないものへのリスクに敏感な人が生き残ってきたのは人類の進化の結果であると小林先生は語る。僕らが生まれながらに怖がりなのは、そのためだ。

「一方で、人間は好奇心を持ってもいます。これは進化の過程で知性を獲得する大切な要因で、好奇心の強い人ほど生き残るための工夫に長けていたといわれています。たとえばウニを剥いて食べてみようと考えたのも好奇心があればこその工夫ですし、それが食料確保のために大いに役立ったことはいうまでもありません」

つまり人類の繁栄は、好奇心と恐怖心の絶妙なバランスにより成り立っている。だから、子供が一定の学習を終えるまで、大人は彼らの好奇心が行き過ぎないよう傍らで制御してやらねばならないのだ。
(友清 哲)
(R25編集部)

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※コラムの内容は、フリーマガジンR25およびweb R25から一部抜粋したものです
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