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外国人事件パート2

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 ひょんなことから、隣の某大国の大学教授で、そのときは日本で某大学の講師をしている人と知り合った。その人から、知人の某大国の人が逮捕されたので、会ってみてよければ弁護をしてやってくれないかと頼まれた。その被疑者の友達も心配しているので、接見はできなくても接見に同行させてやって欲しいとも頼まれた。

 接見に赴いた私は、最寄りの駅近くの喫茶店で被疑者の友人と待ち合わせ、友人にはそのまま喫茶店で待っててもらい警察へと向かった。接見室で、身上関係から事件の内容までを聞くとパスポートの偽造事件であった。さらに聞こうとする私の質問を遮って、被疑者はこのように切り出してきた。

 「裁判官にはいくら渡せばいいですか。いつ出れますか」とだ。「渡せばとはお金のことですか?」「そうです。お金はあります」。この後不毛な会話が続いた。あなたの国と違って、日本では裁判官にお金を渡したからといって、身柄を解放されたり無罪になったりすることはあり得ないことですといくら説得しても、言うことをきかない。最後には「あなたには力がない。力がある弁護士に依頼する。もう帰っていい」という言葉が返ってきた。もちろん、そのお言葉に従って、すぐに接見を終了した。

 喫茶店に戻って事の次第を告げ、二人で帰途についた。帰りの電車の中で、回りに他の乗客がいなかったのを幸いに、友人もいろいろと話をはじめた。話を聞いているうちに、どうも警察沙汰になった場合に備えて裁判費用だとかいろいろな面倒をみるための互助会のような組織が存在することがぼんやりと分かってきた。そして、その友人というのも、互助会の一員で、実は偽造パスポートで日本に入国しているらしいこともだ。

 その友人は私も危なくなったので、いったん帰国するという。そのことを聞いた私は、「もう二度と偽造パスポートなんかで入国したらダメですよ」と注意をした。しかし友人は反論してくる。「偽造ではありません。パスポートは私がきちんとお金を払って私の写真を貼ってあるのだから、正式に私の物だ、偽造ではない」と言う。いいえそれを偽造というのですと説明をしても、自分の正しいパスポートだと主張してやまない。

 うんざりしたところで東京に帰ってきた。あの人たちの考えは日本人の考えの及ばないところである。知人の大学教授に報告をすると、「だから私たちの国の人はダメなんです、変な人を紹介して申し訳ない」と、がっくりとしていた。

 偽造パスポートの国選事件をしたことがある。証拠として法務省が作成した正式パスポートと当該偽造パスポートの各頁を撮影した書面が証拠として提出された。内容として、各頁のポイント箇所ごとに、真正なのはこうなっているが、当該パスポートはこうなっているから偽造であるという説明が付されている資料である。

 本来、被告人の防御のため、私は、すべての裁判資料を被告人に差し入れるようにしているのだが、これだけは入れなかった。とすると、証拠等関係カード(証拠目録のようもの)を見た被告人から、それだけがないので差し入れてくれとの要請がきた。倫理上、それを差し入れることはできないと考えた。
 なぜ欲しいのかを聞くと、素直な被告人で、真正と偽造を見分けるポイントがどこにあるのかが分かるので、それを持ち帰って関係者に高く売りつけたいのだと話をしてくれた。反省も何もあったものではない。そういうことだから、その証拠書類を交付することはできなかったのだ。
 事件が終了してもしばらくは証拠等を保存しておくのだが、それだけは早々にシュレッダー処分とした。

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外国人事件パート2

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