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第5回 運動時間?

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 朝の洗面を終えた順に本棚に向かい官本を借りることができることは前回に書いた。収容者間で不平等にならないように、洗面の順、したがって本棚に行く順も毎日変わっていく。
 借りることができるのは(つまり部屋に持ち込むことができるのは)一人3冊までで、一日1回である。もちろん、ロッカーから私本を持ち帰ってもよいが、私本が含まれていたとしても、全部で一人3冊(つまり、私本1冊と官本2冊)までしか持ち込むことはできない。

 マンガや週刊誌などはすぐに読み終わってしまうので、ほとんどの人が最大限の冊数として、官本3冊を借りていく。私本がある人は私本を1冊、官本2冊というのが多く、私もそうしていた。というのは、部屋の中での官本の回し読みはOKであるから、Aさん、Bさん、Cさんといれば、Aさんが私本1冊と官本2冊を借り、私本を持っていないBさんとCさんが官本それぞれ3冊を借りると、合計で官本8冊を読むことができる。さらに、何の本を借りるのかも、前日に部屋で打ち合わせておく。例えば、続きもののマンガなどは、Aさんが1巻と2巻、Bさんが3~5巻、Cさんが6~8巻、翌日は9巻からというようにするのである。

 私本を持っている者は、その私本1冊を読み終えると、室内3冊との限度さえ守れば、別の私本と幾度でも交換できるから、一日を本尽しで過ごすことができる。係官に、持ってきてもらう私本の題名を告げて私本の交換をお願いすると、すぐに交換をしてくれる。
 余談であるが、官本で圧倒的に多かったのはマンガであり、それに次いで、「○○ドキュメント」とか「○○実話」といったようなヤクザ週刊誌だった。

 本を持ち帰ってしばらくすると、朝食の時間である。食事内容のことは後日にまとめて書くこととするが、留置場の朝食(だけではないが)はとにかくマズイ。土曜日、日曜日、祝日を除いた朝食後、これまた順番に、待ちに待った運動時間となる。この運動時間は、朝食後すぐに呼ばれてしまうと、午前中が長い残り時間となるので、みなさん、朝食後1時間くらいして呼ばれるのがもっともよいと言っていた。

 留置場に入り初めての運動時間、私は、言葉どおりの「運動」の時間だと思っていたが、その実はまったく違うものである。そもそも物理的に運動はできない。場所は、マンションのベランダ大程度の造りで、幅が3メートル弱長さが4メートル弱くらいのコンクリートスペースである。そこに、看守が2~3人、我々が4~5人入り、しかも真ん中には灰皿代わりの水入りバケツが2個、月水金曜日には電気カミソリの入った箱までもが置いてあるのだから、運動などできない相談である。

 ほとんどの人がヤンキー座りで、皆と談笑しながらタバコを吸うことに余念がない。そう、その当時は、20分の運動時間中に、タバコを2本ではあるが吸うことができたのである。現在はダメになったと聞いている。ある贈収賄事件で捕まった人が、やはり本当の運動時間だと思って出てみたら、タバコ時間だったので、タバコの煙が苦手なその人は出てこなくなった。このことを考えると、禁煙もやむないかもしれない。
 ベランダに出るところの廊下に、木製の箱が置いてあり、その中に各自の番号が書いてあるカメラフィルムの空きケースが入っている。このケースの中にタバコが2本入っているので、そのタバコ2本を持ってベランダに出る。ベランダには紐で止められている百円ライターがあるので、それで一服するのである。

 留置場内で吸うことができるタバコはこの2本だけであるが、領置してある金銭があれば、留置担当に頼んで、自販機で売っているものであれば、買い置きすることができる。20分の間に2本を吸うのだが、続けざまの2本は喫煙者といえども辛い。それなら1本にしておけばいいとか、この機会にやめればいいとも思う。でも、喫煙者は意地汚いもので、しっかりと根本まで、そして2本を吸ってしまうのだった。

 喫煙をしない前科何犯もの爺さんが、「タバコはやめなきゃ、拘置所でも刑務所でも辛いぞ。やめた方がいいぞ」と毎回のように説教をしていた。この爺さん、覚せい剤の常習者で、「タバコをやめろと言うより、あなたが覚せい剤をやめなさい。拘置所でも刑務所でも打てないよ」と、私は内心で思っていた。

 月水金曜日にベランダに出してある電気カミソリは、各自の番号がついている個人用と共用とがある。個人用の電気カミソリも、係官が充電をしてくれているのだ。個人用の電気カミソリを持ち込んでおらず、共用の電気カミソリを使用した者は、使用後、横に置いてあるアルコールを含ませた脱脂綿で、外刃と内刃の双方を丁寧に掃除し、消毒をするのが決まりである。それと、毎週月曜日には、各自に綿棒1本が渡されるが、これは耳かきのためである。

 またこの運動時間に、決まった曜日ではあるが、タバコ、飲み物やパンといったものの注文も受け付けてくれる。係官から指定の用紙をもらって、買いたい物の注文をするのだ。もちろん、領置金がなければアウトである。(つづく)

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