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ベトナムとミャンマー 目前の利益に釣られ中国主導AIIB参加

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 中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)に英仏独をはじめ世界57か国の参加が決まった。中国と領有権その他で問題を抱えている国も次々と参加を決めた。AIIBを中心に、ベトナムやミャンマーと中国との関係が変わりつつある状況をジャーナリストの相馬勝氏がリポートする。

 * * *
 4月7日午後。この日の北京は珍しくPM2.5(微少粒子状物質)にも覆われず、雲一つない透き通った青空が一面に広がり、さわやかな日となった。

 人民大会堂東門外に面する天安門広場の一角では、習近平国家主席とベトナムの最高指導者、グエン・フー・チョン共産党書記長がレッドカーペットを踏みしめ、左側に立ち並ぶ儀仗兵が「捧げ筒」の姿勢をとるなか、厳かな表情で閲兵の行進をする。このあと、両者は差しの首脳会談に臨んだ。両国の赤地に黄色い星をあしらった国旗が翻るなか、二人は満面の笑みをたたえて、がっちりと握手。まるで仲の良い親子のようにみえる。

 しかし、ほぼ1年前を振り返ってみれば、中越両国はまさに一触即発で、開戦前夜の様相を呈していた。南シナ海の領土・領海をめぐる中国側の武力挑発によって、中国系企業がベトナム民衆による焼き討ちに遭うなどの襲撃を受け、100人以上の中国人が死傷、両国はその対応をめぐって激しく対立した。

 同じ社会主義国の両国だが、グエン氏が中国を訪問するのは2011年の書記長就任以来、2度目で、3年半ぶり。ベトナム側は南シナ海問題協議のため、書記長の訪中を何度も要請していたが、中国が拒否していたのだ。

 それが一転して、中国は書記長を受け入れ、しかも、最高指導者が仲良く閲兵式に臨み、首脳会談ではこれまでの経緯を忘れたかのような笑顔の対応。この裏に何があったのか。グエン書記長訪中1週間前の3月31日はAIIB参加申請の最終日。ベトナムも他の東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国同様、AIIBの低利の融資を当てにして、これ以前に参加を表明しており、AIIB創設時の参加国になることが確実になった。

 中国はAIIB主導国であり、両者の思惑と利害が完全に一致したのだ。グエン氏は加入が正式に決まると、これまでの遺恨を表に出さず、押っ取り刀で北京に駆けつけたのである。

 目の前の利益に釣られて、外交的な威厳を損じたのはベトナムばかりではない。3月中旬、ミャンマー軍は少数民族武装勢力の掃討を目的に中国国境付近を空爆。雲南省のサトウキビ畑で作業中だった中国人住民5人が死亡、9人が負傷した。

 ミャンマー側は当初、遺憾の意を表明しつつも国軍の関与を否定したため、中国国防省は「今後同様の事態が生じれば断固、果断なる措置で対応する」との談話を発表。国境付近に中国軍が集結し緊張が高まった。

 しかし、4月2日にはミャンマーのワナ・マウン・ルウィン外相が「大統領特使」の肩書で急きょ訪中し、王毅外相と会談。この事件について、「ミャンマー国軍機による誤爆だった」と認め正式に謝罪した。北京の外交筋は「事態を紛糾させれば、両国の紛争に発展し、ミャンマーのAIIB参加は露と消えることを懸念したのだろう」と解説する。

※SAPIO2015年6月号


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