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「いつでも、どこでも、誰とでも」が広がる未来の可能性を子どもたちへ。KDDIのプログラミング教育支援への取り組み

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コンピュータやインターネットの普及に伴い、アメリカのCode.orgやNPO団体などによる子ども向けのプログラミング教育推進に加えて、イギリス、フィンランド、シンガポールなどの国々が義務教育にもプログラミング教育の導入を検討するなど、基礎教育の一環としてプログラミングを位置付けていくことが世界的な潮流になりつつある。日本でも、2013年6月に発表された政府の成長戦略の中に、義務教育段階からのプログラミング教育等のIT教育を推進するという内容が明記されたことを受け、プログラミングを学ぶ子どもたちが増えてきた。

こうした動きの背景には、もちろん「産業育成のためのIT人材教育」という側面がある一方で、忘れてはいけないのが「プログラミング教育は子ども自身に何をもたらすのか」という視点だろう。2014年度、KDDIは、KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)卒業生でもあり、2011年から延べ8,000名以上の中・高校生が参加したプログラミングキャンプを運営してきたライフイズテック社と共に、東北中高生向けと聴覚障がい児の中高生向けに2つのプログラムを実施した。この取り組みを、KDDI総務部CSR・環境推進室長 鈴木裕子が、ライフイズテック株式会社 代表取締役の水野雄介氏と共に振り返る。

プログラミングを学ぶことは、選択の幅を広げること

鈴木:最初に少し私自身の思いについてお話しさせていただくと、東北中高生向けに実施した「東北イノベーターズプログラム」は、東北支援の一環として、被災者である東北の方向けに地元である東北で実施することにより、「東京に出なくても地元で仕事はできる」ということを知ってほしいというところからスタートしました。聴覚障がい児向けプログラムは、「聞こえない」というハンディキャップにより生じている情報格差を、ITで埋めることで、現状限定されている職種以外にも就業できる可能性を広げたかった、ということが原点にあります。

通信事業者であるKDDIにとって、被災者、障がい者という、社会的に弱い立場にいる人をどう支援できるのかを考えた時に、ネットワークとIT技術を使えば、いつでも、どこでも、誰とでも仕事ができる可能性が広がることを知っていただくことに意義があるのではないか、そして「未来の可能性を持っている子どもたちへのIT教育」を支援することで、アプリの開発やサービスの開発の楽しさを知ってもらい、将来の選択肢を広げたいと考えました。

そこで、KDDI ∞ Labo(ムゲンラボ)卒業生でもあるライフイズテック社(以下LiT)さんにご協力いただき実施したのがこのプログラムです。水野さんは、これまでにどんな思いで子ども向けのプログラミング・IT教育に取り組まれてきたのでしょうか?


ライフイズテック株式会社 代表取締役の水野雄介氏

水野:私たちが中高生対象にプログラミング・ITキャンプを実施してきたのは、それが21世紀を生きていくための最低限必要なスキルになる、という思いからです。プログラミングを学ぶことで、住んでいる場所や年齢、性別によらず、「個人で問題解決ができる」「世の中に発信できる」「問題を解決できるものを自分で作れる」という力を身に付けられると考えています。

人は、好きなことを仕事にした方が良いと思っています。そして、最近は、どんなことをするにも、ITやプログラミングは関わってきますから、ツールとして使えることで可能性が無限に広がります。そういう意味では英語に似ていますね。

鈴木:知ることで自分の引き出しが増え、できることも増える。プログラミングを学ぶことの良さは、私が求めていた様々な選択の幅が広がることだと思います。私がもし子どもの時にプログラミングを学んでいたら、人生が変わっていたかもしれないなと感じます。選べる自由がある方が、人としての幅も広がり、人生がより豊かになるだろうなと思います。

東北は希望に満ちている

鈴木:では早速、2つのプログラムについて振り返っていきたいと思います。まず「東北イノベーターズプログラム」については、「自分の町の課題を考え、それを解決するアプリをつくる」ということを目標に、2014年8月に2泊3日のキャンプを東北で行いました。その後、半年間にオンライン講座を5回実施し、先日、最終のプレゼンテーションがありました。足掛け半年間と、かなりの長丁場のプログラムとなりましたね。子供たちにとっては有意義な時間となったのではないかと思いますが、水野さんは、どのように感じられましたか?

水野:私がまず思ったのは、東北は希望に満ちているということですね。今までまったくプログラミングを知らなかった子でも、スマホやアプリは身近ですから、良く考えられた、素晴らしい作品が出てきました。

鈴木:確かに、どれも素晴らしい作品でしたね。水野さんが特に印象に残っている作品はどれですか。

水野:私が1つ挙げるとしたら、最優秀賞を獲得した「Where?Here」ですね。ワンタッチで友人に「今どこ?」って聞ける、それにワンタッチで返信すると位置情報が送信される、というだけのシンプルな動作です。そして災害時には、緊急地震速報を受信次第、その時の位置情報を連絡先に知らせます。地震や津波で通信がつながらなくなる前に、直前の情報を知らせ合うわけです。鈴木さんはどの作品が印象に残りましたか?


KDDI総務部CSR・環境推進室長 鈴木裕子

鈴木:私はアイデア賞を受賞した「COY!」ですね。応援したい人が応援したい人に対して、応援ボタンを押すと、「COY!」「COY!」と応援の声をかけられ、声をかけられるたびに画面上に描かれている鯉が成長して、やがて鯉のぼりになって宇宙まで行く、というアプリ。中学1年生の子が、震災の時の「みんなの応援が力になった」という記憶から、「応援の力を集めたい」と考えて開発しました。目に見えない応援を目に見える形にする、すごい発想力だと感心しました。

震災から4年間、東北の子どもたちは、さまざまなことに立ち向かい、精いっぱいだったと思います。このプログラムをきっかけに、自分たちの町のことをよく考え、「今、自分達が住んでいる地域に貢献するには何が必要か」などを考えていただいたのは良い機会だったと思います。また、それをITで解決する方法を考え、形にできたことは素晴らしい成果でした。

水野:3日間のキャンプのあと、オンライン講座でチームをフォローアップする、という形は私たちにとっても新しい試みで、難しいこともありましたが、それでさらに良いものができたと思います。最後のプレゼンテーションでは、子どもたちはシナリオを作成する人、前で話す人、アプリのモックを作る人、デザインを作る人と、役割分担してお互い尊重し合って、とても良い雰囲気で進めていました。

鈴木:最初のキャンプで”同じ釜の飯を食う”形式なのが良いのでしょうね。最初はまったくキーボードを触ったこともなかった子が、3日目にはブラインドタッチでどんどんコードを打ち込んでいたり、子どもたちの雰囲気も1日目と3日目では全然違いましたね。

水野:リアルで人と人のつながりをつくれる、というのは大きかったですね。

鈴木:一度リアルでつながれば、オンラインでもより一層強くつながっていられます。ネットとリアル、両方が大事なんだと思います。

やりたいのは「自立のための支援」

鈴木:以前、障がい者の方に何か支援ができないだろうかと考え、ヒヤリングをしている際に聞いたことがあったのですが、聴覚障がい者の方はどうしても職種がルーチンワークの中でも更に限定されてしまい、人とコミュニケーションを取らなくてもよい仕事に偏っているという話を聞きました。この状況を打開したい、もっと職種の幅を広げ、人生の選択肢も増やしたいという想いから、「聴覚障がい児向けプログラム」を実施しました。

開催にあたっては、聴覚障がいの子どもが通う特別支援学校を訪問し、関心のありそうな生徒を紹介してくださいとお願いしたところ、熱心な先生方が色々な生徒にお声掛け下さり、また他校の先生もご紹介いただき、当初想定していたよりもかなり多く、4校から合計60名以上の参加希望者が集まりました。抽選で参加者を絞ろうかとも考えたのですが、「可能性を広げてほしいという想いから声をかけた子どもたちに道を閉ざすのは良くない」と考え、手を挙げてくれた子どもたちには全員参加してもらいました。

水野:60人の聴覚障がいの子どもたちが集まったキャンプって、新しいチャレンジですよね。世界初じゃないでしょうか。いつものLiT(ライフイズテック社)のプログラミングキャンプのように、最初からがんがん音楽を流して盛り上げるような演出はできなくて、朝はずいぶん雰囲気が違いましたが、昼に近づくと子ども同士が教え合ってコミュニケーションしている、いつものプログラミングキャンプと変わらない様子になりました。

鈴木:参加されたLiTスタッフの大学生の方も、「最初は会話ができなくて少し戸惑ったけれど、慣れてきたらいつも接している子どもたちと全然変わらなかった」とおっしゃっていました。オープニングではKDDIで活躍している聴覚障がいの社員が、手話によるビデオメッセージで「耳が聞こえなくても周囲の社員とはコミュニケーションできるし、仕事でも活躍できる」といったことを伝えました。

今回は中学生と高校生の両方を対象にし、終了後、アンケートを書いていただきました。中学生は「楽しかった」「もっとやりたい」といった感想が多く、高校生になると「将来の夢が広がった」「次は何をすればいいのか知りたい」とコメントをいただきました。

また、「ITの仕組みを理解したいと思った」という感想をいただきました。そのような感想をいただくと、さらに学びたいという意欲につながっていると実感できました。就職を探す際に「こんな仕事があるから就職する」のではなく、選択できる職種の幅を広げる、あるいは自分で仕事をつくり出すこともできるということを伝えたかったので、今回のプログラミング教育をすることにより、少しは伝えられたのではないかと感じました。

CSRというと、その昔は慈善事業、寄付、といった解釈がされてましたが、私達は「自立するための支援」をすることがミッションだと思っています。最初は後ろから押して、そのうちに自発的にレールに乗って進めるようにしていきたい。この経験が第一歩で、起業家の道に進む子がいたらそれはすごいことですよね。

60人がチームに分かれて、カウンターアプリとゲームアプリの開発に取り組む

他のチームが開発したアプリを楽しむ

プログラムの最後、鈴木は手話を交えて挨拶した

格差解消が子どもと地方の未来を創る

鈴木:最後に、これまで一緒に子どもに向けた取り組みを進めてきた水野さんから、KDDIへのご要望があれば聞かせていただけませんか。

水野:まずは、KDDIさんとこういう取り組みを一緒にしていただけるというのは、とてもありがたいことだと思っています。今回の2つのイベントも、KDDIさんから声をかけていただかなければ、東北の子どもたちや聴覚障がいの子どもたちに、このような機会を提供できなかったわけですからね。

私は、情報格差は可能性の格差につながると思っています。子どもが成長に合わせた適切な情報を取捨選択できるように、KDDIさんには、今後も、日本全国、さらなるインフラ環境の整備に努めていただきたいと思っています。

鈴木:いま、おっしゃったことに関連してですが、地方創生とは、結局、情報の格差を埋めることから始まるんだと思います。情報格差を埋めるためにも、インフラ整備と教育が大事なのではないでしょうか。

水野:地方創生の観点から見ると、ITはとても費用対効果が高い投資だと思います。東京から企業を誘致して税金免除するよりは、地域の人を育て、そこで会社を作るほうがずっと効率がいいはずです。

鈴木:東北イノベーターズキャンプの審査員を務めていただいた東松山市の古山守夫副市長は、東京でアプリを制作する会社を一人でやっていた息子さんが、子どもができたのを機に、東松島に戻ってくることになったとおっしゃっていて、「ITやプログラミングで、ライフスタイルに合わせてどこでも仕事ができる」という話をしてくださいました。

地方が人口流出という問題を抱えているとするなら、「企業を誘致して外から人を移転させる」よりも、その地域でできる仕事の成功事例を積み重ねて見せてあげることで、子どもたちはその土地に根付いていくと思います。東北イノベーターズプログラムはその第一歩です。地方が抱える問題の解決策に、ITが貢献できると考えています。

水野:「地方創生」は、結果ですね。子どもたちがやりたいことをかなえていけば、人材流出しない仕組みになります。それがITの面白いところですよね。

鈴木:「地方創生」のカギは、「ITにあり」ですね。これからもKDDIは子どもたちへのプログラミング、IT教育支援に取り組んでいきたいと考えています。

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