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櫻井よしこ氏「中国の覇権戦略は金融と軍事の両面で進行中」

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 中国はいま、軍事面やAIIB(アジアインフラ投資銀行)をはじめとした金融面などあらゆる分野で、世界の秩序を変えようとしている。巨大な経済力を背景に勢力拡大を狙う隣国に世界各国が翻弄される中、日本はどう対処すべきか。ジャーナリストの櫻井よしこ氏が緊急寄稿した。

 * * *
 世界は今まさに、大きな地殻変動の只中にあります。アメリカが中心となった秩序が揺らぎ、中国がとめどない軍拡を背景に、国際法を無視した領土・領海の拡大を続け、好き放題しています。

 その中国が金融面で覇権拡大を打ち出してきたのがAIIBです。

 アメリカが牽制したにもかかわらず、イギリスを皮切りにドイツ、フランス、イタリアといったEU諸国が雪崩を打って参加を決め、57か国でスタートすることになりました。中国メディアは勝ち誇ったように「日米の孤立」「外交的勝利」を盛んに報じています。

 AIIBだけではありません。それに先だって習近平主席は400億ドル(約4.5兆円)の「シルクロード基金」の創設を発表し、周辺地域の鉄道や通信網といったインフラ整備を援助する方針を打ち出しました。この基金を使って「シルクロード経済圏」を作り、ユーラシア大陸全体を影響下に置こうとするものです。

 さらに昨年7月には、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の5か国による国際金融機関「新開発銀行」を創設しています。上海を本部とし、やはり中国が中心となった組織です。金融面で世界地図を塗り替える試みが繰り広げられているのです。

 軍事面ではすでに脅威が現実化しています。ベトナムが領有を主張している南シナ海のパラセル諸島(西沙諸島)は完全に中国海軍の巨大基地となり、中沙諸島、南沙諸島においても軍事施設の建設が進んでいます。

 たとえば南沙諸島のファイアリー・クロス礁では、3000メートル級の滑走路を建設中であることが衛星写真で確認されました。中国外務省は工事の目的を「民間分野のニーズにサービスを提供するため」などと説明していますが、詭弁です。人工島を作り「不沈空母」として軍事戦略に使うことは火を見るより明らかです。

 アメリカの上院軍事委員長、ジョン・マケイン氏ら有力上院議員4人は3月、直近1年間に前述のファイアリー・クロス礁をはじめ、ガベン礁の埋め立てで11万4000平方メートルの新たな土地を作り出した例、ジョンソン南礁を10万平方メートルの広い島にした例などを列挙して、これを侵略的(アグレッシブ)な行動だと非難しました。

 マケイン上院議員らはこのままいけば中国は南シナ海に防空識別圏を設定して同海域を中国のものとするだろうと警告し、アメリカが対抗する緊急性と重要性を強調しました。

 民主共和両党で構成する「米中経済安保調査委員会」は中国軍の増強で「アメリカの対中抑止能力、とりわけ日本に関する抑止力が低下しつつある」と警告しました。もはやアメリカは日本を守り切れないと議会が発表したことの深刻さを、私たちは軽視できません。

 中国の南シナ海での侵略行為のすさまじさは「海に砂の万里の長城を築いている」とたとえられていますが、同感です。金融と軍事の両面で、中国の覇権戦略がそこまで迫っていることを再認識すべきです。

※週刊ポスト2015年5月8・15日号


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