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誰もが孤立し「ぼっち」になる社会 東大・玄田有史氏が持論「社会のあり方が楽でない方向に変わった」

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「おひとりさま」「生涯未婚」「無縁社会」など、「孤独」をテーマにするキーワードが最近増えてきた。たとえどこかの社会集団に属していても、密かに孤独を感じている人が多いのかもしれない。

NPO法人ニュースタート事務局が2015年4月24日、「働けという前に『ぼっち』の若者に私たちができること」と題したシンポジウムを開いた。『ニート』や『孤立無業(SNEP)』の著書がある玄田有史氏(東京大学教授)が、ひきこもりやニートを支援する若者と「ぼっち」について語り合った。
「友だちが少ない、いない」が会場の半数に

会場では、まず挙手でアンケートが取られた。質問は「あなたは、友だちが多い方だと思いますか?」。約40人の参加者の半数は「友だちが少ない」「いない」に手を挙げた。「多い」と答えた人は4人しかおらず、残りの人は「何ともいえない」に挙手した。玄田氏は言う。

「僕いままでこの質問4回くらいしてきましたけど、だいたいこんな感じ。必ず年代を問わず、『少ない』が抜きん出て多いんです。自分だけ『ぼっち』だと思う必要はない。むしろなぜみんなが『つながれない』んだ、というのを考えないといけない」

玄田氏は2012年に『孤立無業(SNEP)』(日本経済新聞出版社)を出した。孤立無業者とは20代~50代の未婚者で仕事をしておらず、「普段ずっと一人」か「一緒にいる人が家族しかいない」という人を指す。総務省の調査(2011年)を集計すると、孤立無業者は162.3万人だった。01年は85.4万人で、ここ10年で倍増している。

「昔は男性、中退者などが多かったが、今は違います。女性にもいるし、大学・大学院を卒業している人もいる。若者にも増えている。だから孤立無業者は『誰でも』なりやすくなっている。孤立することが『一般化』している」

玄田氏が事務局の人から聞いた話では、働いている人でも「実は全然人と喋らなかったりすることがたくさんある」といい、「『ぼっち』の人は、働いているかどうかに関係なく、たくさんいるんじゃないか」と推測する。
「内向的な人が楽でない方向」に社会が変わってきた

事務局スタッフからは「仮面ぼっち」というキーワードが出た。外面が良く、表面的には友だちもいるが、ムリをして働いたり人付き合いをしたりしている。とりあえず働いていて生活もできているが、幸福感を感じられない人がいるのでは、という。

別のスタッフからは「(完璧に)できていない自分、ということを意識しすぎて、ぼっちになる人が多い」と指摘する。周囲が「頼ってもいい」という空気を出すことや「自分もきちんとしていない」と伝えることなどで、つながりや働きに対する「ハードル」が低くなれば良いのではと話す。

「周りで閉じこもっていたり、前に進めない、孤立している人がいたら、お互いさまだし、自分のダメなところを話してみようという感じで、緩めてあげてほしいと思う。そうやって人同士はつながっていくのでは」

玄田氏は約40年前までは、家族で第一次産業を生業にする人たちがたくさんおり、人と交わるのが苦しい人は「家業を手伝えば良かった」と指摘。しかし高度成長を経て、皆に「サラリーマンとして働く」ことが求められ、内向的な人にとっては「社会のあり方が楽でない方向」に変わってしまったと言う。
「ぼっちだからこそ、うまくやれること」を考える

しかしここに来て、新たな動きも出てきている。都内の大手IT企業は精神障害を抱える人を積極的に雇い、書類のPDF化やサイトパトロールの仕事を任せているそうだ。過疎に悩む秋田県藤里町では、ひきこもりの人たちがつくる「白神まいたけキッシュ」が、今や全国から注文が来る特産品になっているという。

玄田氏は、あるひきこもりの若者の例を挙げた。昼間は家に閉じこもり、深夜に隣町へコーヒーを飲みに行くだけの生活を送っていた。しかし、山村に取り残された一人暮らしの高齢者の存在を知り、今は買い物などの送迎をしているという。

「彼も、やっと外に出るきっかけができた。困っている若者と、困っているお婆ちゃん。ぼっちとぼっちが支え合えるような、そういう工夫です。自然とできる範囲で、アテにしあえる関係ができていけば良い」

「逆転の発想で、そういう人たちだからこそ、うまくやれることをアイデアを出し合って考えるのが大事だし、そういう可能性はたくさんあると思います」

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