アニメーター「年収110万円」報道はウソ? 平均333万円、最頻値は400万円だった

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アニメーター「年収110万円」報道はウソ? 平均333万円、最頻値は400万円だった

日本アニメーター・演出協会が実施した「アニメーション制作者実態調査報告書2015」が、4月29日に公開された。2013年の年間収入は平均332.83万円、最頻値は400万円だった。

この数字は、NHKニュースが28日朝に「アニメ若手制作者 平均年収は110万円余」と報じ、ネットで大きな話題になったものとは乖離がある。どちらが本当なのか。
職種別集計から「動画」だけをピックアップ

NHKのニュースがネットに公開された途端、各ネットメディアが「過酷な労働環境」「超ブラック」「アニメ業界が抱える闇」などと取り上げ、読者からも「月9万なんてヒドイ」と批判の声があがった。

関係者によると、NHK大阪放送局が若手アニメーターの労働環境の番組取材をする過程で、公表前の「実態調査報告書」を早期入手。28日に大阪で「アニメ制作者 厳しい労働環境」という番組を放送したが、同日に全国配信する際に見出しの変更が行われたようだ。

平均332.8万円では「貧困」のイメージが弱いと判断したのだろうか。報告書別表の職種別クロス集計の中から「動画」に携わる人の平均年間収入111.3万円だけを取り出し、「ほかの産業に比べて極めて低い水準」としている。
「作画監督」の平均は563.8万円、「監督」は648.6万円

「動画」とはアニメ制作において、原画と原画の間の連続する一連した動きを作画する工程のこと。画面に動きを出すために、大量の画を描かなくてはならない。動画で職歴をスタートさせ、それから原画や動画検査などに分かれていくことが多い。

フリーランスとして仕事に携わる人の割合も高く、作業を部分的に請け負う場合には年に数万円分の仕事しかしない人も。それらを含む平均値を取り上げて「若手アニメーター=貧困」という構図で紹介するのは、アニメの現場に対する誤解を生む報道といえるだろう。

なお「動画」以外の平均年間収入は、「仕上げ」が194.9万円、「原画」が281.7万円。「キャラクターデザイン」になると510.4万円、「作画監督」は563.8万円、「監督」は648.6万円だった。

28日深夜に放送されたNEWS WEBでは、一転して全体と職種別の平均年収が正しく説明されるものに変更。放送に対するツイートも、ほとんどが落ち着いた内容だった。
長時間労働の解消が課題。月350時間超が16%

とはいえ、アニメーターの就労環境に課題がないとは言えない。調査結果からは、アニメーターの労働時間の長さが浮き彫りになっている。1か月あたりの平均作業時間は262.69時間。「350時間超」と答えた人が15.9%を占めた。

月350時間労働とは、週休1日で月27日間稼動した場合、1日平均およそ13時間作業した計算になる。1か月あたりの平均休日も4.63日にとどまり、「3日以下」(25.0%)と「4日」(29.9%)を合わせると54.9%となった。

回答者からも、「年々スケジュール管理が全体的に酷くなっている。そのせいで仕事内容にやりがいがあっても、精神的につらくなっている人が数多くいると思う」(20代、女性、色彩管理)というコメントがあった。

その一方で、今後の仕事計画については「働ける限り、アニメーション制作者として仕事を続けたい」と回答した人が61.7%。2位の「とくに考えていない」(10.8%)以下に圧倒的な差をつけている。この仕事が好きで携わっている人が多いようだ。

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